第3話 街へたどり着くまでの戦い

「ここは恐らくガオン草原の辺りだから、パテキアの街が近いはず」


ムネタカはドラゴンが現れたことと、周りが尖った岩山に囲まれていることから、ここがどこなのかあたりを付けた。

恐らく、『ゼノングランドクロッセオ・背徳の少女たち』の舞台となる大陸『ウボガルド』の北東だ。


「ちょっと寒いな」


ゲームでは感じることは無かった気温。

いかに自分が快適な環境で、自らを汚さず辛い思いをせずモンスターを狩り冒険をしていたのかが思い知らされる。


「ここから3kmはあるか?」


目線の先には町の建物が黒く小さく見えた。

コントローラーでアバターを操作し、ゲーム内のフィールドを進むだけで街に着く。

それは数秒のことなのだが、実際の疲労を持て余した身体で歩くとなると、3kmでもしんどい。


「街に行けば何か分かるはず」


ムネタカは歩みを進めた。


「やっと着いた……」


30分程かかってしまった。

道中、何度かモンスターと遭遇したが、光の剣の力で何とか切り抜けられた。

ムネタカのレベル99は伊達ではない。


「さすが俺……」


自分で自分を褒め称える。


「まずは宿屋だ」


RPGのセオリー通り、まずは寝床の確保だ。

そして、仲間を探す。


「すいません」


街の門番に話しかけるムネタカ。


「なんだい?旅人さん」

「宿を探しているんですが」

「まず通行許可書を見せてくれないか?」

「ああ……」


アイテムボックスを探る。

ここに辿り着くまでの間、ムネタカは色々試してみた。

虚空を凝視するとステータス画面が表示されること。

アイテムボックスはステータス画面から選択できる。

すると、アイテムボックスの中身が表示される。

そこから選択する形となる。

例えば回復薬をタップするとそれを使うことが可能だ。


ありがたいことに、アイテムボックスの中身は全部ゲーム内のものを引き継げていた。

アイテムボックスのサイズまで一緒だった。

もちろん、軍資金つまりゴルドも全額引き継いでいる。


ムネタカは通行許可書を選択。

アイテムボックスから手の平に通行許可書が移動する。


「これでいいですかね?」

「どれどれ」


通行許可書をチェックされる。


「よし問題無いね。ようこそパテキアへ」

「ありがとうございます」


恐らくこの門番はゲームではNPCだろう。

ゲーム内のモブキャラの顔と同じだったからだ。


早速、街に入る。


「おお~」


中世風の街並みが広がる。

まるで映画のセットみたいだ。

ムネタカは感動していた。


「これは凄いなあ」


そして、これは確かに『ゼノングランドクロッセオ・背徳の少女たち』を再現出来ている。

ゲームの方がこの世界を参考にして作られたのか思ってしまう。


「まずは宿屋だな」


キョロキョロしながら歩くムネタカ。


「確かこの辺りに……」


ムネタカはパテキアの街の地図が頭の中に入っている。

贔屓の宿屋は確か中央噴水広場の近くだ。


「お!」


中央噴水広場には人だかりが出来ていた。

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