第25話*水の精霊テティ

 お義母様は森の入り口に来ると、落ちていた葉を手に取り、呪文を唱える。その葉っぱを地面に置き、指輪をそっと近付けると、扉が現れた。否、葉が扉に変化した?


「行きましょう」


 お義母様が扉を開け、私を扉へ誘導する。扉を抜けると、泉の目の前だった。


 不思議……どうなってるの? 疑問は聞いた方が良いよね?


「これも魔法ですか? この扉に入ればどこへでも行けるのですか?」


「これも魔法だけど、精霊のホシノシズクの力と言った方が正しいかしら? 私の場合は森の精霊と契約しているから葉を、シリウスは花の精霊と契約しているから花をという感じね。それぞれの契約の精霊によって、扉も変わるの。この扉は、行き先を念じて扉を開けるとそこに繋がっている。扉を出現させた人と手を繋ぐと、誰でも通れるわ」


「では、この扉を使えば私の星へも?」


 帰れるのかな?


「いいえ、貴女の星のチキュウというところには行けないわ。別の星に繋げる時には、ホシノシズクを集めたものを使わないといけないのよ。貴女がこちらに来るときは、7色のホシノシズクが嵌め込まれた鏡を使って来るでしょう? それだけの力が必要なの。」


 お義母様と泉の目の前に行く。お義母様が一歩前に出て、泉に向かって指輪を翳す。


「水の精霊テティ様、アルダバラ国皇后、アルテにございます。新たに契約したいという娘を連れて来ました。姿をお見せ下さいませ」


 すると、皇后の指輪が緑色に輝き泉を照らす。泉の水が揺れ、白い光に包まれた精霊が姿を現した。


「アルテ皇后、久しいな。その娘か? 我と契約したいというのは?」


 透き通った青い髪、私と髪の色は似ているけれど姿は全然違う。お義母様も素敵だけれど、精霊って凄く綺麗ね。こんな人? 見たことない。


 私は思わず目を奪われていた。


「はい、こちらの娘はチキュウという星から来た、ミサといいます。この度、私の息子であるシリウス皇太子の、妃として迎える事となりましたので、是非テティ様と契約していただきたく連れて参りました」


 お義母様は、テティに頭を下げる。私もハッとし、お義母様に続いて頭を下げた。


「うむ。承知した。すると婚約かめでたいのう。では、その娘前へ」


 お義母様の後ろからゆっくり前へ出て、頭を下げる。


 かなり緊張するーっ!


「よろしくお願い致します……」


 上手く話せない……。


「そなたがミサか? これから、そなたが契約出来るに値するか確認する必要がある。泉の前へ。何も怖いことは無い。安心してこちらに来なさい。アルテ皇后、今からは私に全て任せていただきたい。全てが終ったら、ココにゲートを開きそちらに送り届けよう」


「テティ様、承知致しました。よろしくお願い致します。ミサ、頑張ってね」


 アルテ皇后は笑顔で手を振ると、扉から帰って行った。


「アルテがいなくなって不安か? 大丈夫、そなたが帰るときにちゃんとゲートは開く」


「はい。えと、テティ様、よろしくお願い致します」


「うむ。ミサ、こちらへ」


 テティ様に招かれ泉の前へ行くと、テティが何か唱え出した。すると、大量の水が上に舞ったかと思えば、私の上に覆い被さり、私は水の塊に包まれる。


 え? ちょっと! 待って! 待って! 息ーっ!


 私が暴れると、


「ミサ、大丈夫だ。息は出来る。今、そなたを調べているだけなのでな。ゆっくり深呼吸してみろ」


 私は暴れるのを止め、深呼吸してみるとテティ様の言った通り、息が出来る。


 否、息が出来るのなら初めに言ってほしい……死ぬかと思った……


 ホッとして、どうなるのか周りを見ていると、水がキラキラと輝きだし、やがて虹色の光に包まれた。


「これは……? 綺麗……」


 光があまりにも綺麗でうっとりしていると、テティ様の表情が固まる。


「ミ、ミサ……? そなた……!?」


 そう呟き、今度は涙を浮かべて私を見ている。


「テティ様? どうしたんですか?」


「……ミサ、そなたはチキュウという星から来たと言っておったな?」


「はい。私は地球に住んでいますが、8年位前に何故かこの国に来て、シリウスに出会い、最近また再会し、この国に参りました」


「そうであったの。だから、否、そんな事はないはずじゃ」


 明らかにさっきから、テティ様がおかしい。


「テティ様? 何か……?」


 不安で堪らない。


 どうしたら良いのだろう? 精霊と契約なんてやっぱり無理だったのかな? テティ様、様子が変だし……


「……今、そなたは虹色の光に包まれているであろう?」


「はい」


 今はしっかり話を聞こう。


 私は決心して、テティ様の話を聞く事にした。


「そ……れは、な、水の精霊が水に包まれた時の現象なのじゃ」


「それはどういう事ですか?」


「そなたは、水の精霊ということになる」

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