因縁の獣竜狩り編

第141話 因縁の獣竜

 私達がギルドの中に入ると、私が想像してたよりも人は少なく、少し閑散としていた。



 私達はすぐにクエストボードの方に行って、どんなクエストが出ているか確認しに行くと、ギルドの奥の方から声を掛けられた。


「おーい! ラフィーネ!」


 声の主はバスクさんだった。


 ザージンさんと二人でテーブル席に座り、こっちに向かって手を振っていた。



 私達はボードを離れ、バスクさん達の方に向かった。


「こんにちは。バスクさん、ザージンさん。二人はもうクエスト決めたの?」


「おう。一つ受けたいクエストがあるんだが、ちょっと聞いてくれるか?」


 そう言うと、バスクさんは一枚の紙を取り出し、テーブルの上に置いた。


 クエストの依頼書だった。

 その内容を見て、私が尋ねる。


「ヴァルガン種獣竜討伐? これを受けるの?」


「そう。これを受けたいと思ってるんだが、ラフィーネ達も手伝ってくれねえかなと思ってよ」


「私達が?」


「ああ、俺のチームは今、動けるのは俺とザージンだけなんだよ。二人だけではちょっと荷が重いクエストだからよ」



 アイシャがそこで声を出した。


「でしたら、他のクエストでもよろしいのでは? 無理して受けなくても、二人だったら受けられるクエストはなかったんですか?」



 バスクさんはふんふんと頷き、答えた。


「確かに。アイシャちゃんの言う通り、無理にこのクエストを受けなくても、俺とザージンだけでいけるクエストもあるんだが、これは俺の個人的な理由でこのクエストは受けたいんだ」



 私が尋ねる。


「バスクさんの個人的な理由?」


「ああ、俺のチームはザージンも含めて四人なんだが、今他の二人は一年前の負傷が原因で、まだ復帰できてねえんだ。その原因がこの獣竜だ」


「一年前にも現れた獣竜なの?」


「その時は結局誰も討ち取れず、姿を消したんだが、このヴァルガン種ってのはそうそういるもんじゃねえ。恐らく同一個体じゃねえかと思ってる。俺にとっては因縁の獣竜なんだよ」



 隣で聞いているザージンさんもいつになく真面目な顔で静かに頷きながら、バスクさんの話を聞いている。



 私は少し考えて、アイシャに尋ねる。


「どうかな?アイシャ。私はバスクさんのお願いだし、受けたいと思うんだけど」


「ええ、私は別にお嬢様がよければ構いませんよ」



 そこでイスネリが話し出した。


「この獣竜は人や村を襲ったりするんですの?」



 バスクさんが答える。


「もちろんだ。こうやってギルドに討伐依頼が出ている時点で、何かしら被害が出てるからな。っていうか、ラフィーネのチーム、いつの間にか人数増えたな」


「え? あ、ああそうだね。なんか増えちゃったね」


「その後ろの白いもメンバーなのか?」



 私はそう言われて、後ろ足を振り返るといつの間にか少女姿になっているナヴィが立っていて、バスクさんに挨拶する。


「ナヴィにゃ。よろしくにゃ」


「おう。バスクだ。よろしくな」



 そして私はミレニアさんも続けてバスクさんに紹介する。


「…よろしくお願いします」


「おう。よろしくな。それでどうだ? ラフィーネ。受けてくれるか?」


「うん。いいよ。この獣竜の出現場所もそんなに遠くないみたいだし、バスクさんの因縁の相手なんでしょ?」


「まあ、そうだな」



 私達はバスクさん達と共にそのクエストを受けることにした。


 そこで私はバスクさんから離れて、小声でナヴィに聞く。


(なんでその姿になってんの?しかも自己紹介までしちゃって)


(さっき皆がしゃべってる間に冒険者登録してきたにゃ)


(うそ? 登録できたの?)


(バッチリできたにゃ)


 ナヴィがまたいつものドヤ顔になった。



 すると、アイシャ達と話していたバスクさんが私を呼んだ。


「ラフィーネ。どうした? 何か問題か?」


「ううん。大丈夫。じゃあ、私達はそのクエスト受注してくるね」



 私達は受付カウンターでそのクエストの受注をしていると、受付のお姉さんが私に話し掛けてきた。


「ラフィーネさん。こちらのクエスト、気を付けてくださいね。近頃はギルドを通さずに獣竜を狙う狩猟者の人達が多くなってきてますから」


 狩猟者…?

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