第8話*義家族に大切にされて……
部屋をノックすると中からお母さんの声が聞こえた。
「はい」
私とお兄ちゃんは、両親の部屋に入る。両親は、真剣な顔をした私たちに不思議そうな顔をしている。
「どうしたの? 二人とも?」
私はさっき、お兄ちゃんと話していた事を伝えることにした。
「今日の昼間ね、部屋の前で父さんとお兄ちゃんが話してるの聞いちゃったの。その事で、今までお兄ちゃんと話してたんだ。お兄ちゃんが知ってる事は話してくれたよ」
お兄ちゃんが好きって言った話は止めておこう……言ってもしょうがないしね。
両親は話を黙って聞き、ゆっくりと話をしだした。
「みさ、悪かった。来年、お前が十八になる時、ちゃんと話はするつもりだった。こんな形で知らせることになってすまん」
と、父。母は涙を浮かべ、
「こんなことになって、傷ついたわよね。ごめんね……もっと、早く言えば良かったわ……みさ、こっちおいで。」
母はぎゅっと抱き締めてくれた。私は切なくて、また涙も出そうになったけれど、伝えたいことがあったから、涙をぐっと飲み込んで、気持ちを伝えた。
「お父さん、お母さん、血の繋がりの無い私を沢山の愛情をかけてこれまで育ててくれて、本当にありがとう。お父さんとお母さんの子で……この家に来れて本当に幸せだよ」
私がそう言うと、二人とも切なそうななんともいえない顔をしていた。
「みさ、ありがとう。私達もみさと過ごした日々は掛け替えの無い日々だったわ。幾つもの幸せをあなたは与えてくれた。血は繋がってなくても、私達はみさの親だし、ここはあなたの家。これからもずっと、よ」
と、母。
父は、
「みさの幸せをずっと願ってる。何があってもわしらは、みさの味方だからな。何時でも頼りなさい」
私は、母と泣きながら抱き合った。
それから、私がこの家に来た時の事を話してくれた。
お兄ちゃんが生まれ、もう一人と思っていたが、お兄ちゃんを産んだ後、もう子供が出来ない身体になってしまっていた。そんな時施設で私に出会い、なんて可愛い赤ちゃんだと思い、施設との交渉の上、引き取ったということ。
「施設に居たんだね」
お母さんが思い出しながら、優しく微笑んでいる。
「そうよ。本当に可愛くて、直ぐにでも引き取りたいとお願いしたわ」
施設に来た経緯は、施設の玄関の前に籠が置かれていて、中を見ると、おくるみに巻かれていた赤ちゃんがいて、誕生日らしき日付と『M』の文字が書かれた紙を握っていたと。施設ではエムちゃんと呼ばれていた。
引き取った後、名前はMから始まる名前が良いだろうと、両親がみさと名付けてくれ、本当の娘の様に育ててくれた。
一通り話が終わると、お兄ちゃんが私の頭をまた撫で撫で。
「みさ、お前は愛されてるよ。俺はもちろん、父さん、母さん、皆がお前の事を愛してる。だからもう、そんな悲しい顔はしないで」
「ありがとう……みんなの家族で本当に良かった……」
しばらくみんなで話をして、部屋に戻った。ベッドに入り、今日の事を振り返る。
私の家族……私ってなんて幸せものだろう。愛されて育ってきた事を実感する。
それにしても、今日は色んな事があったな。いや、有りすぎたよね。養子って分かって、家飛び出して……公園でまさかの、石の王子様≪シリウス≫に会って……
帰って話して、お兄ちゃんが私を好きで……今日の事を思いだすと、いっぱいいっぱいで、胸もいっぱい。
だけど、楽しみも出来た。また、シリウスに会えるん……だよね? まだ、ちょっと不安だけど……
と、色んな事を考えながら、これからまた会える王子様の事も思い、ワクワクドキドキしながら眠りについた――
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