第7話
駐車場の外からマンションを見上げ、志乃は大きく息をついた。何が起きたのだろう。『帰らないで』リーシャンの悲しそうな声が耳に残る。不思議だった。自分に向けられた好意。真っ直ぐな感情。信じられない思いだった。ほんの二か月前、志乃は要らないと言われたばかりだったから。
講義で知り合った水野直樹と付き合い始めたのは去年の夏だった。ドライブに行こうと誘われたのが最初のデートで、
将来を夢見始めた頃、
『しーちゃんは強いから一人でも大丈夫だろう。でも彼女は違うんだ』
か弱くて、俺が守ってやらなきゃ駄目なんだ。どこかで聞いたようなセリフだった。新しい彼女、
私は強くなんかない。どうして決めつけるの? 言葉には出来なかった。ただ黙って身を引いた。怒ればよかったのだろうか。泣いて縋ればよかったのだろうか。きっと無駄だろう。どんな理由であれ、詰まるところ志乃は捨てられたのだ。
夕暮れが近付いていた。志乃は停めてあった自転車にまたがり、勢いよくペダルを
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