第17話*デートの後は

「どうした? 疲れたか?」


 シリウスは心配そう。


「大丈夫! ちょっと疲れちゃったけど、楽しかった。それにしても、こんなに服と靴、髪のセットまでありがとう」


「どういたしまして。気に入った?」


「うん! けど、今考えるとシリウスっていつも魔法で靴も服も変えるから、今回もそうかなって思ってて。だから少しビックリしちゃって」


 そう言うと、またシリウスが考え込んでる。


「魔法の方が良かった?」


「あ、ううん、そうじゃないよ? 少し驚いただけで、あんなにお店でお買い物……いっぱい選んでもらった事なんて無いから、凄く嬉しくて。楽しかった!」


 私の反応に凄く満足そうにしてる。運転しながら私の手を握る。その表情はどこかまだ照れていて、可愛い。


 可愛いなんて言ったら怒るかな? なんてね。


「喜んでくれて嬉しいよ。ちゃんとデートって考えた時に、魔法を使うのを止めようって思ったから。普通のデートっていうのが俺には良く分からなくて、結局俺の好みになちゃったけどな」


 いっぱい色々考えてくれてたんだ。


「じゃあ、このドレスもシリウスの好みなのね。色々考えてくれてありがとう! 私もシリウスの他に誰とも付き合ったこと無かったし、デートって雑誌や漫画で見て憧れてたの。その、初めてをいっぱいシリウスと出来て嬉しいの」


 嬉しくてちょっと照れながら言うと、


「みさ、可愛い……」


 手を握る力が少し強くなる。赤信号で車が止まると、シリウスがじっと私を見つめ、キスをしてきた。


「シ、リウス?」


 驚いて、照れて顔が真っ赤になる。


「急にごめん、つい、したくなって。でも、そんな可愛い事言うみさが悪い。そんな照れた顔してると、また我慢できずにキスしたくなるよ」


 ニヤニヤと意地悪っぽく笑うシリウスに、私は恥ずかし過ぎて、顔を手で覆う。


「シリウスったら、もうっ!」


「ははっ。もうすぐ着くよお嬢様?」


 言われて顔を上げると、また高そうなホテル。着いたら助手席のドアを開けてくれ、手を引いてくれた。


 レストランに入って、上着を渡す。高そうなところにドキドキする。慣れないコース料理に緊張したけれど、どれも美味しい。


「美味しい」


 そう言って食べている私を、シリウスは優しい表情で見ている。目が合うと、やっぱりドキドキしてしまう。


 一通り食事が終わった後に、シリウスがまた真剣な顔で見つめてくる。


「みさ、今日は1日君と居れて嬉しかったし、楽しかった。まだ返事には時間はあるし、焦らせたくはないんだけど、どうしてもちゃんとした所で伝えたかったんだ。それと、これを受け取って欲しい」


 シリウスはそう言うと、小さな箱を私に手渡した。中にはキラキラと虹色に光る宝石が付いている指輪が入っていた。


「これを私に? こんな高そうなもの……」


 もしかして、婚約指輪とかいうものなの?


「これはね、指輪にホシノシズクが付いているんだ。それをみさに持っていて欲しい。この指輪を持っていれば、あの扉に入ることが出来る。それと、その……婚約指輪の意味も込めて」


 やっぱり、婚約指輪だったんだ。返事はまだで良いのかな? それにしても、ホシノシズクってシリウスがしている腕輪に嵌め込まれているのと一緒だ。嬉しいな。


「ありがとうございます。指輪、凄く嬉しいです。でも、扉に入れるって言ってたけれど、私の持っているホシノカケラでも扉には入れますよね?」


 すると、シリウスは凄く言いにくそうな顔をしている。


「それなんだけど、そのホシノカケラは返して欲しいんだ」


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