第8話「クロガネの過去」

セイラのピンチに現れたのは見知らぬ白銀の騎士パラディンオブナイト。

「え……?誰?」


パラディンオブナイトは剣を構えガラマイラに向かって来る。


それを離れた場所から見ているマジョーラ。

「何だアイツは!?くっ……ガラマイラ!やっておしまい!!」

ガラマイラがセイラを離し、パラディンオブナイトに襲い掛かる。


パラディンオブナイトはガラマイラの攻撃を華麗にかわす。


「カッコいい……」

セイラは思わず呟く。

そこへ、ペガちゃんと共にオビトがやって来る。

「セイラ!」

「!オビト!」

オビトはペガちゃんから降りてセイラの元へ駆け寄る。

「大丈夫か?」

「う、うん……」

「ところで……誰だあれ?」

「分かんない……でも、オビトも手伝って!」

「お、おう!そうだった!」


「いや、必要ない」

「え?」

「もう終わる」


そう言ってパラディンオブナイトは剣を天高く掲げた。

「聖剣シャイニングソードよ!悪しき者を消し去れ!」

パラディンオブナイトが叫ぶと『シャイニングソード』が輝き出した。


パラディンオブナイトの必殺技『ジャッジメントブレイク』が発動し、ガラマイラを斬り裂く。

「ぐわぁぁぁぁっ!?」

ガラマイラは倒された。


「すげぇ……」

「カッコいい……」

「え?アレが?いやいやいや、ないない……」

オビトが否定する。


「お前ら大丈夫か?」

「はい!あの……貴方は?」

「ん?俺だよ俺!」

パラディンオブナイトが変身を解除すると、その正体はクロガネだった。


「えぇー!?クロガネさん!?何で!?」

オビトはビックリ。

「なーんだクロガネさんか……」

セイラはガッカリ。

「何でちょっとガッカリしてんだ!?」

クロガネはツッコむ。

「でも、クロガネさんが何で?」

「いや〜それはな……俺にもよくわからなくて……話せば長いんだが……」

「じゃ、いいや。俺バイトに戻るから」

「いや、聞けよ……」

「セイラ、またペガちゃん借りるぜ?」

「うん、頑張ってねー」

オビトはペガちゃんに乗りさっさと帰って行く。


「はぁ……やれやれ……じゃあセイラにだけでも話しておくか……」

「クロガネさん、ちょっと行きながらでも良いですか?」

「え?ああ、それは構わないが……」


クロガネはセイラに付いていく。

その間にクロガネに何があったのかをセイラは聞く。

周りの人々は可笑しな格好をしているクロガネをジロジロと見ている。

「クロガネさん……ちょっとその格好目立つかも……」

「え?」

セイラは服屋に入りクロガネを着替えさせた。


店から出てきたクロガネはTシャツにベージュのチノパンとごく普通のファッションに身を包んでいた。

「おいおい、セイラ……この格好では防御力が低くないか?」

「いいの、この世界ならこれが普通だから」


その頃、たこ焼き屋に戻ったオビトは……。

「ただいまー」

「おう、オビト君……どこ行ってたんだ?」

「ああ、またこの前の奴らが……」

「そうか……怪我してねぇか?」

「うん……大丈夫……」

「そうか……じゃあちょっとこっち手伝ってくれ」

「うん?」

そう言って店主はオビトにたこ焼きの山を見せた。

「え?こんなに作ったのか?」

「いや、こっちはダメになったたこ焼きだ……売り物にならねぇ」

「何で?こんなに美味そうなのに……」

「たこ焼きってのはな……外はカリカリ、中はトロトロの食感が大事なんだ。だが、このたこ焼きは焼き過ぎて中も固くなっちまってる……だから売れないんだよ」

「そっか……それは残念だな……」

「残念?……ふざけんじゃねぇ!!」

「え?」

「これはお前が台無しにしたたこ焼きだ!!たこ焼きを放ったらかして戦いに行っちまうような奴はウチには必要ねぇ!!とっとと出ていきやがれ!!」

「え?そ、そんな……」

「そりゃあ、オメェにどんな事情があってあいつらと戦ってんのかなんて知らねぇ……でもな、たこ焼きを放ったらかしてどっか行っちまうってのは変わらねぇ……そんな奴にウチのたこ焼きが作れるか?いや、作れねぇ!!だからお前はもう必要ねぇ……」

