王国騎士団

第5話「異世界からの来訪者」

クロスセイバーとグールの激しい戦いは続いていた。

「おりゃあ!!」

「フンッ!そんな物か……」

「テメェ……人をおちょくるのもいい加減にしろ!!」

クロスセイバーは2本の『クロスブレイカー』を巧みに操りグールを攻撃する。

だが、グールはクロスセイバーに2段攻撃を見事にかわす。


「クロスセイバー!大丈夫?」

セイラが近付く。

「セイラ!来るな!」

「でも……」


「フンッ!隙だらけだぞ!」

「何っ!?」

グールはクロスセイバーを蹴り飛ばし距離を取る。

「トドメだ!」

グールは『冥王剣−デスギャリバー』を天に掲げた。

すると、突然暗雲が空を覆い雷鳴が響く。

「何だ?何が起きてんだ?」

「冥王怒りの一撃を受けるがいい」

グールは必殺技『ライトニングレイン』を発動させ複数の雷をクロスセイバーに落とした。

「ぐわぁぁぁぁっ!?」

更に雷の雨は周りの建物や人々にも襲い掛かった。

「どうしよう……このままじゃ他にも被害が……」

セイラは魔術書を取り出し有効な魔法が無いか調べる。

「コレだ!」

セイラは魔法を発動。

『ホーリーバリア』

魔法の聖なるバリアが辺りを包み『ライトニングレイン』を防いだ。


「何っ!?」

「セイラ、ナイス!行くぜ!!」

「待て」

「あん?」

「邪魔が入っては興冷めだ……今日はここまでだ……」

そう言ってグールは立ち去る。

「おっ、おい!逃げんのかよ!!」


その後、街への被害も収まった為、セイラは街の人々に感謝された。


その夜……。

セイラとオビトは食材をどっさり持って帰った。

「え?何この量?どうしたの?」

驚いた様子で寛太が尋ねた。

「まぁー、話せば長くなるんだけど、街の人達がお礼にってくれたのよ」

「へ?何があったの?」

「まぁ……魔法をちょっとね」

「ふ〜ん……まぁ、感謝されたなら良かったじゃない」


「いや、良くないな」

何処からか声がした。


「ん?誰だ?」


すると寛太の部屋に突然空間の穴が空いた。

「うわぁぁぁっ!?」

驚く寛太。

そして、その穴の中から現れたのは……。

数人の騎士達だった。


「王国騎士団!?何でここに!?」

「誰?」

「失礼、私はグランスタ王国騎士団長のクロガネと言う者だ」

「グ、グランスタ王国?」

「俺達が居た世界の国だ。俺もセイラもそこの出身でな。そっか、寛太には言って無かったな」

「へぇ〜じゃあ、オビト達の世界の人達って事か?」

「そうだ」

「しかし、どうやって王国騎士団がこの世界へ?」

「うむ、それはな……」

クロガネはこの世界に来た経緯を語りだした。


本来、オビトやセイラ等、異世界の住人でも別の世界への行き来が自由に出来る訳ではない。

オビトとセイラがディアボロス達を追ってこの世界に来たのもディアボロス達の力による物だった。

オビトとセイラがこの世界にディアボロス達を追って行った後、誰も居なくなった魔王城の調査に訪れた王国騎士団は調査の途中、『ディメンションクリスタル』を発見していた。

