第16話*シリウスとデート

「んー。良く寝た。良い天気だなー」


 日差しが差し込んでいて、暖かくて気持ち良い。ぐーっと伸びをする。


 あれ? シリウス?


 横に居た筈のシリウスが居ない。


 夢、じゃないよね? 良く見ると、ベッドの上に手紙の様な物がおいてあった。


『愛しいみさへ よく寝てるみたいだからそのまま行くよ。今日の9時にあの公園で待ってるよ! デートしような! シリウス』


 シリウス、やっぱり居たんだ。

 ぎゅっと手紙を抱き締める。


 って、今、何時っ? 時計を見ると、8時10分。


「8時過ぎてんじゃん! 公園までは15分、ええと、とにかく急がないと!」


 掛けてあったワンピースを取り、急いで身支度。靴は……時間無いから、スニーカーで良いよね! 靴を履き、急いで家を出る。信号がもどかしい。公園に着くと、5分前だった。


 シリウスはこの間のベンチに座っていて、私に気付くと立って笑顔で手を振っている。


 今日はフィリスはいなさそう。


「みさ、今日も可愛いね。昨日はよく眠れた?」


 また可愛いって、もう。 昨夜からの今朝なので、何だかいつもより余計恥ずかしくなる。


「はい、眠れました。朝までぐっすりです。シリウスは?」


「俺もしっかり寝たよ。みさの寝顔見てたら、いつの間にか寝てたよ。今朝も7時までは横に居たんだ」


「起こしてくれたら……」


「ぐっすり寝てるみさを見てたら、そのまま寝かしてあげたくなってさ。あ、それと敬語禁止な? 距離がまだ遠い気がするんだ」


「う……わかった。努力する」


 シリウスは返事にニコッと笑い、満足そう。


「よろしい。それと、行きたいとこある?」


「行きたいとこ? えと、水族館に行きたいな」


 イルカショーとか一緒に見たいな。


「水族館、行ってみるか?」


 シリウスが快諾してくれたので、水族館へ。色んなお魚を見たり、イルカショーをみたり、触れあったりした。凄く楽しくて時間が経つのはあっという間だった。辺りも少しずつ薄暗くなっている。


「シリウス、ありがとー! 凄く楽しかった!」


「楽しんでくれて良かった。みさ、はしゃいでたもんな。この後は、ホテルのディナーを予約してるんだ」


 ホテルのディナー? って私、こんな格好で大丈夫なのかな。


「シリウス、私、こんな格好でホテル行って大丈夫かな?」


 私が不安そうにしてると、


「大丈夫! 俺が全部エスコートするから、任せてな?」


 何だか逞しい。


「うん! シリウスに任せるね! ありがとう」


「それと、ここからはシリウスじゃなくて、悠って言って欲しいんだ」


「ゆ……うさん?」


「そう。こっちでの俺の名前は、ひいらぎ ゆうだからね」


「分かりました、ゆうさん」


「また、敬語…… まぁ、いいか!」


「あ! ゆう、ごめん!」


 そう言うと、シリウスは悪戯っぽく笑い、手を引き走り出す。


「それじゃあまず、服を着替えよっか!」


「え、え? えーっ?」


 エスコートってそこからー?


 そんなシリウスの行動に驚き、思わず叫んでしまった。


 さっきまでニコニコ落ち着いた口調で話してたと思ったら、今度は無邪気に笑って、もうシリウスのペース。シリウスってもしかして、結構強引? なのかな?


 手を引かれ付いていくと、シリウスは慣れた様子でショップに入っていく。


「この人に会うドレスを。」


「柊様、いつもご贔屓にして下さりありがとうございます。かしこまりました。お任せ下さい」


 店員も慣れた感じだ。


 ニコニコ手を振り店員へみさを託す。


 ええ~! ドレスって? ディナーって、そんなに高いところなの?


 驚いている私にお構い無しで、店員がドレスを持ってきて、そのまま試着室へ促される。されるがままドレスに着替えさせられる。


 シリウス、凄く楽しそう。

 けど……


「うん、可愛いな。あ。これも着てみようか。靴も頼むよ。」


 どんどん靴とドレスが出てくる。


「あ。えっ? ちょっ、ちょっと待って~!」


 何着か着た後、シリウスがやっと満足そうに言った。


「よし、これでいこう!」


「や。やっと決まった……」


 ふぅ……と長い息を吐く。


 そんな私を見ながら、シリウスは満面の笑みで言った。


「今度はヘアメイクだな」


 ま、まだあるのね~~~


 それから1時間後、髪を綺麗にセットされ、ドレスを着せられた私がそこにいた。


 疲れきって言葉が上手く出ない。


「う……」


 思わず声を漏らすと、シリウスはちょっと心配そう。


「みさ、どうした~?」


「つ、疲れました」


 そう言うのが精一杯。


 って、シリウスってホントに何者? 会社立ち上げてるとかは言ってたけど、美容室も『いつもご贔屓に』とか言われてたし、支払い……してた?


 それとこの格好は、シリウスの好みなのかな。可愛い。


 シリウスはニコニコして、車の助手席を開けてくれる。


「それでは行きましょうか? お嬢さん」


 いつの間にか目の前に高級車が。


 ホントに何処まで驚かせる気だろう。まだまだ知らないシリウスを知って、ワクワクが止まらなくなるのだった――









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