「そんな……分かったよ……おっちゃん、悪かった……」

オビトは店主に頭を下げて店を出て行った。


オビトは店を出て街を彷徨っていた。


夕方、オビトを迎えにセイラがたこ焼き屋に来ると……。

「おじさんこんにちは、オビトは?」

「ん?ああ、お嬢ちゃんか……アイツなら出てったよ……はっきり言ってクビだ」

「そんな……じゃあオビトは今何処に?」

「知らねぇよ……ちょっと怒鳴ったら出て行っちまった……もう少し根性のある奴だと思ったんだがな……」


「どうしよう……オビトすっごい方向音痴だし……もし家に帰って無かったら100%迷子になってる……」

「何だ?オビト君、方向音痴なのかい?」

「はい、すっごく……」

「あちゃ〜そりゃ悪い事したな……でも家に帰ってる事もあるんじゃねぇか?」

「だと良いけど……買っても今誰も居ないからな〜」

セイラは家に向う。

「ん?セイラ?どうした?」

クロガネも付いていく。


一応家に帰るが、寛太も勿論帰って無いし、オビトの姿は無かった。


「どうしよう……?」

「さっきのペガサスに探して貰ったらどうだ?」

「ダメ、召喚系の魔法は魔力の消費が激しいから私の魔力じゃ一日一回が限界なの……」

「そうか……」

「あーあ……お師匠様ならこんな事ないのになぁ……」

「オーヴェルさんか……そう言えば私も昔世話になった事があったな」

「え?クロガネさんもお師匠様と会ったことあるんですか?」

「ん?ああ、昔魔王軍との戦いで大きな被害が出たのはロズチェス国王から聞いただろ?」

「あの王国の魔導騎士団に多くの被害者が出たって言う?」

「ああ、実はな、その戦いで私の両親も死んだんだ」

「そうだったんですか!?」

「ああ、私はその後、孤児として毎日生きるのに必死だった……」

そう言ってクロガネは子どもの頃の事を語りだした。


時は魔王軍との激戦の直後……。

クロガネは両親を亡くし戦争孤児となっていた。

毎日を生きる為に形振り構っていられなかった。

食べ物を盗んででも手に入れる時もあった。

いや、盗んで食べた方が多かっただろう。

そんなある日、クロガネは今日も食料を店で盗み、店主の追い掛けられていた。


「待てー!!このクソガキー!!」

「やっべっ……」

クロガネは店主を何とか撒こうと街の角を曲がった所……。

1人の男とぶつかった。

「うわっ!?」

「おっ……どうした?少年」

「うっ……」

「あっ!そのガキ捕まえてくれ!泥棒だ!!」

「え?おいおい、子ども相手に穏やかじゃないね〜」

「だってこのガキ……」

「いくらだ?」

「へ?」

「この子が盗んだ物の代金は私が支払う。だからそれでこの子を許してくれ」

「え?そりゃあ、ウチは金さえ払って貰えればいいけど……」

「それと、少年。お前もこの人に謝るんだ」

「……ご、ごめんなさい……」

「よし、良く出来たな」

そう言って男はクロガネの頭を撫でた。

それが後のオビト達の師匠オーヴェルだった。


それからクロガネはオーヴェルに心身共に鍛えられ王国騎士団へと入隊するまで成長した。


そして現在。

「……って事があってね」

「えぇー!?じゃあ、クロガネさんって私達の兄弟子だったって事!?」

「んー?そう言う事になるのかな?」

「そうだったんだ……」

そんな話をしながらオビトを探す2人。


その頃、オビトは……。

「クソッ……ここは何処だ……?」

「見つけたぞクロスセイバー……」

オビトに声を掛けて来たのはグールだった。


「あっ!お前……何か久しぶり……」

「フンッ……俺はずっと貴様を探していた。お前にどうしても聞きたくてな……」

「何だよ?」

「あの時……何故俺を助けた?」

「あの時?ああ、あれね。お前を何で回復させたかって?だってお前、俺達が来るまでの間、魔王軍と戦ってこの世界を守ってくれただろ?だからだよ」

「バカな……俺は敵である魔王軍を倒していただけだ……それに……俺はお前にとっても敵である!!」

グールはオビトに斬り掛かる。

「おっと!」

オビトは咄嗟に『クロスチェンジ』

グールの攻撃を受け止める。

「フンッ……今日は貴様を倒すぞ」

「上等……行くぜ!!」

クロスセイバーの反撃。


クロスセイバーとグールは戦い始めた。


その頃、寛太は……。


「何故……誰も来ないんだ?」

駅で1人待ちぼうけていた。


続く……。

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