第26話*本当の私

「へっ?」


 変な声が出ちゃった……って、精霊? 私が? どういうこと?


「ミサ、教えて欲しい。そなたの家族はチキュウに住んでいるのか?そなたは、チキュウで今まで過ごして来たのであろう?」


「はい、私の家族は地球に居ます。約18年、地球で一緒に過ごしてきました。でも、家族とは血が繋がっていないことが最近分かって……」


「そうであったか。辛い事を話させてしまってすまない。その、ミサの家族から聞いていると思うが、ミサの生まれを教えて欲しい」


 どうしよう……家族とは血も繋がってないし、施設で育ったくらいしか情報は何もない。


「生まれ……ですか? すいません、生まれは分からないんです」


「分からないとは?」


 テティ様は不思議そうに聞く。


「施設で育ったこと位で、後は、ある日の夜、施設の玄関の前に籠が置かれてあったらしくて、その中におくるみにくるまれ赤ちゃんが入っていて、それが私だったみたいで。分かっている事は、誕生日らしき日付と、の文字だけです」


「そうか、けれど、これで分かった。ミサ、落ち着いて聞いて欲しい。そなたは私の娘、メーティ……」


 言ったところで、テティは泣き崩れ、座り込んでしまった。


 わ、私、が、テティ様の娘?


「テティ様、顔を上げて下さい」


 私の言葉に、テティ様はゆっくり顔を上げ、


「ミサ……否、メーティと呼ばせて欲しい。やっぱり、私の感は正しかった。その深い青い瞳と、少し痛んではいるがその透き通った、わたしと瓜二つの青い髪。アルテが連れて来た時に、まさかとは思ってたが。実はな、私の娘、つまりメーティは、18年前に生まれて3ヶ月の時に悪魔に拐われた。どういう経緯でチキュウに行ったのかは分からないが、本当に、本当に生きてきてくれて良かった……」


 本当に……? この人が私のお母さん……? 何だか信じられない。


「テティ様? 本当にテティ様が私のお母様なんですか?」


「信じられないのも無理はないな。メーティ、こちらに来てくれるか? 確実に確かめる方法がある。私は確かめなくても、メーティが娘だと確信してるがな」


 私がテティ様の前に行くと、テティ様は私を抱き締め、額に軽くキスをする。すると、私の額が輝きだした。


 な、何が起こってるのー?


「これこそが、水の精霊の証、シズクの花。やっぱり、貴女は私の娘、メーティだったのね」


 え? え? どういうこと?


「テティ様? 私には何が何だか……」


「メーティ、あなたの額に雫の花が現れたの。これが正に私の娘だという証拠よ。メーティ? さぁ! こちらへおいで? この泉の中に。あなたは本来、この泉で過ごす予定だったのよ」


 精霊で娘の証……お母様は、喜びを隠せないみたい。私も会えて嬉しい! 嬉しいんだけど……何かひっかかる。


「お母様っ! 本当に、私のお母様なんですね。嬉しいです! でも……」


「メーティ? どうしたの? 早くこちらへ来なさい? 早く泉へ。一緒に暮らしましょう?」


 お母様に会えたのは嬉しい。けど……何だか胸騒ぎがする。


「お母様、あの、会えたのは凄く嬉しいし、そっちにも行きたいけど、私には育ての親もいるし……すぐに一緒に暮らすことは出来ないよ……後、気になるのだけど、私、泉の中に入った後はどうなるの? 出入りは自由に出来る?」


 すると、お母様は言いにくそうな、言いたくなさそうな顔をして、


ここへ入るとメーティは二度と外へは出られないわよ」


 そう呟いた――

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