第22話*シリウスの両親~皇帝・皇后陛下~

「そろそろ行こうか」


 昼食を済ませドレスに着替え、扉の前に来た。シリウスが魔法を唱え、髪を黒から元の色に戻す。私の髪も黒から水色になった。シリウスが、扉の虹色の部分に手をかざした。すると扉が開き、良く見ると鏡の向こうに花畑、その向こうに城が見える。


「いよいよなのね」


「大丈夫、俺が付いているから」


 シリウスが、私の手を引き扉の中へ入る。扉を抜けると、アルダバラのあのお花畑。後ろを振り返ると、空間に歪みがあり、しばらくすると消える。


 何度か扉に入ってるけど、まだ慣れないや。


 シリウスと2人で、花畑の先に見えている城に向かって歩く。すると、道の先に人影が見えた。フィリスだ。


「フィリス、先に着いてたか」


「はい、先程到着し皇帝陛下にお伝えしております。シリウス様、みさお嬢様、お待ちしておりました」


 そう言い、頭を下げる。フィリスもまた、髪の色が黒からシルバーになっていた。


「流石、仕事が早いな。いつも助かってるよ」


「フィリス、今日もよろしくお願いします」


 ペコッと頭を下げる。


「み、みさお嬢様、頭をお上げ下さい。奥様であるみさお嬢様に頭を下げさせる訳にはいきません」


「みさ、フィリスにそんな気を使わなくて良いよ?」


「う、うん。だけど、いつも先に考えて行動してくれるフィリスが凄くて。気を遣うというよりは感謝かも」


 私が照れながら微笑むと、


「みさお嬢様、ありがとうございます。それではご案内致します」


 フィリスに付いて行き、アルダバラ城の前に来た。


「こちらで御座います」


 城の門が開き、中へ進んで行く。


 これからシリウスのご両親、皇帝陛下と皇后陛下に会うのね


 私は緊張でいっぱいだった。


 扉が開き、皇帝、皇后陛下のところへ向かう。私たちは王座の間に通された。皇帝、皇后陛下は目の前。


 シリウスは方膝を付き、


「ルギウス皇帝、只今戻りました」


 ええと、シリウスに続いた方が良いよね。


「お初にお目にかかります。皇帝陛下、皇后陛下。シリウス様の婚約者の姫川みさと申します。お会いできて光栄です」


 私も姿勢を低くし、頭を下げた。


「うむ。シリウス、よく戻った。そちらは、ヒメカワミサというのだな。話はシリウスから聞いている。紹介したい娘が居ると。というのは良く分からないが、シリウスの大事な者ということだろう。確かチキュウと言われる星から来たとか」


 婚約者は、こっちには馴染みの無い言葉なのね……何て言えば良いかな。


 言葉に詰まっていると、


「ルギウス皇帝、この者は≪姫川みさ≫という名でして、おっしゃる通り遥か彼方の【地球】という星から来ました。そして、私はこのを皇太子妃として迎えたく連れて参りました」


 その言葉を聞き、周りの者がざわつく。


「皇太子妃ですって?

 何処のご令嬢かしら」

「皇太子様の相手は、この国の者から選ばれると思ったのに」

「異国の素性も分からない者なんて」

「皇太子妃って事は、ご結婚されるってこと? 皇太子様が皇帝になられたら皇后様に?」


 城内がざわつく。


 だよね。こんな素性も分からないような娘、シリウスって、身分が凄すぎるんだから……


 私は、萎縮してしまっていた。


「みさ……」


 シリウスも心配そうに見てる。どうしよう……


 そんな時、皇帝の声が城中に響く。


「皆の者、静まれ! 我は、皇太子とその娘と話をしておる!」


 ルギウス皇帝陛下が一喝すると、城内がシーンと静まり返った。


 流石、皇帝様。あんなに騒いでたのに一瞬にして……


「シリウス、このヒメカワミサを皇太子妃として迎えるつもりなのだな。」


「はい、皇帝。それで認めて頂きたくこうして参りました」


 シリウスは深々と頭を下げる。


「よろしくお願い致します」


 私も続いて頭を下げる。


「うむ。分かった。しかし、皇太子妃となると、ある程度皆が認める理由が無いとな」


「理由……ですか?」


「そうだ。ただシリウスが想っているから、大事だからという理由では国民に認められにくいであろう」


 認められるような理由って?

 どうしたら良いの~?


 また、悩みの種が……。やはり、皇太子妃になるには一筋縄ではいかないのね……

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