第12話*シリウスの本気とみさの気持ち
私は、自分の顔がみるみる真っ赤になるのが分かった。
「皇太子妃に……って、何を言ってるんですか? 私なんかにそんな…… そんな重大な事は務まりません! 只の一般市民ですよ?」
私のその言葉に、シリウスはしゅんとなっている。
「結婚相手が僕じゃ嫌かな……?」
シリウスって、何だかやっぱりズレてる? そういう事じゃないんだけどな……
「いえ、シリウスさんが嫌というわけではなく、急に皇太子とか皇妃とか言われても……」
言葉に詰まる。どう答えたら良いか分からない。
「そうだよね。急に言われても困る、よな。うん、返事は急がないから、ゆっくり考えてみて? 俺は本気だ」
シリウスの真っ直ぐな瞳を見ると、真剣だという事が分かる。けど、私には大きすぎる話だし、何よりまだ高校生。
「はい。ありがとうございます。でも、ごめんなさい……本当に直ぐには答えられません。私はまだ十七です。高校生……学生なんです」
「それは、大丈夫! 問題ないよ。俺は今、みさの世界でフィリスと会社を立ち上げようと思ってるんだ。四年後に起動に乗せる予定。だから、こっちではそれまで忙しい。結婚式も会社が起動に乗ったらと、思ってる。つまりみさは結婚すると、こっちでは社長婦人にもなれるよ」
満面の笑みでシリウスは話してるけど、今度はこっちで会社を立ち上げるって……どんだけなのよー! シリウスの国では皇太子妃で、帰ったら社長婦人なんて…… 話が段々大きくなっているような……
「では……返事はそれまでゆっくり考えて? ということですか?」
何とか返事をした私に、シリウスは少し困ったような顔になった。
あれ? 違うの? また、不安になる。
「……みさの世界では、みさはまだ学生だけど、成人は十八と聞いた。それでも、みさが十八になるには、まだ一年位はある。けれど俺の国では成人は十五、俺なんてもう二十歳だ。結婚は早い方が良い」
ってことは、結局、直ぐに決断しなきゃならないって事じゃない。どうしよう。荷が重い……
「では、いつまでに返事をしたら良いのですか?」
また、心臓がドクンドクン言ってる……シリウスとは居たいけど……居たいけど……
「今はゆっくり考えて、10ヶ月後のみさ誕生日までには返事をもらいたい。十八になる前……成人になる時には決断してほしい」
「後、10ヶ月……」
後、10ヶ月でこの重大な決断を……? 私に出来るのかな…… なるべく平静を装うようにしていたけど、シリウスにはバレてる……よね。
「みさ、不安なのは分かるよ? けれど、俺は他でもない……みさ、君が良いんだ。それに、小さい頃みさが『ココ』に来れたのは偶然かもしれない。でも、それを俺は、運命だと思う。俺はあの日、七年前、みさに会った時から、みさの事が頭から離れなくなっていたんだ。ずっとだ。誓っても良い、1日も君を忘れることはなく、想い続けてた。みさ、本気で君が好きだ。さっきも言ったけれど、結婚してこれからもずっと一緒に居たい……だから、良く考え欲しいんだ」
シリウスの本気が伝わってくる。こんなに私の事……この先これ以上、私の事を想い続けてくれる人なんてきっといないよね。
「分かりました。10ヶ月後、ちゃんと決めて返事します」
そう言うと、シリウスは少しホッとした様だった。
*
シリウスと別れて、歩いて家へ戻る。髪も服も元に戻してもらった。
あの後、シリウスと色々な話をした。お花畑を散歩したりもしたし、楽しかったな。フィリスさんは、いきなり現れるし。私たちのもどかしい姿を見ていて、いてもたっても居られなくなったって。まさか、近くに隠れてたなんて。驚く事ばっかり……
フィリスさんにも言われて、シリウスがどれだけ私の事を好きってことも分かったし、言われて、照れてるシリウスも可愛かったなー。なんて……
「何だか、不思議な時間だったな。けど、全部夢じゃないんだよね……」
歩きながら一人呟く。家が見えてきた。何だか少しだけ、現実に戻った気がする。
これから、どうなるんだろうって不安はあるけれど、シリウスが好き……この気持ちを大事にしようと思った――
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