第41話 謁見準備
予定をざっと確認すると、謁見は明日の午前中に行われるらしい。俺たちは朝の六時には起きて準備を進め、十時ごろから謁見だそうだ。
「見ていただけば分かると思いますが、明日は朝早くから動いていただきます。そのため今夜は王宮に部屋を準備してありますので、そちらにお泊りください。謁見の所要時間は陛下次第ですが、基本的には十分から二十分程度です」
王宮に泊まるなんて寝られる気がしないな……神域に逃げたいけど、レベッカを置いて俺だけ神域に行くのも申し訳ない。さすがにレベッカに割り当てられた部屋に入るのは避けたいし。
「あの、謁見の後に書かれている打ち合わせとは何のことでしょうか?」
レベッカが不思議そうに首を傾げて聞いた言葉に、男性はなんて事はないように口を開いた。
「そちらは指名依頼に関する打ち合わせ予定を入れてあります。実はお二人にはさっそく王家からの指名依頼がありまして、そちらを受けていただければ謁見の後に打ち合わせをすることになっております」
指名依頼……もうそんなの来るのか、しかも王家から。受けていただければって、王家からの指名依頼なんて断れないよな。
「どういう内容の依頼なのか聞いてもいいでしょうか?」
「もちろんです。数週間後に帝国へと輿入れする予定となっております、王女殿下の護衛依頼でございます。お二人の活躍を聞かれた殿下直々の頼みで依頼をすることになりました。ぜひ受けていただけたらと思います」
「王女様の護衛ですか……俺たちは護衛なんてやった事ないんですけど、いいのでしょうか」
「構いません。基本的な護衛は近衛がやりますので、お二人は魔物退治が中心となるかと思います。帝国に入ってからもあちらの騎士が中心となって護衛をしますので、心配はいりません」
それなら……なんとかなるかな。ただ帝国に入った後が心配だけど。帝国っていい噂を全然聞かないんだよな。完全な実力主義で弱いものは淘汰されて当たり前、みたいな国だって聞いたことがある。
そんな考えだから他の国では基本的に禁止となっている奴隷制も残ってて、無能ってだけで奴隷にされるんだったはずだ。
セレミース様の眷属になる前に、帝国に生まれなくて良かったって何度も思ったからよく覚えている。
「……なぜ王女殿下は帝国に行かれるのでしょうか」
そんな国に行くなんて明るい未来が見えないなと思って思わず口をついて出た疑問に、男性は僅かに顔を歪めて重そうに口を開いた。
「……陛下が決められたことでございます。帝国との協力関係が強固なものとなるでしょう」
――要するに、陛下の独断で辛いところに輿入れさせられるってことか。
王女様も大変なんだな。せめて相手がいい人だったらいいけど。
「では、時間があまりありませんのでさっそく謁見中の作法について説明させていただきます。こちらの紙をご覧ください」
それからは話を切り替えた男性によって礼儀作法をみっちり説明され、それが終わると王宮にある礼服の中から俺たちに合うのを見繕われ、全ての準備が終わったのは完全に夜の帳が下りた頃だった。
「明日に備えてお早めにお休みになってください。何か御用がございましたら、そちらのベルを鳴らしていただければと思います」
準備が終わって夕食も食べたところで、従者という客人の身の回りの世話をする人に部屋へと案内された俺は、疲れからすぐベッドに横になった。
「はぁ……体は疲れてないのに精神的な疲れが」
謁見の作法は意外と覚えることが多くて大変だった。
まずは謁見室の前で跪いて頭を下げて、扉が完全に開いたら宰相様に合図をしてもらえるから立ち上がって、そこからはまっすぐ前にしばらく歩く。
歩く時は陛下を直視しないで足元をぼんやりと見て、手は振りすぎずに歩幅は小さく。そして印があるとこまで歩いたらまた跪いて、陛下に声を掛けられたら顔を上げて、その時も直視はしないで口元を見ることを心がける。
陛下のお言葉には基本的に返答せず、意見を求められた時のみ簡潔に口を開く。俺らの紹介は宰相様がやってくれるから自己紹介はいらない。跪いた格好はずっと崩さずキープする。
謁見が終わったら陛下が先に退出するから、それを待って合図されたら立ち上がってもいい。そして謁見室から出る時は陛下もいないので普通に歩けばいい。
「上手くできる気がしない……もう一回確認するか」
それからも俺は注意点を何度も反芻し、頭の中で謁見のシミュレーションをして、心配になってもう一度最初から確認して……というのを何度も繰り返し、いつの間にか眠りに落ちていた。
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