第156話 再び、作戦会議
私達四人は治癒師さんの家を離れ、ひとまずクウネを宿屋に送る事にした。
そしてバスクさんに話し掛ける。
「私達の黒針竜討伐は明日、再開だね?」
「そうだな。とりあえず体に付いたこのドラゴン避けを全員洗い流さないと、どうしようもないな」
「黒針竜、かなりこの匂い嫌がってたもんね…。そういえば、イスネリはこの匂い、大丈夫なの?」
「ええ、少し刺激がありますけど、大丈夫ですの。たぶん獣竜に合わせて調合されてるからだと思いますの」
「そうなんだね」
バスクさんが話に入ってくる。
「それでこの後だが、とりあえずザージン達が村に戻って来るのを待って、また明日からの打ち合わせをするぞ。奴らは黒針竜にマーキングしているからな。急がないと本当に奴らに先を越されちまう」
イスネリがそれに答える。
「それでしたら、わたくしが皆を迎えに飛びますの。向こうにはナヴィちゃんもいますし、この匂いをたどれば、すぐに見つけられると思いますの」
「おお、そうだね! じゃあ、私とバスクさんがクウネを宿屋に送るから、その間に皆を迎えに行ってくれる?」
バスクさんもそれに賛成して、イスネリにお願いする。
「そうだな。その方が時間が短縮できるし、イスネリちゃん。悪いがそれで頼む」
「かしこまりましたですの」
そう言って、イスネリは私達から離れて、森の中に入って行った。
私とクウネを担いだバスクさんの三人は拠点の宿屋に向かって歩き始めた。
バスクさんが私に話し掛けてくる。
「一応、全員が揃ったら改めて言うが、エドセント達は何がなんでも黒針竜を狩りに来るぞ。前はもっと隠れてコソコソやる奴だったんだがな。今日みたいに正面から獲物を横取りするような度胸のある奴じゃなかった」
「そんなの関係ないよ。現にこうやってクウネが怪我したんだから。私だって何がなんでもアイツより先に黒針竜を狩るつもりだよ」
バスクさんが苦笑いを浮かべながら、話す。
「おう。頼りにしてるぜ。あと、警告したからって、ホントに小間切れにはするなよ?」
「もちろんそんな事はしないよっ!」
宿屋に着いた私達はバスクさんに言われ、先にお風呂に入りに行った。
バスクさんは、アイシャ達が帰るのを宿屋の前で待ってくれるとの事だった。
私とクウネがお風呂の方に移動していると、宿屋の入口の方からバスクさん達の声が聞こえたので、入口に行くと、もうイスネリが皆を連れて帰って来ていた。
「おー、イスネリ! 早かったね! ありがとう!」
私が声を掛けると、皆がこっちを向いた。
アイシャとミレニアさんが心配そうな顔でクウネの方に来て、声を掛けていた。
そしてバスクさんがみんなに声を掛ける。
「よし。これを洗い流したら全員、後でホールに集合するぞ」
私達は返事をすると、みんなでお風呂に向かった。
ー◇◇ー
ドラゴン避けを洗い流した私達は、宿屋のホールに集まった。
もう日はだいぶ傾いていた。
みんなに向かってバスクさんが話し始める。
「まず、現在の状況を確認するぞ。今日、エドセントは黒針竜に目印を付けた。どのくらい正確かは分からんが、これで奴らはかなり早く黒針竜を見つける事ができるはずだ」
私達が頷き、バスクさんが続ける。
「そこでどうやって、奴らより早く黒針竜を見つけるか、だが…」
ザージンさんが手を挙げて、クウネに刺さっていた矢を持ちながら話し出す。
「この矢の呪法は分かんないっすけど、この矢には匂いも付けてあるみたいっすから、ある程度の距離だったら、この匂いを追えるっす」
バスクさんが腕組みをして考える。
イスネリも手を挙げて話し出す。
「もうバスクさん達も、わたくしの事を知ってしまいましたし、わたくしが空から直接探しますの」
ふーん、と唸ってバスクさんがまた考えだした。
私が手を挙げて話し出した。
「バスクさん。空からイスネリに探してもらうのが一番早いよ! それで私達が近くまで行ったら、ザージンさんに任せるのが、いいと思うけど…」
バスクさんが答える。
「俺もそれが一番いいと思うんだがな…」
「だけど、なに?」
「エドセント達の出方が気になってな…。奴はトラップを得意にしているんだ。そのトラップに黒針竜が引っ掛かる前に俺達が見つけないといけないんだが、俺達に対しても何かトラップを仕掛けてるんじゃないかと思ってな…」
アイシャが話し出す。
「バスクさん。奴らが何を仕掛けてくるのか心配しても仕方ありません。私達は奴らより早く黒針竜を見つけて、討つ。それだけです」
バスクさんがフッと笑って答える。
「確かにそうだな。アイシャちゃんの言うとおりだ。じゃあ、明日は空からの探索をお願いしてもいいか? イスネリちゃん」
「お任せくださいですの」
明日の私達の黒針竜探索の方法が決まった。
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