第13話*集中出来ない

 明日から中間テストだというのに、全然集中出来ない。シリウスと会ってから一週間、ずっと結婚の二文字が頭から離れなくなっていた。


「はぁぁぁ……」


 大きな溜め息をつき教科書に頭を埋める私に、親友の綾菜が不思議そうな顔をする?


「みさ、どうしたの? おっきい溜め息なんて付いて。 何かあった? 中間テスト、そんなに不安? まぁ、私も不安だけどねっ」


 綾菜って優しいよね……心配かけちゃダメだわ。


「とね、実は……石の王子様に会えたの。会えたんだけど……」


「えっ!? 良かったじゃない! ずっと会いたいって言ってたもんね」


 自分の事の様に喜んでくれている。


「そうなの。すっごく嬉しかったよ。やっと会えたもん」


「それで? あ! 嬉しすぎて夜も眠れなくなったとか?」


 綾菜はニヤニヤしながら、私の話を聞いている。


「ん……とね、それもあるのかも、だけど、石の王子様、思ってたより凄い人だったの」


「凄いってどんな?」


「今、彼は二十歳で、親友と一緒に会社を立ち上げてるんだって。それでね、会社が軌道に乗ったら、結婚しないかっても言われたの」


 本当は皇太子で、親友じゃなくて側近だけど。それに来年結婚……そんなの流石に信じるわけないし。


 あ。綾菜固まってる。と思ったら……叫んだ。


「…………つまり、それって社長婦人ってことじゃないっ!!」


 綾菜の声に皆が振り向く。


「ちょっ……綾菜、声おっきいって」


「ごめん、ごめん、ビックリしちゃって。けど、良かったね。ずっと探してたもんね。それでオーケーしたの?」


「それが……まだ……」


 綾菜は凄く不思議そうだ。


「何で? まだ、返事してないの? 迷うことないじゃない」


「そう、なんだけど……社長婦人って、何だか荷が重くて。それにね、私が十八になったら婚約したいって」


 本当は、アルダバラの皇太子妃だけど。


「そか……先に婚約。確かにいきなりだね。ちょっと悩むかも」


 綾菜は真剣に話をじっと聞いてくれている。


「うん。でも、嬉しかったのは本当だよ。また会えただけでも奇跡なのに、まさか、好き……で、プロポーズされるなんて、夢みうで気持ちがフワフワしてたの」


「そうなんだね。夢みたいな話で、なんだかみさ、シンデレラみたいだねー。それは確かにテストに身が入らないわけだっ」


 最後は茶化してくれて、私の気持ちを軽くしてくれる。いつも考えてくれて……


「綾菜ありがと。大好きっ」


 抱きつくと、綾菜が私を撫でる。


「わかってる。私もみさ、大好きっ! でも、王子様にも大好きって言わなきゃね! 後……テスト、頑張ろっ」


「う……テスト……頑張る……」


 そう言いながら、綾菜に話したことで、少し気持ちも軽くなった。


 テスト頑張らなきゃな……こんな事で躓くわけにはいかないもんね!


 シリウスも会社を建てようとしてるんだし、少しでもシリウスのサポート出来るように頑張らなきゃね!


 そう自分に言い聞かせながら、机に向かった――






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