第7話「王国最強の剣士」
オビトとセイラが日本に戻った後、グランスタ王国ではロズチェス国王とクロガネが話していた。
「国王様、何故彼らに行かせたのですか?」
「彼らはオーヴェルの弟子だ。彼らなら長きに渡る魔王軍との戦いに終止符を打ってくれるかも知れぬ……その希望に賭けたんじゃ」
「他の世界で魔法を使う事を許してでもですか?」
「ああ……滅んでいい世界など無い……彼らが世界を救う希望となるならな……」
「はぁ……」
クロガネはため息をつく。
「そろそろ剣術訓練の時間なので失礼します……」
クロガネは去っていく。
オビトとセイラが日本に戻って来た日の夕方、寛太の家に帰って来ると……。
「よし、それじゃあ改めてオビトとセイラちゃんが戻って来たお祝いをしよう!」
「えぇー、そんな大袈裟なぁ」
「今日は凄いご馳走作っちゃうからさ」
「おう!楽しみにしてるぜ寛太!」
オビトが寛太と肩を組み、親指を立てて言う。
「オビトも手伝いなさいよ!」
「え〜……」
「じゃ、皆で作ろうか。じゃあ、オビトとセイラちゃんには買い物頼んじゃおうかな」
「オッケー任せて!」
「しゃーねぇ、んじゃ行って来るか」
オビトとセイラは買い物に出掛ける。
「おっ!そこのお二人さん!」
声を掛けて来たのはたこ焼き屋の店主だった。
「あっ!おっちゃん!」
「こんにちは」
「おう!2人共昨日はありがとうな。お陰で店も俺も無事。街の皆も感謝してたぜ!」
「ああ、いえ……むしろ変な事に巻き込んじゃってごめんなさい」
「なーに、こうしてピンピンしてんだ!気にしてねぇよ。それよりどうだ、ウチでのバイトの事考えてくれたか?」
「ん?バイト?」
……。
すっかり忘れてた……。
「なーんだ考えてねぇのか……まっ、今すぐ答えた出せとは言わねぇけどよ」
「アハハッ……わりぃ……」
オビトも苦笑い……。
その後、無事に買い物を終え家に帰ったオビトとセイラ。
寛太はオビト達が買ってきた食材を使い料理の腕を振るった。
「さっ!出来たよ!食べよ!」
「うわっ!うまそー!」
早速3人は食べ始める。
「寛太って本当に料理美味いよね」
「ああ、全くだ。セイラとは大違い」
「うるさい!」
「そういえば、2人はグランスタ王国に居る頃は食事どうしてたの?」
「まー、その辺にある物適当に……」
「適当?それで良く戦えてたね」
「まぁな……適当な物でもセイラの料理よりマシだったからな」
「オビト、まだ喧嘩売ってる?」
「フフッ……」
寛太は思わず笑う。
「何よ?」
「いや、ごめん。何か2人のそのやり取り見てると安心するなって……」
「何変な事言ってんのよ?」
「安心しろ、もうどこにも行かないから」
「うん、寛太の所に戻ってこれて良かった」
この夜、3人は更に絆が深まった気がした。
その頃、グランスタ王国の王宮では……。
クロガネが王宮の中をパトロールしていると1人の兵士が走って来た。
「クロガネ団長ー!」
「ん?何だ騒々しい……」
兵士は慌てた様子で息を切らして走って来ていた。
「はぁ……はぁ……だ、団長……王宮の中庭に不審な物が……直ぐに来て下さい!」
「何っ!?分かった」
クロガネは急いで中庭に向う。
中庭には既に多くの人が集まっていた。
兵士は勿論、給仕係の女性や大臣、更にロズチェス国王までも……。
「国王様までいらしたのですか……」
「ん?クロガネ団長、ああ、わしも気になってな……」
皆が囲んで居たその不審な物とは……。
クロガネが兵士達を掻き分け覗いて見ると……。
それは銀色の正方形の物体。
「何だコレは?」
「国王様、何か心当たりは?」
「ん〜?」
「無いんですね……しかし……こんなただ四角いだけの物体見たこと無いな……」
クロガネはその物体に触れてみる。
「おい、気を付けろ」
ロズチェス国王が声を掛けたが、クロガネがそれに触れると眩く輝き出した。
「うわぁぁぁぁっ!?」
クロガネはその光に包まれ消えて行った。
「!?クロガネ団長!?」
「何処だ?」
これにはロズチェス国王も周りの人々もビックリ。
クロガネは何処に消えてしまったのか。
「探せ!直ぐにクロガネ団長を探すんだ!」
ロズチェス国王の命令で王国騎士団が総動員でクロガネを探しに行く。
この事態にグランスタ王宮は大慌てだ。ーー
翌日、オビトが起きて来た。
「おはよ〜」
「オビトやっと起きて来た。もう9時よ」
セイラは朝から出掛ける準備をしていた。
「セイラお前出掛けるのか?」
