第23話「お祭りパニック」

ドラゴニルとの戦いに後味の悪い結果で決着の着いたオビト……。

しかし、いつもの日常に戻っていた。

今日は朝からたこ焼き屋の店主と共にお祭りの出店の準備をしていた。

「オビト君、ちょっとここ押さえておいてくれ」

「はいよ」

オビトが支え店主が釘を打つ。

あっと言う間に即席の屋台が完成した。

「へぇ〜、おっちゃん器用だな」

「まっ、毎年やってるからな」

お祭りの準備は着々と進む。

「秋祭りは明後日だ。しっかり体調整えとけよ!」

「おう!」


そしてその夜。

家に帰ったオビトはセイラと寛太に秋祭りの事を話す。

「秋祭りかぁ。そういえばこの辺りでは毎年やってるみたいだけど、まだ行った事ないなぁ」

「楽しそう!」

「だろ?だから2人も来ないかと思ってさ」

「うん、明後日なら俺も夕方からなら行けるよ」

「私も!バイト終わったらすぐ行く!」

「オッケー、たこ焼き喰いに来いよ!」


それから2日後の秋祭り当日。

オビトは朝からたこ焼きの屋台の準備をする。

「材料よし、ガスよし、たこ焼き機よし!おっちゃん準備良いぜ!」

「おう!今日はたこ焼き屋にとっては稼ぎ時だからな。気合い入れてくぞ!」

「おう!」


だがその頃、魔王城では……。

「くっ……ギレースめ……良くもドラゴニルを……」

マジョーラはギレースに対して怒りを露わにしていた。

「おやおや……それは言い掛かりが過ぎるのでは?」

そこにギレースが現れた。

「ギレース……貴様……」

「ドラゴニルはクロスセイバーに負けた。弱い奴が死ぬのは当然の事では?」

「貴様!!」

マジョーラはギレースに向かって杖を向ける。

「おや?私に魔法でも掛けるおつもりかな?辞めておいた方がいい。今の私には冥王剣がある……あなた程度の魔法など……」

「貴様ー!!」

マジョーラはギレースに向かって黒魔術を掛ける。

しかし、ギレースは冥王剣の力でマジョーラの魔法を跳ね返す。

「う、うわぁぁぁぁっ!?」

なんとマジョーラは自分の魔法でカエルになってしまった。

「ハハハッ……無様な姿ですねぇ……」

ギレースがマジョーラを捕まえる。

「ゲコゲコ!!(触るな!!)」

「フンッ」

そしてギレースはマジョーラを外に投げ捨てる。

「さて、私もそろそろ行きますかね」

ギレースも去って行く。


この日の夕方。

いよいよ秋祭りの会場に人々が集まり始める。

オビト達も屋台を開ける。

早速小学生達がたこ焼きを買いに来る。

「すみませーん、たこ焼き下さーい」

「はいよ!小学生?」

「そうです」

「んじゃおまけだ。1パック200円で良いよ」

「ええっ!?おっちゃん1パック300円だろ!?いいのか?」

「ああ、構わねぇよ」

小学生達は大喜びで買って行った。

「おっちゃん気前良すぎだろ」

「なーにいいじゃねぇか。少ないお小遣い握りしめて買いに来てくれてるんだろうから……かわいいもんじゃねぇか」

「ハハッ」

すっかり日が暮れ暗くなった頃……。

セイラと寛太が屋台にやって来た。

「ヤッホー、オビト!」

「どう?調子は?」

「おう、来たか!」

「早速たこ焼き買っちゃおうかな」

「ヘイ、毎度!」

セイラと寛太はたこ焼きを食べる。

「熱っ……でもおいひぃ……」

熱々のたこ焼きを頬張るセイラ。

「そのたこ焼きオビト君が焼いたんだよ」

「へぇ〜オビトも腕上げたねぇ」

そして寛太も1つ……。

「うん……熱い……でも美味しい!」

「だろ?じゃんじゃん食え!」

更にたこ焼きを頬張るセイラを見ている寛太……。

「ん?何?」

「えっ?あっ……いや……何でも……」

「セイラ、口元にマヨネーズ付いてるぞ」

オビトがからかう。

「え?ウソッ!?」

慌てて確認するセイラ。

「ん?」

「嘘……」

オビトが笑いながら言う。

「ちょっと!!」

楽しい時間を過ごすオビト達……。

だがその一時を壊す様にギレースが現れた。


「フフフッ……さぁ、冥王剣−デスギャリバーよ!お前の力を見せてみろ……」

ギレースが『冥王剣−デスギャリバー』を天に掲げると空は暗雲に覆われる。


「何だ?急に雲行きが怪しくなったな……?」

寛太が空を見上げて言う。

「これは……」

セイラが何かを感じ取った。

「オビト……何か来る」

「ああ……」

「オビト君、戦いに行くのかい?」

店主が尋ねる。

「ああ、行ってくる……」

「分かった。気を付けろよ」

「セイラ、行くぞ!」

「うん!」

オビトとセイラは戦いに赴く。

「セイラちゃん……気を付けて……」

寛太は2人を見送る。


オビトとセイラが現場に到着するとそこにはギレースの姿が……。

「ギレース!テメェ!何してやがる!!」

「フフッ……来たかクロスセイバー……折角手に入れたデスギャリバーの力を試したくてね……デスギャリバーの力で冥界から魔獣人達と冥界の三銃士を呼び戻そうとしているのさ……」

