第13話
「リーシャン、これは何?」
志乃の問いにリーシャンが振り向く。部屋の中央にあるカバーを掛けられた何か。志乃は初めてここに来た時から気になっていた。
「これも楽器?」
この部屋にはテレビもパソコンも携帯もない。だから単純に楽器だと思ってしまったのだが、オーディオ機器かもしれない。
「これは……」
リーシャンは少し
「これは、テルミン」
リーシャンが言った。テルミン、聞いたことがある。空中で手を動かすだけで音楽を奏でることが出来る機械だ。SFに出てくるような電子音が鳴っているのをテレビで見たことがある。
「
この部屋に来るようになってから一か月になるが、見たのは初めてだ。ずっとカバーを掛けられたまま此処にある。
「ううん、そうじゃないけど」
リーシャンは言葉を
「弾かないの?」
聴いてみたかった。リーシャンが奏でる、宇宙の音。
「うん。また今度ね」
ポツリとそう言って、リーシャンは志乃の顔を見た。どこか視線が定まらない、不思議な眼差し。
「聴きたい?」
そう言って、少々困ったように首を傾げる。志乃が頷くと、リーシャンは暫く考えた後、奥にあるクローゼットを開けた。
「これでもいいかな?」
手に持っていたのはマトリョーシカ。大きさの違う人形が入れ子になったロシアの民芸品だ。リーシャンは志乃の側に戻って来ると、人形をひっくり返し、底にあるスイッチを入れた。
テーブルに置いて手を翳すと、奇妙な音が鳴った。テレビで見たテルミンの音に似た、不思議な電子音。
「マトリョミンだよ」
リーシャンが両手を人形の側に
リーシャンは志乃が知っている曲を弾いてくれたが、それは全く異なる
「ユキノも弾いてみて」
手を取ってマトリョミンに翳す。けれど、どれだけ頑張ってみても
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