第40話 王宮へ
外に出るとギルド前には馬車が止まっていて、それに乗って王宮へ行くようだ。迎えに来てくれた男性が御者をしてくれるらしく、馬車の中には俺とレベッカだけになった。
「陛下ってどんな人だと思う?」
「どうなんだろうな……凄くカッコいいとか、紅茶が好きだとかって噂は聞いたことあるけど、怖くない人だといいな」
「そうだね。礼儀作法とか大丈夫かな。リュカは謁見の作法とか分かる?」
「いや、本は読んだことあるけど……」
俺には関係ないと思ってサラッと流しちゃったんだよな。もっと読み込んでおけば良かったと今更の後悔だ。
「私は本すら読んだことないよ。大丈夫かな」
「とりあえず、動き方は教えてもらえるんじゃないかな。教えてもらえなかったら……今日中に聞こうか」
「そうだね。謁見が明日なら時間はあるよね」
それからもレベッカと緊張を共有しつつ馬車に揺られていると、しばらくして馬車がだんだんと速度を落として王宮の前に止まった。
窓から少しだけ顔を出して外の様子を見てみると、王宮の敷地内に入る大きな門の前に止まってるみたいだ。
「リュカ、凄く緊張してきたかも。こんなに王宮の近くになんて始めて来たよ」
「俺も王宮なんて遠くから見るだけだったからな……近くから見るとこんなにデカいんだな」
「本当だね……」
何百人、何千人が住めるんだろうっていうほどに大きな建物だ。これだけ大きな建物が何に使われてるのか、俺には想像もつかない。
「王宮の中に入ります。もう少しで止まりますので、降りる準備をお願いいたします」
「は、はい」
御者の男性から声をかけられて、俺とレベッカの緊張度はさらに上がった。
『セレミース様、この国の陛下ってどんな人なんでしょうか。不敬だって罰せられたりしませんか?』
不安すぎて思わずセレミース様に声を掛けると、セレミース様からは笑い声が返って来た。
『ふふっ、ふふふっ』
『どうされましたか?』
『あまり心配する必要はないわ。この国の国王はそうね、一言で言えば子供よ』
子供って、どういうことだろう。陛下って確か四十代だよな? その歳で子供っぽいってこと?
『基本的に能力は低いわ。人の意見を素直に聞けるところを褒められる程度ね。まさに子供でしょう? しかしたまに突調子もない無謀な決定をするから、周りは振り回されっぱなしね』
『……なんだか陛下へのイメージが崩れました』
もっと国王様って素晴らしい人格者で執務に邁進していて、国民のことを考えてくれて、カッコよくて強くて……ってイメージだったんだけどな。
『国王なんてそんなものよ。もっと酷い国王も多いから、この国はマシな方ね。とりあえず国王を貶すようなことを言わなければ大丈夫。単純だから褒めれば喜ぶわ』
『そうなんですね……』
陛下を貶すことなんて絶対に言わないから大丈夫だけど、褒めるのは……恐れ多くてできないだろうな。
「リュカ、どうしたの?」
俺が微妙な表情をしていたからか、レベッカが顔を覗き込んできた。
「えっと……ちょっとこっちに来てくれる?」
さすがに陛下の悪い評価を大きな声で言えないと思い、御者がいる方の席に座っていたレベッカに俺の隣に来てもらった。そして耳に口を近づけて、小さな声で告げる。
「セレミース様が、陛下はあんまり有能じゃないって。子供っぽくて単純だから、貶すようなことを言わないで褒めておけば問題ないって」
かなり小さな声で告げた言葉だったけどレベッカの耳にはしっかりと届いたようで、レベッカはとても微妙な表情を浮かべた。
「……あんまり聞きたくなかったかも」
「分かる。イメージというか、憧れが崩れるよな」
「私の中にいたイケおじ陛下がガラガラと崩れてるよ」
レベッカはそう言って遠くを見つめてから、ふっと表情を緩めた。
「でも、緊張は和らいだかな」
「確かにそうだな。もう全然手も震えてないかも」
「私も心臓の音が正常に戻ったみたい」
それから二人でなんだか気が抜けて笑い合っていたら、いつの間にか馬車が止まっていてドアが叩かれた。
「到着いたしましたので、ドアを開けてもよろしいでしょうか?」
「もちろんです」
開かれたドアから外に出ると……王宮の裏口のような場所に馬車は止まっているみたいだ。
「こちらから中にお入りください。この後は謁見について説明させていただき、明日の身支度についてそれぞれ決めていただきます」
「分かりました」
男性に付いて王宮内を進むと、目に入るもの全てが豪華で少し歩くだけで疲れてくるほどだ。たまにすれ違う人たちには冒険者姿の俺たちが珍しいのか、ジロジロと視線を向けられる。
俺がこんなところにいるなんて、人生って何が起きるか分からないよな。一ヶ月前はダンジョンで重い荷物に潰されそうになってたのに。
「こちらの応接室で説明させていただきます」
部屋の中に入ると……そこには動くのが躊躇うほどに豪華な内装が広がっていた。なんか、キラキラしてる。
「お、王宮って凄いですね……」
「お客様にご満足していただけるようなおもてなしを心がけております」
緊張しながら豪華な装飾が付けられたソファーに腰掛けると、向かいに腰掛けた男性に一枚の紙を手渡された。これからの予定が書かれてるみたいだ。
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