第151話 遭遇
翌日、私達は二日目の探索でゴードルネ森林に入って行った。
昨日とは違う方角に向けて進んで行き、昨日と同じようにザージンさんとイスネリが先頭で警戒しながら進んでいった。
昆虫型や狼型のモンスターに何度か遭遇したが、私達はそれらを無難に退けた後、森の中の少し拓けた場所で休憩を取っていた。
皆で座りながら、私は向かいに座るバスクさんに話し掛ける。
「なかなか見つからないもんだね。黒針竜って」
「そうだな。去年も探索して二、三日ぐらいしてから遭遇したからな。これぐらいはしょうがないな」
「私が一回、空から見てみようか?」
「おお、それは良いかもな。ちょっとやってみるか?」
私は立ち上がると、小盾に乗ってそのまま真上に上がっていった。
森の木の高さを越えて、周りを見渡したが、遠くの山まで続く広大な森林地帯には木しか見えなかった。
下の方からバスクさんの声が聞こえる。
「どうだー? ラフィーネ! 何か見えたかー?」
私が下を覗き込んで答える。
「ダメー! 木しか見えないよ」
「そうか。じゃあ、テキトーな所で降りて来いよー」
「分かったー」
私は念動で飛んでいられるギリギリの時間まで見てみようと、もう一度周りを見渡した。
すると、私達のいる場所から少し離れているが、森の木がガサガサと激しく動いているのが見えた。
何かが森の中の木を掻き分けて走っているようだった。
そしてそれは私達の方に近づいてきていた。
すぐに私は下に向かって叫んだ。
「何か生き物がこっちに向かって走ってくるよ!」
バスクさんが下で返事をして、他の皆に伝え、全員が立ち上がってその接近に備えた。
私はその何かの動きを見ていたが、念動の時間切れを感じて、下に降りてきた。
バスクさんが私に尋ねてくる。
「ラフィーネ。数とか大きさは分かったか?」
「ごめん。距離が離れてて数も大きさも分からなかった。でも方角はあっちの方」
私が指差すと、ザージンさんが素早くそちらに向かって駆け出し、様子を見に行った。
バスクさんがその後ろから叫ぶ。
「ザージン! あまり離れるなよ!」
了解っすと返事をしたザージンさんが、森の中に入って行った。
すると、すぐに戻ってきたザージンさんがバスクさんに報告する。
「バスクさん! イノシシ系のモンスターっす! 何かに追われてこっちに向かってるぽいっす」
それを聞いたバスクさんが皆に叫ぶ。
「みんな! 気をつけろ! 複数で来るかもしれねえ!」
私達はザージンさんが戻ってきた方に向かって、それぞれの武器を身構えた。
森の中からガサガサという音が近づいて来るのが聞こえた。
そしてザージンさんが言うようにどうやら複数のようだ。
「ブフゥー!」
モンスターの鳴き声が森の中から聞こえる。
それを聞いたバスクさんが皆に伝える。
「恐らくキングボアだ! 気をつけろ!」
そう言った瞬間、森の中から私達のある場所に一匹のキングボアが飛び出して来た。
「来たぞ!」
私とイスネリが一斉に、そのキングボア目掛けて射撃攻撃をする。
ビュンッ! シュンッ! シュンッ!…
「ブヒィーッ!」
ズザサァー!
三日月と矢が命中して、キングボアが走っているその勢いのまま、転倒して地面を滑る。
よしっ! と思った瞬間、バスクさんが叫ぶ。
「ドラドーグルだっ!」
キングボアが飛び出した同じ木の間から、二匹のドラドーグルが飛び出して来た。
二匹のドラドーグルは私達に目もくれず、一直線にキングボアに乗りかかって行った。
倒れたキングボアを見てみると、私達の攻撃で付いた傷以外にもたくさんの傷や出血があった。
どうやらこのキングボアはドラドーグルに襲われて、逃げている途中だったようだ。
キングボアにとどめを刺した二匹のドラドーグルが私達の存在に気付き、こちらを見た。
バスクさんの言っていたように、竜というよりは爬虫類を思わせる顔に全身が黒い鱗で覆われていて、前足には鋭い鉤爪が見えた。
バスクさんがドラドーグルから目を逸らさずに私達に言う。
「他のドラドーグルも来るぞ。黒針竜も近くにいる可能性があるから気をつけろよ」
私達に緊張が走った。
二匹のドラドーグルは絶命したキングボアを乗り越えて、少しずつ私達との距離を詰めて来る。
ガサァ! ガサァ!
そのドラドーグルが現れた同じ場所から、また更に二匹のドラドーグルが姿を現した。
合計四匹。
四匹のドラドーグルはいずれも、大きさはバスクさんより一回りほど大きな体をしている。
新たに現れた二匹も私達に気付いて、同じように私達ににじり寄ってきた。
私達がそのドラドーグル達とにらみ合いながら、お互いを牽制していると、
バキィ! ガサァ!
後を追うように木をなぎ倒して、黒い巨体が姿を現した。
その大きさはドラドーグルの三倍以上あった。
鋭く針のように逆立った黒い鱗。
その黒い鱗に覆われた四肢は私の体より太く、前脚には鋭い鉤爪。
「グフゥゥー」
私達を見た瞬間、その鋭い牙を剥き出しにして、唸り声を出した。
黒針竜だ。
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