グランスタ王国

第13話「父来たる。」

冥界の三銃士の一人バドーラを倒してから1週間が経った頃、それ以来何事もなく平和の日々が過ぎていった。


その頃にはセイラのバイトも無事決まりオビトとセイラ揃ってバイトを始めていた。


セイラはカフェでアルバイトを始めていた。

「お待たせ致しました。アイスコーヒー2つになります」

「ああ、ありがとう……おっ!君新しい子?可愛いね〜」

常連客らしきおじさんが声を掛けて来る。

「あはっ、ありがとうございま〜す」


愛想のいいセイラは直ぐにこのカフェの人気者になった。


一方オビトは相変わらずたこ焼き屋でバイトを続けているが……。

この所魔王軍が攻めて来ない事が気になっていた。


「おいおい、オビト君焦げてるよ!」

「えっ?あっ!あちゃ〜……」

たこ焼きは黒焦げに……。

「それ、今日のオビト君の昼飯な」

「え〜っ……」


それぞれの環境でバイトも安定し魔王軍も攻めて来ない。

オビトとセイラにとってこの世界に来て初めての平和な時間が流れていた。


2人がバイトを終え家に帰ると既に寛太は帰って来ていた。

「あっ、寛太帰ってたんだ」

寛太は頭を抱えていた。

「寛太?どうした?」

「あっ、2人共……いや、実はさ……父さんが来るって言うんだ……」

「ふ〜ん……えっ!?」

なんと、寛太の父親が突然家にやって来ると言うのだ。


一方でその頃、魔王軍は……。

「ったく、1週間も出撃も出来てねぇなんて信じられねぇぜ」

ドラゴニルは戦えない事にイライラを募らせていた。

「しかし……ディアボロス様は何を考えてらっしゃるのかしら」

「さぁな……ああ〜それより戦いてぇ〜!!」


何故この1週間ディアボロスは出撃命令を出さなかったのか。

それは……。


ディアボロスはギレースを呼び出していた。

「ギレースよ……」

「はっ!ディアボロス様……」

「この1週間……お前の言う通り出撃はさせなかった。それで何が狙いだ?」

「ありがとうございます。私は魔剣士グールとやらが持つ冥王剣を手に入れたい……その作戦の準備期間が必要だったのです。しかし、お陰様でようやくグールを罠に嵌める準備が整いました」

「そうか。ならばそれは好きにするがいい」


その頃、オビト、セイラ、寛太は大急ぎで片付けをしていた。

そして、夜とうとう寛太の父親がやって来る。

ピンポーン……。

チャイムが鳴り寛太が出ると。

「よぉ、寛太久しぶりだな」

「父さん……もう突然なんだから……」

寛太は父親を部屋に通す。


「はっ、初めまして」

「どうも……」

「父さん、話したでしょ?今シェアハウスしてるオビトとセイラちゃん」

「ああ、話は聞いてる。どうも、寛太の父の村木博士(むらき ひろし)です」

一通り挨拶を終え博士が椅子に座る。

「で、何?突然来るなんて何かあったの?」

「ああ……お前がどんな暮らしをしてるか見てみたくてな。友達と一緒に暮らし始めたと聞いたから会って見たかったしな」

博士は息子の暮らしぶりが見たかった様だ。


「そんな心配しなくても良いのに……仕事も忙しいんだろ?」

「まぁ、それはそうだが……いずれお前は会社を継ぐんだ。友人関係は把握しておいた方が良いだろう」

「そんな先の話……」

「いやいや、そこまで先の話じゃないぞ?今はまだ高校を卒業したばかりだから実感無いかも知れないが、今色々なアルバイトの経験を積んで、お前が20歳になったらウチの会社に入社して貰おうと思ってるんだからな」

