第29話*シリウスと
「……さ、みさ」
ん? 優しい誰かの声がする。けど、まだ寝ていたいな……
そう思いながら目を開けると、目の前にシリウスが居た。
え?
私が驚いて声も出せずにいると、シリウスはニコッと優しく微笑み、私の頭を撫でた。
「シ、シリウスっ!? え? え?」
「ふふ。驚いた?」
シリウスは悪戯っぽく笑う。
「うん、びっくりした。目を開けたらシリウスが横に、ベッドの中にいるんだもの」
ってことは、私、いつの間にか寝れてたんだ。窓から外を見ると明るくなっている。
「うん、昨日の夜、母にみさが精霊の娘だったっていう話を聞いて、いてもたってもいられなくって、来ちゃったんだ」
「そか、話聞いたんだね。ん? でも、何でベッドの中に? 起こしてくれたら良かったのに」
そう言うと、シリウスは照れたように
「い、いや、もう深夜だったしな。って、みさの寝顔が可愛くてついベッドに潜り込んじゃった……なんて、ごめんな驚かせて」
シリウス、慌ててる。まぁ、でも心配かけたよね。精霊の娘だし、このまま人間で居ると寿命があと15年位だって聞いたんだと思うし。シリウスはどう思ってるのかな?
「ううん、本当は心配してくれてたんだよね? ありがとう」
やっぱり、シリウスの側にいたいな。お母様と一緒にいたい気持ちもあるけど、私が精霊になっちゃうと、地球の家族にももう会えなくなっちゃうし、そんなのは嫌だな。
「みさ、何を考えてるの?」
考え込んで下を向いてしまっている私に、シリウスは心配そう。
「何でもないよ。大丈夫!」
笑顔を作って笑って見せる。でも、シリウスにはお見通しみたい。
「無理するな。抱え込むなよ? 俺がいつだって側にいる。離れててもこうやって直ぐに来るから」
そう言いながら、私を強く抱き締める。自然と涙が溢れる。気持ちが溢れて言葉が止まらなくなる。
「シリウス、私、もうどうしたら良いか分かんないの! お母様にせっかく会えて嬉しい気持ちは勿論あるけど、精霊だし、私まで精霊でっ、人間かどっちかなんてそんなのっ」
けど、そこまで言って何も言えなくなっていた。ただただ、シリウスの腕の中で泣きじゃくる。どうしたら良いか、どうすべきかなんて答えなんて直ぐ出ない。
「みさ、辛いよな? 俺は正直、みさには人間になってほしいし、その為だったらなんだってする。でも、本当の親にやっと会えて、そこで選べなんて酷だよな」
「うん、選べないよ。どうしたら良いか今すぐには答えも出せない。それにまだ学校も卒業してないから、もう少ししたら帰らないとみんな心配するし……とりあえずは帰って考えてみるね」
「そうだな、ゆっくり、考えてな? どんな選択をしても、俺はずっとみさの事想ってるよ」
シリウスはずっと抱き締めて撫でてくれてる。
「シリウス、ありがとう」
「俺は何があってもみさの味方だからな。それだけは覚えておいて? と、明日帰るんだろう? 今日は二人きりで過ごそうな?」
優しくそう言うと、シリウスは私にキスをする。甘い甘いキスだった――
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