第19話*誕生日

 シリウスから最初に告白されて10ヶ月が経った。今日は誕生日、シリウスがお祝いしてくれることになっている。


 ……それと、プロポーズの返事。


 あれから随分悩んだけれど、決めた。


 私はシリウスのプロポーズを受けることにした。あの食事の日から約半年、一度も会ってはいない。シリウスが忙しいのもあったが、私の返事を急かさない様にシリウスが配慮してくれていた。


 シリウスは今、どんな気持ちだろう。早くこの気持ちを伝えたい。会いたい。再開した後、ほとんど毎日会っていたから。夜にシリウスが猫の姿で来たりして。それが半年も会っていないんだもの。会いたくてたまらない。


 時計を見るとまだ8時前、約束は9時。だけどいてもたってもいられなくなり、家を出た。


 まだ来ていないかもしれない公園へ走っていく。すると、人影が。


 シリウスだ! いつものベンチに座っていたシリウスだが、私に気付くと立って手を振ってきた。手には花束を持っている。


「シリウス!」


 私は堪らずシリウスに抱きつく。そんな私を愛おしそうに抱き締めてくれる。


「みさ、会いたかった」


「私も! ずっと会いたかったわ。半年が凄く長く感じた」


 シリウスは私から離れると、とびきりの笑顔で花束を私に渡す。


「みさ、誕生日おめでとう!」


「シリウス、ありがとう!」


 大好きな人に会えて、花束を貰って、誕生日をお祝いして貰って、なんて私は幸せものなんだろう。


「みさ、デートしようか」


「うんっ! あ。でも、花束どうしよう?」


 素敵だけど、持ってデートは出来ないよね。


「みさお嬢様、私が預かります。どうぞデートをお楽しみ下さいませ」


 急に目の前にフィリスが現れ、私から花束を受け取った。


「フィリス、流石だな。ありがとう」


 シリウスがそう言うと、フィリスはニコッと微笑んだ後、ペコッとお辞儀をし、また、シュッと消えた。


 ビックリした……。本当、フィリスって優秀な側近ね。って、シリウスもいつもの事?

 なのかな。全く驚いてないよね。


「フィリス、いつでも現れるのね。何だか凄い」


「フィリスは優秀だからな。さぁ! デートしよう!」


 と、シリウスに手を引かれ車の助手席に座る。


 この感じも久しぶりで何だか嬉しい。


「ところで、何処に?」


 すると、シリウスはニカッと笑った。


「二人っきりになれるところ」


 そう言って着いたのは、あの扉がある部屋だった。


「デートで行こうって言っていた所って……」


「そう! アルダバラのあの花畑で……二人で過ごそうと思っていたんだ。今日は大事な日だから二人が出会った場所が良いかなって」


 シリウス、色々考えてくれていたんだ。


「シリウスと初めて会った場所……うんっ! 嬉しい。ありがとう」


 扉に恐る恐る近付き、指輪を翳してみる。

すると、鏡が淡く光り、触ってみると入れそうな感じ。ドキドキして、私が躊躇していると、


「それじゃあ行こうか」


 そう言い、シリウスは私の手を引き鏡の中へ。鏡を抜けると、お花畑。後ろを振り返ると、空間に歪みがあり、しばらくすると消えた。


「ここは……あの花畑ね。またあの光りに包まれるのかと思った」


「そうだよ。ここはあの思い出の花畑。光りに包まれたのは、ホシノカケラだったからだよ。カケラはその力が強かったから」


「そうだったんだ」


 そう考えると、やっぱりホシノカケラって凄いものだったのね。


 しばらくお花畑で、まるで小学生の頃に戻ったかの様に、お花を摘んだり、冠や指輪を作ったりして遊んだ。


 二人でお花畑に寝転んでいた時だった。シリウスが、スッと起き上がり真剣な表情で手を差し伸べる。


「みさ、立って?」


「はい」


 ドキドキする。ついにプロポーズの返事をするのね。


 私が立つと、シリウスは跪き、


「改めて言うよ。みさ、君を必ず幸せにします。と結婚して下さい」


 と頭を下げ、私の手の甲にキスをした。


「はい! 喜んで! よろしくお願い致します!」


 シリウスは顔を上げ、立つと私を抱き締めた。勢いが良すぎて、花畑に倒れ込む。


「みさ! ありがとう! 決心してくれたんだね。嬉しいよ! 必ず幸せにするからなっ」


「シリウスったら、勢い良すぎ。ふふふ」


 シリウスが照れ笑いしてる。


「はは。ごめん、嬉しくてつい」


 気持ちの良い風邪が吹いている。私は幸せを噛み締めていた――

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