第28話「全ての世界に平和を……」

オビトは息をして居なかった。

それに気付いた寛太はセイラに魔法で回復を頼んだ。

「セイラちゃん……どう?」

「ダメ……私の回復魔法じゃどうにもならない……」

「そんな……じゃあ急いで病院に……」

「そうね……ペガちゃん呼ぶわ」

「うん……オビト……頑張れよ」


その頃、避難所で人々を守りながら戦うエクスカイザーの前にマジョーラが現れた。


「消えてもらうよ……別の世界のヒーローさん…」

マジョーラがエクスカイザーに魔法攻撃を仕掛ける。

「うわっ!?」

マジョーラの魔法攻撃は遠距離攻撃が可能で接近戦主体の戦法を得意とするエクスカイザーには相性が悪かった。

「クソッ……これじゃあ近づけねぇ……」


「ホホホっ……死ねぇ!!」

だが、誰かがマジョーラを攻撃。

「ぐはっ!?」


「まったく……目の前の敵に集中し過ぎて背後がガラ空きだぜ……マジョーラ……」

「き……貴様……!?」

そこに現れたのはパラディンオブナイトだった。

パラディンオブナイトのお陰でマジョーラの攻撃が止んだ。

「あんたは!」

「よっ!エクスカイザー……久しぶりだな。まさか、あんたまでこの世界に来てたとはな……」

「世界がピンチならどこにだって行くぜ。それがジャスティーフォースだ」

「そりゃ、ありがたい……ならもう少しだけ力を貸してくれ」

「勿論だ!」

「マジョーラは俺が引き受ける。エクスカイザーは後ろの奴らを」

「任せろ!」

「くっ……おのれ……パラディンオブナイトー!!」

マジョーラがパラディンオブナイトにも魔法攻撃を仕掛ける。

「グランスタ王国最強の騎士の力……見せてやる!!」

パラディンオブナイトはマジョーラに真っ向から攻撃を仕掛ける。


そこにペガちゃんに乗って寛太達がやって来た。

「おーい!エクスカイザーさーん」

「ん?おっ、アイツら……」

そしてペガちゃんが着地。

「セイラちゃんはオビトをお医者さんに……ここは俺が……」

「え?どうゆう事?」

「俺も戦えるんだよ」

そう言って寛太はグールに『変身』

「えっ!?ウソッ……なんで?」

「説明は後……早くオビトを」

「ああ……うん……」

セイラはオビトを医者に見せに行く。


「寛太!お前、何でグールに!?」

パラディンオブナイトも驚く。

「さぁ?よくわかりません……でもきっとオーヴェルさんが……」

「そうか……剣と鎧を纏ったからには君も戦士だ!行くぞ!」

「はい!」

パラディンオブナイトがマジョーラを蹴り飛ばす。

「ぐっ……」

そしてパラディンオブナイト、グール、エクスカイザーが並び立つ。

「マジョーラ、このヒーロー3人を相手に勝てるつもりか?」

「くっ……流石に分が悪いか……」

マジョーラはそう言って姿を消した。

「やれやれ……んじゃ後は雑魚だな……行くぞ!」

「はい!」

「よっしゃ!」

パラディンオブナイト、グール、エクスカイザーがそれぞれ残りの魔獣人や使い魔と戦い始めた。


その頃、各地でヒーロー達は魔王軍を全滅させ勝利を納めていた。

「よし……片付いた」

とグレイザー。

「やれやれ……やっと終わった……」

とドライガー。

「勝ったでござる……」

と星影。


医者による懸命な治療を受けるオビト。

その頃セイラは魔術書を読み漁りオビトを助ける事が出来る回復魔法を探していた。

「……あった、これなら……」

そして何かを見つけた様だ。

セイラはオビトの元へ。

「あの……オビトは?」

「君、今は治療中だ。出て言ってくれ」

「今すぐオビトを回復させる必要があるんです!」

そしてセイラは強引にも割って入りオビトに魔法を掛ける。

「君!何をする」

「オビトお願い……この世界もグランスタ王国も救うにはあなたの力が必要なの……だから目覚めて!!」

セイラは自身の魔力を全てこの回復魔法に注いだ。

この魔法は今までセイラが使っていた回復魔法とは桁違いの力を秘めた完全に上位互換となる回復魔法だった。

しかし、その強力さ故、術者の魔力を全て消耗してしまう程だった。

戦いで魔力を消耗しているセイラの魔力でどこまで回復出来るかは分からなかった。

「くっ……ごめん……これが……限界……」

セイラはその場で倒れた。

すると、オビトの体を輝き出し周りの医者達も驚く。

