第28話*人間になるには……?
お義母様と私はお城の前にあるベンチに腰を下ろす。お義母様はゆっくりと話出した。
「人間になるにはまず、ユグドラシルの葉を手に入れること」
「ユグドラシルの葉とは何ですか?」
ゲームとかで世界樹の葉とかは聞いたことあるけど……そんな感じの葉なのかな。
「この世界の中心ともいわれている木よ。その葉が必要なの。そこには、大精霊ユグドラシル様が居るわ。けれど、そのユグドラシルに辿り着くまでも大変なの」
「辿り着くのも大変なのですか? この近くには無いのですか?」
もしかして、この国にも無いって事なのかな?
「ユグドラシルの木はこの国の外、この世界の、この星の中心にあるの。言ってはいなかったけど、この国は精霊たちの結界に護られているわ。この国の外には魔物も居る。けれど、結界の中にに入ろうとする魔物はこの国の騎士達が護ってくれているの。だから私達は平和に暮らせてる」
「ということは、ユグドラシルの木へ行くにはその魔物達に遭遇するって事ですよね?」
この平和そうな国の外には魔物がいるのね。どうやって外に出たら良いのだろう、そもそも魔物と戦えるのかな。
「そう、だからあなた一人では行けないわ。行くとしたら、シリウスの協力も絶対。それにかなりの準備も必要になるの。ある程度ミサも戦える力も付けないといけないわね」
「戦える様に修行、シリウスと一緒に国の外に行って、魔物と戦いながらユグドラシルの葉を手に入れる。手に入れたら人間になれるってことなんですか?」
「それがまだあるの。ユグドラシルの葉を手に入れて、その葉を持って、ミサの場合は水の精霊だから、水の精霊であるミサのお父様、大精霊ヘレウス様に許可をもらいにいかなければならないわ」
お父様、まだ会ったことないけれど。優しい人だと良いな。大精霊っていう位だから凄い人なのかな。
「お父様の許可、ですか?」
「そうよ。許可を取り、ヘレウス様の居る泉の奥底から湧き出ている聖水を、ヘレウス様から受け取った瓶に汲み取り、地上に出て、その後、聖水を一気に飲み干す……これで確か人間になれたと思うわ。ユグドラシルの葉は泉に入る時に必要よ」
「わ、分かりました」
何だか大変そう……。私に出来るのかな。どうしよう……
「ミサ、人間になるには大変だし、精霊のままでテティ様と一緒にずっと居るというのも、今のミサには難しい問題かもね。けれど貴女の望むように、後悔の無いようにしなさいね」
「は、い……」
そう返事するのが精一杯だった。
シリウスは、この話を知ったら何て言うかな? 私が精霊の娘だなんて驚くよね。シリウスと一緒に居たいけど、せっかく会えたお母様と一緒に居たい気持ちもある。どうしたら良いの? 私には時間も限られているみたいだし、もう、どうしたら良いか分からない。
私は頭を抱えこんでしまった。
そんな私をお義母様は優しく支えてくれる。
「ミサ、疲れたわよね。今はゆっくり休みましょう。朝にはシリウスも来るわ。二人でまたゆっくり話なさい」
私はお義母様に支えられながら、お城の中の用意された部屋に入る。
「お義母様、ありがとうございます。今はゆっくり休みます」
そう言ってベッドに入ったが、なかなか寝付けないでいた――
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