第23話*シリウスの母、アルテ皇后陛下
「ルギウス、ここは私に任せてもらえるかしら?」
と、言ってきたのは皇后のアルテ。
「ああ。君に任せる。シリウス、ヒメカワミサ、この件は皇后に一任した。下がるが良い」
「はい。承知致しました」
シリウスが頭を下げた後に続いて、私も頭を下げ、王座の間を出る。
城の庭園を少し歩き、ベンチに座る。
「はぁ……みさ、疲れたよな。大丈夫か?」
「は……い、緊張しました。まだ心臓がドキドキ言ってます」
「だよな? しかし、どうしたものか。理由……母が任せてとは言ってたものの、どうするかな。このまま帰るのは心残りだが、明日からあっちでちょっと忙しくなるし、なかなか来られないしな」
悩んでいると、後ろからアルテ皇后が声をかけてきた。
「シリウス、久しぶりね」
「お久しぶりでございます。アルテ皇后」
シリウスが丁寧に挨拶をする。王族って大変なのね。親にもあんなに丁寧に挨拶をしなければならないなんて。
「ここは城の庭園で他の者も居ないのだから、母で良いのよ? えと、ヒメカワミサさんと言ったわよね?」
「は、はい。姫川みさです。アルテ皇后陛下、よろしくお願い致します」
「そんなに緊張しなくて良いのよ? 力を抜いて? 私はいずれ貴女の母になるんだから。ミサって呼んで良いかしら? 私の事も母で良いわよ?」
アルテ皇后、優しく微笑んでくれてる。
「ありがとうございます。はい、ミサとお呼び下さい」
アルテ皇后、優しいな。緊張が少し解けてきた。
「ところでシリウス、いつまでアルダバラに居られるの?」
「今日の夜立ちます。明日から地球で用があるので」
「そうなの? これからゆっくり、あなた達の話を聞いてミサの事を考えようと思ったのに……ミサも帰るの?」
「え、と……それは……」
私はシリウスを見る。シリウスはニコッと微笑み、
「それはもちろん、一緒に帰ります。あちらでも一緒に住む準備をしないと。それに、みさもまだあちらでは学生で、学校に通っています。それから……婚約者なので、一緒に居ないと。な?」
シリウスはそう言うと、私をぐいっと引っ張り、抱き締めた。顔も近付けてくる。キスしそうな勢いだ。
「ちょっ、ちょっとシリウス~っ」
かなり焦った。義母の前でキスなんてするわけにはいかない。
「ははっ。大丈夫、キスはしないよ? すると思った?」
シリウスは意地悪っぽく笑う。私は自分の顔がみるみる真っ赤になるのが分かった。
冗談もほどほどにしてよ!
「あら、まぁ! そうなの? しかし、仲良いわねぇ。でも困ったわねぇ、ミサともっと話をしたいのだけど? 国民に認めてもらう方法も早く見付けた方が良いと思うし……」
アルテ皇后にじっと見詰められる。
「えっと……シリウス、私は大丈夫よ? お義母様と一緒に過ごしてみる。それに、明後日からは冬休みだし、お正月までに帰れば何とかなると思う。親には友達と旅行とでも言うわ」
せっかく皇后に言ってもらってるんだから、暫くこっちに居た方が良いよね? 仲良くなれるかもしれないし……
「本当に大丈夫か? 俺、忙しいから一緒には来れないぞ?」
シリウスはまだ心配そう。
「ほら、ミサもこう言っている事だし? 良いでしょ? シリウス?」
アルテ皇后はニコニコしてる。
「う……分かったよ。みさが良いのなら」
シリウス、観念したみたい。
「大丈夫! 私も皆さんに認められるように頑張るよ!」
私が笑顔で答えると、
「俺も用事が終わったら、必ず、直ぐに来るからな! それまで、頑張れよ! 母さんも、みさに無理させるなよ!」
「分かってるわよ。私も娘が出来たみたいで嬉しいし、ミサ、いっぱいお話しましょうね」
「はい、よろしくお願いします。後、両親に伝えて来ますので、明後日まで待ってもらえますか?」
「もちろんよ。親御さんに心配かけるわけにはいかないものね。しっかり準備していらっしゃい」
こうして暫くシリウスと離れ、一人でアルダバラに向かい、皇后と過ごす事になった――
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