第21話*扉の場所

 次の日、私はシリウスの住んでいるマンションに呼ばれていた。


 今はアルダバラへの扉の場所が変わったと聞き、案内されている。


「扉なんだけど、近くに移動したんだ」


「近くに?」


「そうだよ。正確にはフェリスに移動して貰ったんだ。あの森まで行くには面倒だし、道も分かりにくいと思う。今後みさが一人で行く事もあるだろうしね」


 私一人で……結婚したら、そういうこともあるのかな。


 シリウスはマンションの入口に行き、管理人に話しかける。


「地下に行きたいのだが。」


「柊様、こちらを」


 管理人がシリウスに鍵を渡す。


「こっちだよ。ちなみにこのマンションの管理人もアルダバラの城で働く者だ。鍵を預けなきゃいけないしな。後は、シリウスって呼ばないように気を付けてもらってる」


 さらっと言うシリウスに驚きを隠せない。


「こんな所に、シリウスの国の人がいたのね」


 シリウスが扉を開け、一緒に階段を降りていく。暫く降りるとまた扉が有り、シリウスが扉を開けると、あのアルダバラに行ける扉が部屋の中にあった。


「今度からは、ここで行き来するんだ。最初はマンションの別室にとも思ったんだけれど、万が一、誰かに見付かって間違って入ることがあっても大変だからな。まぁ、ホシノカケラやシズクがないと本来は入れない筈だけど……以前のみさの例もあるしな」


「確かに、私も幼い頃とはいえ……どうやって行って、どうやって帰ったかも分からないくらいだし、他の人が入ると大変だもんね」


 思い出そうとしても分からない。本当に不思議だったもの……


「あ。帰ったのは俺の親、つまり現皇帝がみさを地球に帰したんだ。何故来たかはまだ、原因不明だけどね」


 え? そんな事あったの?


「そうだったんだ。気付いたら家の前だったのは、なんとなく覚えてるんだけど……ね。それに、あのホシノカケラを覗き込んだら白く光って、その後、気が付いたら病院のベッドの上だったから……」


「えと、白く光ったのはあってるよ。けど、白く光って、みさが気絶しちゃってね。慌てて父を呼んで来て、母も一緒に飛んできてくれたんだ。俺が『女の子が気絶しちゃったー!』って叫んでたから。その後は、『私達に任せなさい』って言われて、どうやって地球に帰したかは分からないんだけど、多分、魔法か魔方陣だと思う」


 今まで知らなかった……こんな過去があったなんて。


「気絶? 私、気絶してたの? 皇帝陛下にご迷惑を……」


 そんな大変な方々に御迷惑を……


「まぁ、子供の時の話だし、父も母もみさを見て『可愛らしい子』って。母なんて『こんな可愛らしい娘が欲しい』とか言ってたな。だから、大丈夫だよ。今もこんなに可愛いし」


 と、キスをしてきた。


「もう……」


 まだまだ、キスをされるのは照れてしまう。だけど、やっぱり嬉しい。


「みさ、この後着替えて、俺の両親に挨拶に行こう」


 え? 急に? 心の準備がーっ!


「えっ? 今日、行くの?」


「うん。早い方が良いしな。よしっ! 昼食済ませたら行こう」


 いきなりすぎるよ……


「分かった……はぁ……緊張する~っ」


「大丈夫だよ、きっと。側にはずっと俺も付いてるし?」


「うん……」


 気に入られると良いな……


 不安を抱えながら、シリウスと一緒にランチをする。いつもなら美味しく感じられただろう料理の味があまりしなかった――

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