それはディアボロスが別の世界への侵攻の為に集めておいた物だ。

この世界に来るにも『ディメンションクリスタル』の力が必要だったからだ。


その『ディメンションクリスタル』を王国騎士団が持ち帰り研究を重ねた結果、次元を移動出来る技術を手に入れこの世界にやって来たのだった。


「ふ〜ん……まぁ、経緯は分かったけど……それで、俺達に何の用だ?」

「それはな……オビト、セイラ、お前達に逮捕状が出てるからお前達を連行しに来た!」

「ふ〜ん……えぇー!?」

「な、何で私達が!?」

「そうだよ!いきなり来て意味分かんないよ!」

これには寛太も反論した。

「部外者である君は黙っていて貰おう」

「部外者って……」

「オビト、及びセイラ、お前達はこの魔法の存在しない世界で勝手に魔法を使った。それは立派な違法行為だ。よってお前達をグランスタ王国へ連行する」

「そんな……俺達が魔法使ってこの世界を守ってたんだぞ?大体俺達が居なくなったら誰がこの世界で魔王軍と戦うんだよ!」

オビトは強く反論した。


「それはこの世界の問題だ。この世界の住人が対処すればいい」

「そんな……ちょっと待って下さい!この世界の人達は魔王軍と戦う事なんて出来ませんよ!」

「そうだよ!警察だって全く敵わなかったんだから……オビト達が居てくれなかったら俺だって今頃……」


「それは全く次元の違う我らの世界には何の関係もない!」

「そんな……あんまりだ!!」

「オビトとセイラを連れて行け!それに、君は記憶を消させて貰おう」

「何だって!?」

王国騎士団はオビトとセイラを捕える。


「おい!離せよ!チクショー!」

「ちょっと離して!痛いってば!」

「構うな!連れて行け!」

そのままオビトとセイラは強引に連行されて行く。


「オビト!セイラちゃん!」

「さて、君には二人に関する記憶を全て消させて貰う……」


クロガネは寛太に迫る。

「や、やめろよ!!」

寛太は必死に抵抗する。

「君の記憶を消すのはこの世界の為でもあるんだ」

「じゃあ……魔王軍はどうなるんだよ?俺達の力じゃあんな奴ら倒せないし……この世界は見殺しか?」

「残念だが、そうなるな……」

「ふざけんなよ!!自分達の世界が平和ならそれで良いってのか!!」

「それでも、お互いの世界は干渉しあわない方が良いんだ」

だが、その時!

1人の騎士団員が慌てた様子でやって来た。

「団長!大変です!!」

「どうした?」

「魔王軍がこちらに向かって進撃中です。恐らく奴らに我々の存在が気付かれたかと」

「チッ……仕方ない。早急に撤退するぞ」

「はっ!」

騎士団員は敬礼をし仲間達の元へ走って行った。

「君の記憶を消すのはまた今度にしよう」

「……自分達だけ逃げるのかよ?」

「違うな……これは戦略的撤退だ」

そう言い残しクロガネは去って行った。


王国騎士団は再び次元の穴を開け自分達の世界へ帰って行った。


「ん?王国騎士団め……逃げやがったか……」

ドラゴニルも王国騎士団が撤退した事に気付いた。

「しゃーねぇ、戻るぞ」

ドラゴニルは魔王軍を撤退させる。


グランスタ王国に連行されたオビトとセイラはそのまま王宮の牢獄に閉じ込められる。

「ほら入れ!」

「チクショー、なんだよ!」


「お前達は明日、王宮裁判に掛けられる。国王様直々に判決を下して下さるんだ。それまでそこで大人しくしてろ!」

そう言って騎士団員は牢獄に鍵を閉め去って行った。


「おい!待て!ここからだせぇ!!」

オビトは叫んだ。

何度も何度も叫んだ。

だが、誰も現れずオビトの声だけが虚しく地下の牢獄に響くだけだった。


「オビト、無駄よ……余計に体力を消耗するだけだわ……」

「セイラ!んな弱気な事言ってどうすんだよ!!なんとしてもここから出なきゃ意味ねぇだろ!!」

「そんな事言ったってしょうがないでしょ!魔法も使えない、剣も使えない……こんな状況でどうしろって言うのよ!!」

「うっ……それは……」


その頃、魔王軍は改めて日本を侵略する為の準備を進めていた。


「ディアボロス様、侵略部隊の編成が完了しました。今回の作戦には我が竜族最強の戦士リザードが相応しいかと……」

「ほぉ、ご苦労だったドラゴニル……リザードか……確かに邪魔者が居なくなったこの世界を一気に攻め落とすには良いかも知れぬ……作戦決行は明日、日の出と共に開始する!」

ディアボロスのこの宣言に一層盛り上がりを見せる魔王軍。

「我が魔王、ディアボロス様に栄光あれー!!」

ドラゴニルも更に盛り上げる。


「チッ、ドラゴニルめ……手柄を独り占めする気だな……」

マジョーラはただ1人面白く無い様子……。


寛太は何も出来ないままただ家で待っているしか無かった。


そして、日本にとって最悪の日の夜明けが来た。


「よし、魔王軍進撃だー!!」

「おおー!!」


遂に魔王軍が日本に侵略を開始した。


続く……。

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