「えぇっ!?来年から父さんの会社で働けっての!?」

「そうだぞ?何か不満か?」

「あの〜……一体どうゆう?」

空気に耐えられなくなったセイラが話を聞く。

「あれ?寛太から聞いて無いのかい?私は不動産業を担う会社の社長をやっていてね。いずれは寛太に会社を継いで貰うつもりだ」

「寛太の家がお金持ちってのは聞いてたけど……まさかお父さんが社長さんだったなんて」

「あのさ父さん……俺、そもそも会社継ぐ気無いんだけど?」

「はぁ?」

「えぇっー!?いやいやいや!寛太、それは勿体ないって!!」

「寛太!お前は村木家の長男で一人息子なんだぞ!?お前が継がないで誰が会社を継ぐんだ!?」

「知らないよ……そんなのそっちで勝手に決めてよ」

「はぁー……お前な……じゃあ聞くが、お前は他にやりたい事があるのか?」

「俺は……人の役に立てる事がしたい」

「何だその漠然とした答えは!!不動産業だって人の役に立ってるだろ!!」

「いや、そういう事じゃなくて……何か困ってる人を助けるそんな仕事がしたいんだ……今はまだどんな仕事がいいか分からないけど……」

「はぁ……今までお前を育てるのにいくら掛かったと思ってるんだ!!100円や200円じゃないんだぞ!!」

「それは父さんが勝手にやった事だろ!!頼んでも無いのに家庭教師雇って、塾にも行かされて……お陰で子どもの頃は友達と遊んだ事なんて一度も無かった!!」

「それはお前の将来の為にやった事だろ!!」

「俺には……自由が無かった!!」

そう言い放つと寛太は家を飛び出して行ってしまった。

「あっ、寛太!!」

オビトが追い掛ける。

「ちょっとオビト……迷子にならないでよ!?」


残されたセイラと博士……。

気まずい……。


「……あっ、気が付かなくてごめんなさい……お茶入れますね……」

「ああ……ありがとう……全く、寛太がそんな事を思っていたとは……」

博士は落胆して座り込んでしまう。


オビトは寛太を探す。

「おーい、寛太ー?どこ行ったー?早く出てきてくれ……これ以上行くと道分かんなくなるぜ……」

「オビト?ごめん、追い掛けて来てくれたんだ」

寛太が出て来た。

「寛太〜良かった……」

「ごめん、びっくりしただろ?父さんって昔からああなんだ……何でもかんでも自分の考えが正しいと思ってる所とかさ、こっちの気も知らないで勝手に物事進めるしさ……」

「まぁ……寛太の気持ちも分からなくは無いよ……でもさ、お父さんお前の事を考えてくれてるのは間違い無いと思うぜ?俺からしたらちょっとうらやましいよ」

「え?」

「俺さ、いや、俺もセイラも両親が居なくてな……」

「え?そうなの?」

「ああ、俺達が小さい頃に魔王軍の襲撃で死んだらしい……それから師匠のオーヴェルに育てられたんだ」

「そう……だったんだ……」

「でも、師匠との日々は楽しかった。修行ばかりじゃなく、結構遊びにも連れて行ってくれたからな」

「へぇ〜オーヴェルさんが本当に父親代わりだったんだね」

「ああ、なのにある日突然居なくなっちまって……」

「……俺にだって父さんとの思い出が無い訳じゃないよ……だけど……遊んで貰った記憶より勉強ばっかりしてた記憶の方が多い……」


オビトと寛太が話をしていると突然街が騒がしくなった。

「何だ!?まさか……魔王軍か?」

「行ってみよう」

「ああ」


そして、セイラも魔王軍の出現を察知。

「魔王軍……仕方ない、またペガちゃんにオビトを探して貰うか……」

しかし、困った。

博士の目の前で魔法を使う訳には行かない。


「あの〜お父さん……私ちょっとコンビニに行って来ますね」

「え?ああ、そうかい行っておいで」


セイラはそう言って部屋を出た。

そして魔法を発動。

ペガちゃんを召喚する。

「ペガちゃんお願い、またオビトを魔王軍の所へ連れて行って」

ペガちゃんはオビトを探して飛び立つ。


「さて……コンビニ行くって言ってきたから何か口実に買って来なきゃ……」

セイラは買い物に行く。


オビトは寛太と一緒に現場に向かっていた。

上空からペガちゃんが追い付く。

「おっ!ペガちゃん!良いところに!」

オビトと寛太はペガちゃんに乗る。

「ちょっと待って……もしかしてこのまま飛ぶの?」

「え?ああ」

ペガちゃんは飛ぶ。

「うわぁぁぁ!?」

寛太は初めてペガちゃんに乗りビックリ。


現場ではドラゴニルと魔獣人ヤド・ガニーが暴れていた。

「あれは……ヤドカリ?」

「みたいだなぁ……降りるぞ」

ペガちゃんは地上に降りる。

「寛太、離れとけ」

「うん……」

「行くぜ!!」

オビトが戦いに赴くその頃……。


ギレースはゴルムドとスダァールを利用してグールを襲撃していた。


続く……。

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