第10話*思い出の場所へ

「みさ、少しは落ち着いた……?」


 動揺しまくっていて、落ち着かない私をベンチに座らせて、シリウスも、フィリスさんもずっと横で心配そうに待っていてくれた。


「本当にごめんなさい。話が大きすぎて、現実じゃなくて夢、みたいで……でも、シリウスさんはここにいる。こうやって触れる……って事は現実、なんですよね」


「現実、だよ。俺はみさに会いたくて、ずっと探してて、そして見つけて会いに来た。このを使ってね」


 シリウスはそう言うと、腕に嵌めているリングを見せてくれた。良く見ると、リングに虹色の宝石が付いている。今度はホシノシズク、なんだ。


「綺麗……」


 私がその輝きにうっとりしていると、シリウスが私の手を取り、


「さあお嬢様、俺達の国へ案内するよ。今から、扉のある場所へ案内しよう」


 そういえば、扉って何処にあるんだろう。


「扉のある場所って何処ですか? この公園ではなさそうですよね?」


「そうなんだ。ここから車で30分位かな。あの扉の存在が知られるといけないから、ある場所に隠してあるよ」


「そうなんですね。……って、シリウスさん、車の運転出来るんですか? シリウスさんって、何歳なんですか?」


「俺は二十歳だよ? 車の免許もちゃんとこっちで取ったから安心してね?」


 心が見透かされた様で何だか恥ずかしい。二十歳……なんだ。シリウスさん、歳上だったのね。


「うん、何だか疑ったみたいになってしまってごめんなさい。後、歳上……だったんですね」


「みさは17歳……だよね? 歳上は嫌だった?」


「そ、そんなこと無いです。ただ、びっくりしてしまって。私の中では同じ年の男の子っていう感じでしたから」


 歳上と分かり、また、更に緊張してしまっう。そんな私を、シリウスは車の助手席のドアを開け、エスコートしながら座らせてくれた。


「また、緊張してる? 大丈夫だよ? リラックスしてゆっくり、ドライブしながら行こう」


 そう言って、シリウスが運転席に乗り、私の手を握る。


「ありがとうございます。あれ? フィリスさんは乗らないのですか?」


 すると、フィリスはお辞儀をし、


「シリウス様、私は先に国へ帰って待っております。お気をつけて」


 と、言ったかと思ったらシュット目の前から消えて居なくなった。


 あれ? 何処に……? 不思議そうな顔をしていると、シリウスはウインクをしてニコッと笑った。


「フィリスのは魔法だよ。扉まで瞬間移動したんだ。その後は扉を通らないといけないけどね。俺とみさも瞬間移動できるけど、ゆっくり行きたいからね」


 今度は魔法……ホントに不思議。でも、シリウスとやっと二人っきりになれたし嬉しいな。


「何だかやっぱり不思議です。魔法まであるなんて」


「ごめんね、驚かせて……それに、いっぱい緊張させちゃったね」


 シリウス、しゅんとしてる? さっきまでの自信家のシリウスと違って、なんだか、子犬みたいに可愛い……このギャップにやられそうな人多そう……


「確かに最初は驚きました。皇太子様だし、精霊、エルフ、魔族……魔法。なんだか、夢の世界、おとぎ話の世界で。けれど、色々シリウスさんと話しているうちに、現実だって思えてきて、今はこれから行く所の事を考えるとワクワクしてます」


 シリウスは私の言葉を聞いて、急に笑顔に……ヤバい、王子様スマイル。ドキドキしちゃうよ。


「そう言ってくれて嬉しいよ! 言わなかったけど、怖くなったり、嫌になってたらどうしようって思ってたんだ。俺と会ってくれて、来てくれてホントにありがとう! ほら、見てごらん。この先に言っていた扉があるよ」


 車の窓から外を見ると、いつの間にか何処かの山道を走っていた。良く見ると先が少し開けていて、可愛らしい一件の山小屋が見えた。


「着いたよ。ここなんだ」


 シリウスが、車のドアを開けてくれる。


「コテージ? 別荘か何かですか?」


「そうだよ。ここは僕の所有する別荘の一つ。どうぞ、中に入って」


 所有する別荘って……また。シリウスってやっぱり凄い。


 また少し緊張しながら、階段を上り扉を開け、中に入ると、暖炉にキッチン、テーブル、そして奥に大きな扉があった。


「ここ、なんですね。扉が隠されている場所って」


 シリウスは優しく微笑みながら教えてくれる。


「そうだよ。そして、みさがしているペンダントの石、をその扉の周りに嵌め込まれている石と同じ水色の宝石の部分にかざしてみて」


「この石を……」


 石を取り出し、恐る恐る扉に近づく。良く見ると、赤、黄、緑、紫、青、水色、虹色の七色の宝石が鏡の周りにはめ込まれている。


 その水色の部分にペンダントの石をかざしてみた。その瞬間、私とシリウスを眩しい虹色の光が包み込み、扉の中へ吸い込まれてしまった。


 私が眩しさのあまり目を瞑っていたので、シリウスが手を引いて、エスコートしてくれた。


「みさ、目を開けてごらん。」


 シリウスの声に目を開けると……そこには、色とりどりの花が咲いている花畑が広がっていた。


「ここは……」


 見覚えのあるお花畑。


「ようこそ、我が王国へ」


 そう言ってお辞儀をしたシリウスは、いつの間にか王子様の格好をしていた――






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