「な……何だこれは……」

そしてオビトは目覚めた。

起き上がるオビトに医者達はもっと驚く。

「……セイラ……」

「はぁ……はぁ……やった……オビト……後は頼むわ……」

「セイラ、ありがとう……」

オビトは外に出る。

すると、そこには魔王軍達を退けた寛太、直樹、クロガネが……。

「直樹さん!」

「よっ!手伝いに来たぜ」

「来てくれてたんですね」

「ああ、ジャスティーフォースの皆でな」

「ありがとうございます」

「セイラちゃんは?」

「それが……セイラは凄い回復魔法を使ってくれたんだ……だから今は魔力を消耗しきって……」

「じゃあ、これ以上回復魔法は望めないか……」

「ええ、だから次で最後にしなくては……」


「それは良い事を聞いた……ならここで貴様らを倒せば事切れると言う訳だな……」

全員が振り向くとそこには魔王ディアボロスが……。

「ディアボロス……こんな所にまで……」

そしてオビトが前に出る。

「ディアボロス……ここで決着を着けてやる!!」

「フフッ……」

そこにグレイザー達も集結。

「皆!」

「グレイザーさん!皆……」

「奴が魔王ディアボロス……」

「ええ……」

「フンッ……ヒーロー共の集結か……纏めて掛かって来るか?」

「やってやるぜ!」

ドライガーが威勢よく構える。

「待てドライガー……ここから先はクロスセイバー達の戦いだ」

「でも……」

「グレイザーさんの言う通りです……この世界は俺達の手で救います」

そう宣言するオビト。

「良く言った。この世界は君達が守らないとな」

そして、オビト、クロガネ、寛太がディアボロスの前に並び立つ。

「ん?寛太、何で?」

「俺も戦えるんだよ!」

そう言って寛太は『冥王剣-デスギャリバー』を取り出す。

「寛太……まさか……」

「うん!行くよ!」

「おう!!」

3人は『変身』

クロガネはロイヤルナイトに。

寛太は魔剣士グールに。

オビトはクロスセイバードラゴンフォームにそれぞれ変身。

「来い……」

3人でディアボロスに挑む。

3人は3方に散り正面、右側、左側から同時に攻撃を仕掛ける。

左右からの攻撃はディアボロスに受け止められるが、正面からのクロスセイバーの攻撃はディアボロスも避け切れなかった。

「うりゃぁぁ!!」

クロスセイバーの2本の『ドラゴブレイカー』がディアボロスを斬り裂く。

「ぐわっ!?」

更にディアボロスが怯んだ隙に右からロイヤルナイト。

左からグールが攻撃。

2人の攻撃に反応しきれないディアボロスはこれまでに無くダメージを受けた。

「ぐっ……おのれ〜……」

ディアボロスは手を掲げ再び雷撃で攻撃してくる。

「まずい……避けろ!」

ロイヤルナイトの呼び掛けで雷撃をかわすクロスセイバーとグール。

しかし、どこに落ちるか分からない雷撃をかわすのは至難の業だ。

「このままじゃらちがあかない……反撃だ!」

クロスセイバーは意を決し雷撃が降り注ぐ中ディアボロスに突撃する。

「待て!!」

慌てて止めるロイヤルナイトだが、クロスセイバーは止まらない。

そして、クロスセイバー目掛けて雷撃が落ちる。

「ぐわぁぁぁぁっ!?」

「クロスセイバー!!」

ロイヤルナイトとグールが叫ぶ。

「フンッ……血迷ったか……」

だが、クロスセイバーは構わず突撃して来る。

「何っ!?」

「おりゃぁぁぁぁぁっ!!」

「しまった!?竜の鎧には雷撃は通用しないのか!?」

クロスセイバーは必殺技『ドラゴインフェルノ』でディアボロスを攻撃。

「ぐわっ!?」

ディアボロスがダメージを受けた事で雷撃が治まる。

「今だ!俺達も行くぞ!」

「はい!」

ロイヤルナイトとグールもクロスセイバーに続きディアボロスに攻撃を仕掛ける。

ロイヤルナイトの必殺技『ロイヤルブレイク』

そしてグールの必殺技『ライトニングレイン』

2人の必殺技も立て続けに受けるディアボロス。

「ぐあぁぁぁっ……」

奇しくも自分と同じ雷撃で反撃を喰らうディアボロス。

「ぐっ……何故だ……何故貴様らは……そうまでして……我に歯向かう……」

「決まってるだろ!平和を願うのは何処の世界の人達にとっても同じ事だ!その平和を取り戻す為に……お前を倒す!!」

クロスセイバーは2本の『ドラゴブレイカー』を合体させ、大剣モードに。