「うん、いつまでも寛太の負担になってられないし、アルバイトでも探そうと思ってね。ちょっと色々探してみる」
「そっか」
「オビトはどうするの?あのたこ焼き屋さんでバイトするの?」
「ん〜……まっ、行ってみるか」
「へぇ〜オビトも行く気になったんだ!じゃあ僕も今日はバイトだから3人共居ないね。今日は夜外でご飯食べようか。18時に駅で待ちあわせでどう?」
「駅!?どこだそれ!?」
「あっ……そっか……オビト……行ったこと無いし絶対迷うよね……」
「大丈夫、私分かるから夕方オビトをたこ焼き屋さんまで迎えに行くよ」
「そっか、じゃあそうしよう。じゃあ俺行くから戸締まり宜しく!」
寛太はバイトに出掛けて行った。
その後、オビトとセイラは一緒に出る。
「じゃ、オビトも頑張ってね」
「おう」
そしてオビトはたこ焼き屋へ。
「そうか!ウチで働いてくれるか!そりゃあ助かるぜ!」
「ああ、宜しく……」
「で、え〜っと……兄ちゃん名前はオビトって言うのか……外国人なのかい?」
「え?まぁ……」
「へぇ!日本語上手いから気づかなかったぜ。まぁ、兄ちゃんなら問題ねぇだろ。即採用だ!」
オビトのバイトもとんとん拍子で決まった。
その頃、セイラは寛太に教えて貰った求人情報誌をコンビニで入手し、仕事を探し始める。
オビトとセイラがこの世界で仕事を始めようとしている中、魔王軍は次の攻撃に出ようとしていた。
「ディアボロス様、今回は私が参りますわ」
マジョーラが出撃を宣言。
「マジョーラ……次はどんな作戦を考えておるのだ?」
ディアボロスが尋ねる。
「はい、今回は私の闇魔術を使って魔獣人を強化しますわ。そこで……現れよ、魔獣人ガラマイラ」
ガラガラヘビの3つ首の魔獣人ガラマイラが姿を現す。
「ガラマイラか……確かにコイツの毒牙は強力だそこにマジョーラの闇魔術が加われば……」
「このガラマイラの力で人間共を苦しめて参ります」
「なるほど……任せたぞマジョーラ」
「はっ!あっ、ディアボロス様〜作戦成功の暁には私を妃にして下さいね〜」
「はぁ……いいから早く行け……」
マジョーラが出撃。
ガラマイラが使い魔を引き連れ東京の街に現れる。
セイラは魔王軍の出現を察知。
「魔王軍!しまった……オビトに知らせないと……」
セイラは人気の無い路地へ隠れ魔法を使う。
セイラの使い魔ペガサスのペガちゃんを召喚した。
ペガサスと言っても手のひらサイズの小さなペガサスだった。
「ペガちゃん、オビトを連れてきて」
ペガちゃんは頷くと空を飛んでオビトの元へ向う。
「よし、オビトが来るまで私が食い止めないと……」
セイラも現場に向う。
ガラマイラは使い魔達が捕えた人間にその毒牙で噛みつき次々に毒に侵して行った。
人々は苦しみながら倒れて行く。
「酷い……早く止めなきゃ」
セイラは魔法の杖を取り出し使い魔達に攻撃を仕掛ける。
セイラは『フレイムインパクト』で使い魔達に攻撃。
この魔法は威力は弱いが魔力の消費は少ないので使い魔を追い払ったり魔獣人相手でも牽制になったりと使い勝手が良かった。
セイラにとって数少ない攻撃魔法の一つだ。
セイラは『フレイムインパクト』を連発。
使い魔達は追い払えたがセイラの前にガラマイラが現れる。
「貴様!良くも邪魔を……」
「邪魔なのはそっちよ!」
セイラは『フレイムインパクト』をガラマイラにも使った。
「ぐっ!?小娘が調子に乗るなー!!」
ガラマイラはセイラに襲い掛かる。
その頃、ペガちゃんはオビトの元へやって来た。
「ん?ペガちゃんじゃねぇか。気を付けろよそこ熱いぞ」
ペガちゃんがたこ焼き機の上に降りない様に声を掛けるオビト。
ペガちゃんはオビトに魔王軍が出現した事を知らせる。
「何っ!?魔王軍が!?おっちゃん!ちょっと行ってくる!」
「ん?どうした?オビト君?」
オビトが店を出ると……。
ペガちゃんは巨大化。
本来のペガサスのサイズになった。
「よーし、頼むぜ!」
オビトがペガちゃんの背中に乗り現場へ向う。
その頃、セイラはガラマイラに捕まり大ピンチに陥っていた。
「くっ……」
「小娘……死ね!!」
「待て!!」
誰かが止めに現れる。
「!オビト!?」
いや、違う。
そこに居たのは白銀の騎士だった。
「ん?見ねぇ顔だな……何者だ?」
「我はグランスタ王国最強の騎士、パラディンオブナイト!」
続く……。
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