第2話 1/10の魔王

俺はその時、違和感を感じた。


ルシファーとのさっきの会話を思い出す。


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「もしかして、あなたが魔王ですか?」

「はい」

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「ルシファーさん、あなたさっき自分のこと魔王って言いましたよね?」

「はい」

「ということは、魔王は二人いるということですか?」

「いいえ、私が魔王です」

「…………」

「どうかしましたか?」

「あの~、俺、何か勘違いをしているんじゃないでしょうか?」


『ゼノングランドクロッセオ・背徳の少女たち』のラスボスは確かに魔王だ。

だが、こんな天使が魔王なのは設定がおかしくないか。


「いえ、間違いありません。あなたこそが真の魔王です」


はぁ?


「だってあんた、天使ですよ?」

「はい」

「天使が魔王というのはおかしいでしょう?」

「いいえ、おかしくなんてありません」


どういうことだ?


拡張パックver1.5でのラスボスは魔王。

それを倒した。

俺は確かに倒した。

魔王は禍々しい牛の様な角を生やした巨大なモンスターだった。


つまりデーモンだ。


「私の父であるデーモンは死にました」


ルシファーは無表情で言う。


「とある冒険者に殺されました」


……おいおい、ちょっと待ってくれよ。

ってことは、拡張パックver1.5以後の世界なのか?

ここは?


「父は死ぬ前に、私と私の双子の兄に『憎悪』を託しました」


ゲームでも魔王の原動力は『憎悪』であり、強力な攻撃や魔法の拠り所だった。

倒すのに苦労したことを思い出す。


「じゃ、ルシファーさんには魔王の力『憎悪』が継承されたと?」


ルシファーは首を横に振る。


「いいえ、残念ながら私は『憎悪』を十分に受け取ることができませんでした」


じゃあ誰が受け継いだんだ? まさか……


「双子の兄にその多くが受け継がれました。その比率は1対9です。」


マジかよ……。


つまり、ルシファーは魔王の要素を1/10受け継いだ紛れも無い魔王。


そして、その兄の方は……。


「あなたの考えている通りです」


俺の心を読むかのように言う。


「双子の兄の名前はサタンといいます。彼もまた父の後を継ぎ、新たなる魔王となりました」

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