第20話*両親へ報告

 ――夜。


 プロポーズを受けて、私の両親に挨拶へ行くことに。夜は家で誕生日を祝ってもらう事になっていたので、彼氏のシリウス『ひいらぎゆう』を家に連れていく事を連絡した。


「何だか緊張してきた」


 家の近くに車を止め、家まで歩いていく。シリウスは髪を黒に変え、スーツを着ていた。


「ふふ。さっきまで自信満々だったのに、私まで緊張してきちゃった」


 シリウスを見てたら、私までドキドキしてきた。考えてみれば今まで彼氏がいたことがないから、紹介するのは今回が初めて。


 皆どんな顔するだろう。


「みさ、ちゃんとみさの両親に認めてもらえるように頑張るな」


 緊張しながらも、キリッとした表情になり、しっかりと私の手を握りしめてくるシリウスが格好良く見える。


「うん! まぁ、絶対シリウスなら大丈夫だよ」


「あ。名前は、悠な?」


「あ。そうだった! 危ない危ない。悠さん、よろしくお願いします」


「ん。頑張るよ」


 シリウス、深呼吸してる。彼氏の柊 悠さんって紹介しないとね。


「ただいまー! お母さーん! 彼氏連れてきたよー」


 勢い良く玄関の扉を開け、シリウスと中に入る。お母さんがパタパタと奥から出てきてくれた。


「あらあら、ようこそ。みさの母です」


「お邪魔します、柊です。あの、これつまらないものですが……」


 と、シリウスが用意していたお土産を渡す。中身は父と母が大好きなお店の和菓子だ。


「ありがとう。ささ、中に入って。ゆっくりしていってね」


「ありがとうございます」


 シリウス、やっぱりかなり緊張してるみたい。


 リビングに入ると、私の誕生日のお祝いの料理や飾りつけが沢山してあった。今までの誕生日より何だか凄い。


「お母さん、何だかいつもより誕生日のお祝い凄くない?」


 驚いている私に母は、ニッコリとしている。


「今日のお誕生日は特別よ。成人のお祝いですからね。料理も張り切っていっぱい作ったわよ」


 そっか、去年のお兄ちゃんの時も確かに凄かったもんね。


「お母さん、ありがとう!」


「さあ、席に着いて。彼氏さんもどうぞ」


 と、母が椅子を引いてくれる。


「あ。はい、ありがとうございます」


 私とシリウスの席がリビングの奥だ。手前に座っている父とお兄ちゃんもシリウスに興味深々。私は皆にシリウスを紹介する。


「お付き合いしている、柊 悠さん」


 続いてシリウスが頭を下げて自己紹介をする。


「初めまして、柊 悠です。みささんと、結婚を前提にお付き合いさせていただいています。よろしくお願い致します」


 結婚を前提にと改めて言われると、何だかやっぱり恥ずかしいな。


 すると、暫く話を聞いていた父が、


「みさ、良かったな。みさの顔を見てると、幸せそうなのが分かる。素敵な彼じゃないか。悠くんと言ったかな? みさの事、よろしく頼む」


「はい! ありがとうございます!」


 笑顔で答えた父に、2人でホッと胸を撫で下ろす。 しかし、お兄ちゃんは少し険しい顔をしていた。


「悠さん、みさが悠さんの事、好きなのは良く分かりました。ですので、悠さんにみさの事を任せます。その代わり、みさを悲しませるような事があったら、絶対に許さないので、そこは覚悟しておいて下さい」


 心なしか、お兄ちゃん、拗ねてる? 様な気が……うーん、前に私の事、好きって言ってたから……かな。嬉しいような、悲しいような……


「ちょ、ちょっとお兄ちゃん! そんな言い方しなくても……」


 続けて言おうとすると、シリウスは私を止め、優しく微笑み、真剣な顔でお兄ちゃんに向き合った。


「お兄さんの言うことはもっともだと思います。今日初めて会った妹の彼氏がどんな奴か気になりますもんね? けれど、安心して下さい。必ず誰よりも幸せにしてみせますから」


「あ、ああ。妹をよろしく頼みます」


 お兄ちゃんもタジタジだ。シリウス、格好良い……


誕生日パーティーは和気あいあいとした雰囲気で進み、その中でシリウスが今、大学生で起業しようとしていることや、結婚は仕事が安定したり、或いは会社が軌道に乗ったら結婚する事を話したら、最初は驚きつつも、5年以内には結果を出すってはっきり言ったことで、皆安心した様だった。


シリウスの国では、婚約者としてもう直ぐ迎えられるのは黙っておこうと思う。18になって直ぐに結婚するなんて、驚くと思うから。





誕生日パーティーが終わり、シリウスを玄関まで送る。


「今日はありがとう。両親も喜んでた」


「良かった。けど、やっぱりかなり緊張したよ。次はみさ、近い内に俺の両親に挨拶に行こうな」


そう笑顔で去っていくシリウスの後ろ姿を見つめながら、控える挨拶についてドキドキしながら考えるのだった――






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