「これで最後だ!平和を願う全ての世界の人達の想いを喰らえー!!」

クロスセイバーは必殺技『タイラントスラッシュ』の一撃でディアボロスを斬り裂く。

「ぐわぁぁぁぁぁっ!?……平和だと……そんなもの……そんなものーっ!!」

ディアボロスは倒れた。

全ての世界の平和を願う人々の想いの勝利だ。


ディアボロスが倒れた事を知り避難所に残っていた人々は大歓声を上げた。

それはクロスセイバーが、いや、クロスセイバー達がこの世界のヒーローとなった瞬間だった。

クロスセイバーは『ドラゴブレイカー』を天に掲げ勝利のポーズ。

すると、空を覆っていた暗雲は消え青空が戻った。


「やったね……」

魔力を使い果たし動けないでいたセイラもオビト達の勝利を喜ぶ。


クロスセイバー達の勝利を見届けたグレイザー達は大谷達と合流し、そっとこの世界から去って行った。


それから数日後……。

世の中ではすっかりヒーローとして認知されたクロスセイバー。

クロガネ、オビト、セイラはグランスタ王国に帰る準備を進める。

「本当に帰っちゃうの?」

寛太が尋ねる。

「ああ……ディアボロスも倒した事だし……もう俺達がこの世界に居る必要ないから」

「でも……この世界の人達は君達を必要としてるよ」

「悪いな寛太。元々俺達はディアボロスを追ってこの世界に来ただけなんだ。必要以上にこの世界の人達と関わるべきじゃないんだ」

そうクロガネが諭す。

「でも……」

「本当だったらこの世界の人達から魔法の記憶を消さなきゃ行けないんだが……それは野暮ってもんだろ……せめてそうならない様にロズチェス国王様には俺から頼んでおくからさ」

「じゃあ……皆の事忘れないで良いんだね」

「ああ。あっ、それと……冥王剣-デスギャリバーは回収させて貰うぜ。あれはこの世界にあっちゃいけない」

「はい……」

寛太はデスギャリバーをクロガネに差し出す。

「さてと……荷物も纏まったし……最後にたこ焼きでも食べて帰るか!」

「あっ!賛成!おじさんにも挨拶したいしね!」

「んじゃ行こうぜ!」

4人で最後にたこ焼きを食べに行く。


本当に平和になったこの世界に……。

もうクロスセイバーや剣……魔法は必要ない。

オビト達は最後の思い出に4人でたこ焼きを食べグランスタ王国に帰って行った。


それから1年後……。

20歳になった寛太は父親の経営する不動産会社に入社した。

この日、父親の博士に呼ばれていた。

社長室のドアをノックする寛太。

父親と言えど社長として会うのは緊張する。

「入りたまえ」

「失礼します」

寛太が社長室に入る。

「よく来たな寛太。しかし……まさか一年で我が社に入る決意が固まるとは思わなかったぞ」

「俺……やりたい事が見つかったから」

「やりたい事?」

「うん……魔王軍の攻撃で家を失った人はまだまだ沢山いる。復興作業は続いてるけど、本当に元通りになるのはまだまだ先だ……だから俺がこの会社で家を失った人々の生活の手助けをしたい」

「そうか……分かった。それがお前の目指す物なら思う存分やってみなさい」

「!ありがとう父さん……あっ、いや……ありがとうございます。社長!」

「フフッ……」

寛太は父親との話を終え外に出る。

「オビト、セイラちゃん元気にしてる?この世界はまだまだ復興の途中だけど、必ず元通りに……いや、前よりもっといい世界にしてみせるよ!」

そう胸に誓い寛太も新たな人生を歩みだした。


その頃、オビトとセイラも新たな目標に向け進んでいた。

「よし……じゃあ行ってくるぜセイラ」

「うん、気を付けてね」

「おう!」

「あっ、迷子にならないでよ」

「うっ……大丈夫だって、もう行き慣れた場所だから……じゃあな!」

オビトは勢いよく飛び出す。

オビトの新たな目標、竜族と人間の交友関係を築く為に竜族と話し合いに向かったのだ。

魔王軍を倒し平和になったグランスタ王国の未来には人間と竜族が手を取り合い平和に暮らす日が訪れる事を信じて。


ー完ー

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クロスセイバー 山ピー @TAKA4414

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