第147話 獣竜狩り作戦会議

 朝一番に馬車でモーネサウラを出た私達は、休憩も挟みつつ、順調にゴード村に向かい、日が傾く夕方頃には村に到着することができた。



 ゴード村のすぐ側にあるゴードルネ森林は獣竜だけではなく、狩猟の対象になっているモンスターも多く、昔から狩猟場に近い宿場村として、普段からたくさんの冒険者や狩猟者が利用しているとのことだった。



 昨日のエドセントの印象があって、どうしても狩猟者と呼ばれる人にいい印象が持てなかったが、エドセントのようにマナーが悪く、冒険者にも迷惑を掛ける狩猟者はごく一部だけで、大半の狩猟者はちゃんとルールもマナーもあるとバスクさんが説明してくれた。



 実際に今、このゴードルネ森林周辺には私達が受けた黒針竜討伐以外のクエストは出ていないので、今ゴード村に滞在しているのは、ほとんどが狩猟者だということだった。



 私達は村に入り、馬車乗り場で馬車を降りて、徒歩で今日の宿屋に向かって行った。



 その道中でまばらではあるが、村人ではなさそうな人達がみんな、すれ違い様に会釈したり、挨拶してくれたりした。



 バスクさんから、こうやって挨拶してくれる人は、みんな狩猟者だと教えてもらった。



 歩きながら、私はバスクさんに尋ねる。


「なんか狩猟者の人って、みんな愛想がいいんだね?」


「ああ、そうだろ? エドセントみたいな無法者はほとんどいねえよ。大抵の狩猟者は冒険者に協力的だし、そこまで心配しなくていいぞ」


「ふーん、そうなんだね。少し安心した」


「それにあんな無法者は村を拠点にはしないからな。顔が差すから人が集まる所を拠点にする事はまず無えな」



 どうやら悪質な狩猟者はそうやって、人目を避けて狩猟をしているそうだ。



 そして、バスクさんが私達に言ってくる。


「もうすぐ宿屋に着くが、明日の打ち合わせを最後にしておきたいから、部屋に荷物を置いたら、一階のホールに一度集まってくれ」



 私達は返事をして、少し歩いたら宿屋が見えてきた。


 バスクさんに言われた通り、部屋に荷物を置いた私達は宿屋の一階にある食堂にもなっているホールに集まった。


 既にテーブルにはバスクさんとザージンさんが座っていて、その一つのテーブルを囲むように座った私達は、バスクさんの仕切りのもと、打ち合わせを始めた。


 周りのテーブルにもいくつかの狩猟者の集まりが、私達と同じように打ち合わせをしているのが見えた。



 そしてバスクさんがみんなに口を開く。


「探索方法については昨日の打ち合わせ通りにいくとして、遭遇した時の戦闘について打ち合わせしていくぞ。まずヴァルガン種だが、今回のクエストではとりあえず黒針竜と呼ぶ事にする」


「そうだね。なんかややこしいもんね。その方が分かりやすいよ」


「そうだろ? で、その黒針竜だが、コイツには取り巻きがいる」


「取り巻き?」


「ああ、ドラドーグルという小型の獣竜だ。竜といっても、どちらかというと二足歩行のトカゲみたいな見た目をしてる」



 私が疑問に思い、バスクさんに聞く。


「何でそんな取り巻きがいるの?」


「コイツらは共存関係で繋がっていて、俺の知っている情報だと、一匹の黒針竜にはだいたい四、五匹のドラドーグルがくっついている」



 そこでアイシャが尋ねる。


「そのドラドーグルというのは強いのですか?」


「いや、一匹だと大したことはない。大きさも大人よりちょっと大きいくらいだし、牙と爪にさえ気をつければ大丈夫なんだが、コイツらは連携して襲ってくるからちと厄介だ」



 私が聞き返す。


「連携って、どうやって?」


「簡単に言うと、集中攻撃をしてくる。一つの標的を決めると、その四、五匹が連続で襲ってくる感じだな」


「そうなると、的にならないようにしないといけないんだね」


「いや、それはかなり難しいだろう。コイツらのすぐ側には黒針竜もいるし、絶対に誰かを標的にして攻撃してくる」


 頷きながら、私がバスクさんに尋ねる。


「じゃあ、そのドラドーグルにはどんな作戦でいくの?」


「俺が盾役タンクになって、ドラドーグルの的になる」



 私達は驚いて、私が思わず声を上げる。


「バスクさん。それは危険だよ! みんなバラバラに分散した方が良くない?」


「分散して、誰かが標的になって襲われたら、フォローが遅れるだろう? だったら一ヶ所に集めて一気にやった方が効率がいいし、危険も少ない」



 私が更に尋ねる。


「でも一ヶ所に集めてもどうやってそのドラドーグルの攻撃を防いで、攻撃をするの? やっぱり危険だよ?」



 バスクさんはニヤっと笑い、話し出す。


「ラフィーネが心配してくれるのはありがたいんだが、俺の本職は盾役タンクだから大丈夫だ。今回はちゃんと大盾も用意してきてるからよ」


「えっ? バスクさんて盾役タンクやってたの?」


「ああ、だから今回の作戦の大筋は俺が盾役タンクをやって、ラフィーネ。射撃の出来るお前とイスネリちゃんが俺のフォロー役だ」


 そう言われて、私とイスネリは顔を見合せた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る