第18話
「なあ、この人、しーちゃんに似てない?」
義兄の言葉に、美波と志乃はテレビに顔を向けた。画面には四十代ぐらいの品の良い女性が映っている。
「しーちゃんを五倍ぐらい上品にした感じね」
美波がそう言って笑う。似ているかどうかは別にして、その女性は人を引き付ける美しさを持っていた。画面が替わり、やはり上品な中年男性の顔が映し出された。ふと、その顔が浩宇と重なり、志乃は
「中国の実業家みたいね。
名前を聞いて、志乃は画面を凝視した。今度は浩宇より少し年上に見える若い男性が映っていた。長男
「今日は来ていませんが、次男が日本に住んでいます」
少々片言交じりで、中年男性が言った。柔らかい口調だ。
VTRに替わり、琳 博文の経歴が説明された。若い頃の苦労を経た成功。美しい妻を得、長男と次男をもうけて
『四十歳を越えて思いがけず授かった念願の女の子は、生まれつき身体が弱く……』
画面に、五、六歳ぐらいだろうか、息を
「可愛い」
姉と義兄が同時に溜息を洩らした。けれど志乃だけは、血の気が引いていくのを感じていた。美少女の胸元に飾られていたブローチは、青い石に彫られたカメオだ。映像に重なったテロップの文字は「
姉夫婦が何か喋っていたが、志乃の耳には入らなかった。リーシャンは女の子で、 そして、十年も前に死んでいた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます