第27話*お母様とお義母様
「出られない? お母様、それはどういう事ですか?」
お
「メーティ? 誤解しないで聞いてね? 私は、別にあなたに意地悪しようと思ったわけではないの。あなたは本来泉の中でしか生きられないはずなの。それが18年も外に、人間と一緒に居たのよ? 一刻も早く泉に入らないと、取り返しがつかなくなるわ」
そう言うと、お母様は私を引っ張り泉の中へ引き込もうとする。
いやっ!
「お母様! やめて!」
私が叫ぶと、お母様は悲しそうな顔をしながらゆっくりと手を離し、
「メーティ……分かったわ。私もこれ以上は無理にしたくない。今日はもう、アルテの元へ帰りなさい」
お母様がそう言うと、私の目の前がキラキラ輝きだし、扉が現れた。
「お母様……」
私が、どう言って良いか分からないという顔をしていたからか、お母様は優しく微笑み、
「メーティ、今日は色々あって疲れたわよね? ごめんなさいね。一刻も早く……とは言ったけれど、今すぐに悪いことが起こるというわけではないから。ゆっくり考えてね? また、来てくれるかしら? お話しましょう。それと、アルテに伝言があるからこの子を一緒に連れて行ってね」
お母様の傍に居た、妖精? のうちの一人が私に向かって飛んできた。
「メーティ様、メルと言います。一緒に行くです」
ペコッとした仕草が可愛い。
「よろしくね、メル」
そう言うと、にっこり微笑んで私の肩に乗る。
可愛い……この子の髪も青色なんだ。
私は妖精のメルを肩に乗せ、ゲートへ向かう。
お母様も最後は優しく送り出してくれた。
お母様、怖かったけど……お母様も必死だったんだ。そうだよ……ね。私、娘、なんだもんね。
*
ゲートを抜けると、あのお花畑だった。少し離れた所にお城が見える。辺りはすっかり暗くなっていた。城の前に人影が見える。
あれは……お
お義母様は私に気付くと駆け寄ってきてくれた。
「ミサ、心配したのよ? こんなに遅くなるなんて。テティ様の所に居るのは分かっていたから、心配ないって思っていたけれど、まさか日を跨ぐなんて思ってもなかったから」
お義母様に言われて初めて気付いた。日が変わっていたなんて……
「お義母様、心配かけてごめんなさい。それと、報告があって」
私は精霊テティの娘だったことや、人間界では長くは生きられないことを話した。
「そう、だったのね。ミサはメーティさま……なのね」
お義母様は驚いて、私の名前に様を付けて呼ぶ。私はそれが何だか寂しかった。
「お義母様! お願いします! 私はミサです。ミサと呼んで下さい。少しずつ仲良くなれていた気がしたので、何だか寂しいです」
私がそう言うと、お義母様は優しく微笑んで抱き締めてくれた。
「精霊は私たちから見たら格上の存在なの。だから、ミサの事もメーティ様と呼んだのよ。確かにそう呼ぶと何だか遠い存在みたいね。ごめんなさい、ミサの気持ちを考えてなかったわ」
「お義母様、私こそ無理言ってごめんなさい、ありがとうございます」
「良いのよ。私もミサと仲良くなれていたきがしたから……寂しいものね。それで……ミサはどうしたいの? って言っても直ぐには決められない……わよね? そういえば、ミサの肩に乗っているのはテティ様の所の妖精かしら?」
お義母様の声に反応し、妖精のメルはお義母様の前に行き、パタパタフワフワと飛んでいる。
「アルテ皇后、妖精メルだよ。テティ様から伝言預かってきた」
メルがそう言い、どこからかスティクを出してクルクルする。すると、目の前にお母様の映像が映し出された。
内容は、お義母様に私が精霊に戻るように説得してほしいという事と、もしどうしても私が人間になりたいというのなら、協力してほしいというものだった。アルテ皇后ならその方法を知っているはずだから……と。
映像が消えると、メルはまたスティクをフリフリクルクル。すると、空間にゲートの様な物が出来ていた。
「アルテ皇后、メーティ様、私帰るね。テティ様待ってる。じゃあねー」
そう言うと、メルは行ってしまった。妖精さんも魔法使えるんだなーと不思議な気持ちになった。
私はお母様の映像を見て、お義母様に聞きたい事があった。
「お義母様? あの……私が人間になる方法があるのですか?」
「そうね……テティ様の気持ちを考えると、母としてはミサに精霊に戻ってほしい言っている気持ちも分かるけれど、テティ様の話を聞いたら気になるわよね? 人間になる方法、ミサにも知る権利があるものね。知りたい……わよね?」
「はい、知りたいです。まだ、どうするかは考えられていませんが、人間になる方法も知っておきたいです」
「分かったわ。今から話すわね。これは決して簡単ではない、禁忌と言われている方法よ。勿論、人間になるともう精霊には戻れない。良く、聞いてね?」
「はい……」
私は、お義母様の真剣な表情に目を逸らせなくなった。人間になる方法とは、一体どんな方法なのだろうか――
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