第8話 妹が兄を殺す理由

「ルシファー、これがお主が召喚したという勇者かの」


突然、声が聞こえた。

俺は振り返る。

そこには一人の老人が立っていた。

白髪で長い髭を蓄えている。


「はい。そうです。大司教」


ルシファーは答える。


「ふむ。確かに、凄まじい力を感じるのう」


大司教と呼ばれた男は俺を見て感心している様子だ。


「貴方は?」


俺は尋ねる。


「わしはこのブラガラッハ教の最高司祭ガリウスじゃ」


ブラガラッハ教とは、この世界を『ゼノンワールド』での宗教の一つ。

『光の女神・ブラガラッハ』を信奉するのが、神聖王国ルミナス。

聖都パテキアはルミナスを囲むように存在する。

フラガラッハは創造神デウスの娘だ。

ちなみにデウスは信仰の対象ではない。

その娘が信仰の対象となり、デウスは平等の立場をとる。


光と闇に対してデウスは平等の立場をとる。


そして、『闇の女神ミストルティア』を信奉するのが、暗黒帝国バルバド。


魔王が崇拝する神こそが『闇の女神ミストルティア』だ。


つまり、デウスは『光の女神・ブラガラッハ』と『闇の女神ミストルティア』というふたりの娘のの上に立ち、中立を保っている。


『ゼノングランドクロッセオ・背徳の少女たち』と全く同じ設定だ。


「お主が、ルシファーの勇者召喚によって召喚された勇者か?」


ガリウスは俺に尋ねた。


「そうだ」


俺は答えた。


「名は?」


「ヨウ」


「ヨウ。七人の刺客の話は聞いたか?」


ガリウスが訪ねる。


「大司教、すでにその話はしています」


ルシファーが代わりに応える。


「そいつらが、ルシファーの持ってる『憎悪』を狙って来るんだろ? 俺はそれを奪われない様に守ればいいんだってな」


「うむ。察しが良いな」


ガリウスは微笑む。


「ああ、だけどなぁ……」


俺は頭を掻く。


「どうした?」


「俺、戦うの苦手なんだよね」


俺は正直に言った。


「なんじゃと!?」


ガリウスは大きく目を見開く。


「正確に言うと、なんでルシファーが兄であるルシフェルを倒したいのか? そこの疑問があってね。魔王が悪い奴だからって理由で兄妹ケンカ。しかも殺すとまでね。俺は理由がはっきりしない戦いは苦手なんだ」


俺は妹の理沙ちゃんが大好きだ。

もし、理沙ちゃんが俺を殺すなんて言ったら、俺は気が狂って自殺する。

それくらい俺は妹が大切だし嫌われたくない。

初恋の人は他にいるけど、それとは別に妹とはもっと仲良くなりたい。

そんな俺だから、妹ルシファーが、兄ルシフェルを殺す理由を知って納得したい。


「てか、ルシファー、お前、それを俺に教えるために大聖堂につれて来たんだろ?」

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