「何だと……そんな事させるかー!!」

オビトはクロスセイバーに変身しギレースに斬り掛かる。

「おっと……」

ギレースはクロスセイバーの攻撃をかわし臨戦態勢。

「くっ……」

「もう遅いよ……」

「何っ!?」

暗雲の中からまず、グレンドランとジャッカル・キリーバが現れた。

「コイツらは!?」

「フンッ……やれ!」

グレンドランとジャッカル・キリーバがクロスセイバーに襲い掛かる。

「ケッ!一度倒した相手なんかに負けないぜ!!」

クロスセイバーは2体を切り裂く。

「へへっ、どうだ!」

「甘いな……」

グレンドランとジャッカル・キリーバは復活。

「何っ!?」

そして再びクロスセイバーに襲い掛かる。

「そんな……」

「フフッ……そいつらは肉体を持たない亡霊……いくら斬っても無駄だ……」

「何だと!?テメェ、めんどくせぇ事しやがって!」

クロスセイバーは魔獣人の亡霊と戦い続ける。


そして、ギレースはその隙に『冥王剣-デスギャリバー』の力で更に魔獣人を呼び出す。

バラノクロとリザードが出現し、クロスセイバーに襲い掛かる。

「うわっ!?また増えやがった……」

クロスセイバーは更に増えた魔獣人の亡霊に手を焼く。


すると、ギレースは次の行動に……。

ギレースは素早くセイラの背後に回る。

「!いつの間に!?」

そしてギレースがセイラを捕らえる。

「ぐっ……」

「これでクロスセイバーのサポートも出来まい……いや、それより……その魔力を利用させて貰おう」

「なんですって!?」

クロスセイバーがセイラのピンチに気付く。

「セイラ!……クソッ、邪魔だ!!」

クロスセイバーが魔獣人の亡霊達を振り解きセイラの救出に向かう。

だが、ギレースはセイラを連れ逃亡を計る。

「させるかー!!」

「オビトー!!」

クロスセイバーは必死に手を伸ばす。

セイラもクロスセイバーの手を掴もうと手を伸ばす。

2人の指先が触れたかと思った瞬間、ギレースに連れ去られセイラは姿を消した……。

「セイラー!!」

再び魔獣人の亡霊達がクロスセイバーに襲い掛かる。


「くっ……しつこいんだよ……雑魚共!!」

クロスセイバーは『ドラゴンフォーム』にチェンジし、『ドラゴブレイカー』で亡霊達を一瞬で焼き払った。


ギレースが姿を消した事でこれ以上亡霊が現れる事は無い。

クロスセイバーは変身を解除し、寛太の元へ戻る。


だが、オビトにいつもの明るさは無かった。

肩を落として帰って来たオビト……。

「あっ!オビト!大丈夫だった?」

寛太がオビトに駆け寄る。

「……」

オビトは何も答えない。

「あれ?セイラちゃんは?」

「……ギレースに……拐われた……」

「えっ?……ウソでしょ!?ウソだよね!?」

「本当だ……」

寛太はショックを隠し切れなかった。

「何やってるんだよ!!オビトしかセイラちゃん守れないんだよ!?なのに何でこんな事に!?」

「うるせーな!!分かってるよ!!でも……助けられなかった……」

「……!ごめん……1番辛いのは……オビトだよね……」


その頃、グランスタ王国では……。


クロガネが国王の間にやって来た。

「ロズチェス国王様、王宮近辺のパトロール完了しました」

「ご苦労だったクロガネ。今日はオビト達に呼ばれてるんだろ?そろそろ行ってよいぞ」

「はっ!ありがとうございます。何やら向こうの世界で祭り事があるそうで」

「フフッ……たまには羽根を伸ばして楽しんで来い」

「お心遣い感謝します」


だがその時、一人の兵士が駆け込んで来た。

「大変です!グランスタ王国内に多くの闇の軍勢が現れました!」

「何っ!?」

ロズチェス国王とクロガネが外を見てみると……。


魔王軍が大軍勢を率いてグランスタ王国に攻め込んで来ていた。


「こんな大規模な攻撃を仕掛けてくるとは……魔王軍もいよいよ本気だな……直ぐに部隊を編成し対応に出ます」

「うむ、では我々は国民に避難指示を出そう。クロガネ、死ぬなよ」

「はい!」


この魔王軍の大軍勢は何故突然グランスタ王国に攻撃を仕掛けて来たのか……。

クロスセイバーとパラディンオブナイトの最後の戦いが近付いていた。


続く……。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る