第30話
縁側には西日が差していた。
見覚えのないリクライニングチェアの上で、
足音が聞こえ、エプロンを着けた
「しーちゃん」
優しい声で、
「お姉ちゃん」
そう言って顔を向けると、美波はぽかんと口を開けた。みるみる両目が赤くなり、涙が盛り上がる。
「お母さん、しーちゃんが喋った!」
美波はそう叫ぶと、志乃に抱き着いて泣きじゃくった。
半年が過ぎていた。
両親と姉の話によると、志乃は強風に
「お医者様には記憶障害だって言われたの」
志乃は半年もの間、口をきかず、ぼんやりしたまま過ごしたそうだ。
「どれだけ心配したか。あんた何でビルの屋上なんかに居たの」
そう言って母に泣かれた。
助けてくれた人は探しても見つからなかった。ビルのオーナーが責任を感じて治療費をすべて負担してくれたのだと聞いた。
「一緒に落ちた人は?」
リーシャンがどうなったか心配で尋ねても、二人とも訳が分からないという顔をするだけだった。
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