第6話 最初の目的地
朝日に顔を照らされて、私は目が覚めた。
パカッパカッとネーシャの軽快な足音がする。
そうか、知らない間にネーシャの上で寝てたんだと思い、ハッとなった。
後ろから私を抱いているアイシャは?
「お目覚めですか?お嬢様?」
「ごめん。アイシャ。寝ちゃってた」
「大丈夫ですよ。それよりこんな所で寝て、お嬢様こそ大丈夫ですか?」
「うん、大丈夫。アイシャが落ちないように支えてくれてたんだよね?ありがとね」
「そうですね。お嬢様が思ってたより軽くて良かったです」
「…褒め言葉と受けとるよ」
そこで私は気づいた。
『万物念動』は?鞄は?私寝ちゃったから落ちてない?
ネーシャの横を見たら、ちゃんと鞄は浮かんでネーシャと同じ速度で付いてきていた。
どうやら、無意識でも寝ててもスキルは発動していたみたいだ。
「お嬢様も起きましたし、ネーシャも休ませてあげたいので、ここら辺で一度休憩にしませんか?」
「そうだね、夜通し歩いてくれたもんね。どっかで休もう」
私達は街道脇に大きな木を見つけて、その下でひと休みすることにした。
辺りはもうすっかり明るくなっていた。
アイシャは荷物の中にあった簡易コンロを出してお湯を沸かして、紅茶を入れてくれた。
んー、朝の青空の下で飲む紅茶も格別だ。
そしてパンを朝食にして、私達は現在地を確認するため地図を出した。
といっても最初の目的地であるブルクの町までは一本道に近いので、間違うことはない。
残りの距離を確認して、どの辺りで休憩を取るかの確認だ。
やはり当初の予定通りお昼頃にブルクには着けそうだ。
もうすっかり朝だし、家の人達は私達の家出に気付いてる頃かな?
そんな事を考えてるとアイシャが話し掛けてきた。
「このまま行くとお昼頃には着きますが、そこからが重要です。その次の町に出発するのは明日になりますので、念のため今日一日、町で身を隠さないといけません」
「そうだよね。今頃私達がいない事に気付いて、ひょっとしたら、すぐに追いかけて来てるかもしれないもんね」
一応書き置きは残したし、三ヶ月ぐらいで帰るって書いておいたけど、すぐに連れ戻しに来る事は十分に考えられる。
最初に探すのはポーリアの街中だと思うけど、たぶん私達が今向かっているブルクにも、今日中に来る可能性がある。
誰が追いかけて来るかわからないが、それをやり過ごす為に町で一晩、身を隠さなければならない。
「そんなに大きな町ではないですが、身を隠すぐらいなら大丈夫でしょう。ただ念の為、宿屋に滞在するのは避けましょう。まずそこを探しに来るでしょうから」
「そしたら、どこに隠れる?」
なんか、かくれんぼしてるみたいでワクワクしてきた。
「どこかの家に匿ってもらうか、もし教会などがあればそこでも良いかもしれません」
「うーん、そうだね。とりあえず到着したら、すぐに隠れる場所を探すって事で」
ひとまずの作戦は決まって、また出発の準備を始める。
アイシャがキョロキョロしている。
「どうしたの?アイシャ?」
「いえ、使ったコップとか食器を洗える水場がないかなと思いまして」
「あー、ちょっと無さそうだね。アイシャ、ちょっと貸して」
そう言ってアイシャから食器類を受け取ると、私は念動を使ってそれらを超高速で回転させて水気を飛ばした。
「完全に汚れは取れないけど、とりあえずこれで鞄の中は汚れないんじゃない?」
「そうですね、ありがとうございます」
そうして私達は再びネーシャに跨がり、移動を開始した。
ちょうどお昼になって、私達は最初の目的地ブルクの町に着いた。
ブルクはそんなに大きな町ではなくて、宿屋とかも数軒程度だけど、農業が盛んで、グレリオン家の野菜などはここで収穫された物が多いそうだ。
私達はブルクの町に足を踏み入れた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます