第142話 新しい武器
受付のお姉さんが続けて話してくれる。
「ご存じの通り、ドラゴンというのは骨から牙や外皮まで、非常に高値で取り引きされる事も少なくありません。ですので、それらを狙った狩猟者がいるんです」
「でも、それって何か問題なんですか? 依頼主にとっては討伐されるんだったら、別に誰でもいいんじゃ…」
「確かに依頼主にとって結果は同じなのですが、冒険者にとっては非常に危険なんです。狩猟者の中には自分達が獲物を狩る為なら、平気で冒険者の妨害をする者もごく少数ですが、いるそうなので」
アイシャがお姉さんに尋ねる。
「この獣竜も狩猟者に狙われているのですか?」
「そうなんです。昨年もこのヴァルガン種…別名は黒針竜と呼ばれているこの獣竜は、討伐クエストの対象になっていますが、その時も何件か冒険者と悪質な狩猟者との間でいざこざがあったと聞いています。ですので、ラフィーネさん達も気を付けてくださいね」
昨年というと、バスクさんも一年前って言ってたから、もしかしたらその狩猟者って人達と何かあったのかな?
とりあえず私達はそのクエストを受けて、再びバスクさんとザージンさんのいるテーブルに戻ってきた。
私はバスクさんにさっき受付のお姉さんに聞いたことを聞いてみた。
「バスクさん。一年前の時に狩猟者と何かあったりしたの?」
「ん? ああ、まあ、あったな」
バスクさんとザージンさんの表情が明らかに暗くなった。
バスクさんが続けて答える。
「狩猟者ってのは、冒険者と違って取り決めがないからな。中には本当にやりたい放題やる連中がいるんだよ」
「やりたい放題なの?」
「ごく一部の奴らだけどな。ほら、冒険者は冒険者同士の争いはご法度だろ? 奴らにはそれがないからな」
冒険者は冒険者同士で争ったりすると、冒険者登録を取り上げられ、最悪の場合は刑罰を受ける。
つまり犯罪者になってしまう事があるのだ。
私がバスクさんに尋ねる。
「私達で大丈夫かな?」
「お、珍しく弱気だな? ラフィーネ。お前なら大丈夫だと思うぜ。あのグレイベアボスも一撃で倒せたんだからよ」
「そうかな? うん。分かった。じゃあ一緒に頑張ろうね、バスクさん。ザージンさん」
「そうだな。頼りにしてるぜ。それじゃ、クエストの出発は明日にするとして、ラフィーネ。今日の夜は空いてるか?」
「今日? なんで? たぶん大丈夫だけど…」
「前に約束してた奢りだよ。明日からの打ち合わせも兼ねて今晩、どうだ?」
「ああ、そういう事ね。分かったよ。じゃあ、この後に行こうか?」
そこでイスネリが私に話し掛けてくる。
「あの、ラフィーネさん。わたくしこのクエストに備えて、新しい武器を調達したいのですが、よろしいですの?」
「ん? 新しい武器にするの? イスネリ」
「はいですの」
クウネも話に入ってくる。
「クウネもこの手甲、ちょっと調整してもらいたいなー」
「クウネも? そっか。じゃあ、みんなで武器屋さんに行こうか? じゃあ、バスクさん。私達、明日の準備でこれから武器屋さんに行って来るから、その後でもいいかな?」
「ああ、全然構わねえよ。じゃあ、終わったら酒場の方に来てくれよ。場所は…」
私達はバスクさんに酒場の場所を聞いて、武器屋での用事を済ませた後、その酒場でバスクさん達と合流することになった。
私達はギルドを出て、武器屋に向かった。
武器屋に着くと、いつものおじさんが迎えてくれた。
「お、嬢ちゃん達。いらっしゃい! 今日はなんだい?」
イスネリが前に出て、おじさんに話す。
「今日は弓と矢を探しに来ましたの」
「お、槍のお嬢ちゃんだね。弓ならそっちの壁に並んでるよ」
おじさんが指差した方の壁にいくつかの弓が並んでいる。
イスネリはそれらを近くまで行って見ると、振り返っておじさんに言った。
「ここに並んでいるので全部ですの?」
「ん? いや、まだいくつか倉庫にはあるけど、どんなのがいいんだい?」
「一番大きい弓を見せてもらえますの?」
一番大きい弓?
おじさんは驚いた顔をしたが、ちょっと考えた後、イスネリに待っているように伝えると、店の奥に消えて行った。
しばらくして、おじさんがいかにも重そうな一張の弓を抱えて持ってきた。
「これがうちで一番大きな弓だけど、お嬢ちゃんに引けるかな?」
イスネリはその弓を受け取ると、おもむろに構えて、その弓の弦を目一杯まで引くと、引いた指を離した。
ビュゥン!
「うん。いい感じですの。試し撃ちしてもいいですの?」
再び驚いた顔のおじさんが答える。
「あ、ああ。裏の方でどうぞ」
前にも見たような光景だな…。
だって、ワイバーンですもの。この
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