第7話*兄の気持ち

「謝らないで。お兄ちゃんが悪いわけじゃないんだから……」


 言いながら、涙が出てきて止まらなくなった。そんな私を見て


「……えと、あ、そうだ! 飲み物入れてくるから待ってろ」


 と、兄は慌てて一旦部屋を出て、温かい紅茶を入れて急いで部屋に戻る。


「みさ、大丈夫か? 紅茶を淹れてきたから飲みな?」


 優しくそう言うと、私にティーカップを持たせてくれた。いつも何かあると、私を落ち着かせる為によく温かい飲み物を入れてきてくれる。


「お兄ちゃん、ありがとう……」


 いつもの優しさに少しだけ落ち着いてきた。


「実は俺もまだ少し混乱してるんだ。みさと血が繋がっていないって言われても、信じられない。みさは、もっと……だよな」


「うん……信じられないよ……とね、私はいつからこの家にいるの? 何か聞いてる?」


「みさは、生まれて間もない頃に来たって聞いてるよ。一歳にもなっていなかったって。もっと詳しいことは、また父さんか母さんに聞いてみな。一人で不安だったら、俺も一緒にちゃんと聞くから」


 真剣な顔で、私を抱き締め撫で撫でしてくるのはいつもの事なんだけど、あれを聞いてしまってからどうして良いか……


「お兄ちゃん、後一つ聞きたい事があるんだけど」


「ん? 何だ? 遠慮せずに聞きな?」


 言いにくいけど、聞こう……


「……お兄ちゃんが、私の事を好きっていう……」


 言った瞬間、かなり驚いた顔をして、みるみる顔が真っ赤になってるお兄ちゃん。やっぱり、本当だったの?


「みさ、その話もき、聞いて……」


「うん、聞いちゃったの。答えて欲しいのだけど……ダメ?」


 ちょっと上目遣いで見つめてみる。お兄ちゃんの顔はまだ赤い。照れてるのかな?


「う……分かった。……驚いたよな? けれど、みさが聞いてしまった以上、隠しても仕方ないから言うな。そうだよ、俺はみさが好きだ! これからもきっと、好きでいると思う」


「うん」


「でも、みさに好きな人がいるのも知ってる」


 好きな人がいるの分かってたんだ。


「え? 知ってたの?」


「みさを見てたら分かるよ。誰かは分からないけど」


 まぁ、一度しか会ったことない人だったもんね。私も今日会うまで半信半疑だったし。


「うん、居るよ好きな人」


 ちょっと照れながら言うと、


「でも、俺も諦めないよ。みさの事をきっと誰よりも好きだから。今は無理かもしれないけど、きっと振り向かせてみせる」


 凄く真剣な顔で告白された。


「あ、え? んと……ごめん、お兄ちゃん、やっぱり私にはお兄ちゃんとしか思えない」


「そうだよな……十七年みさのお兄ちゃんだったもんな。うん、でもな、俺はちゃんと兄としてもみさの事は大事だ。だからな、その、お前が好きな人との事は応援するよ。けど、上手く行かなかったり、上手く行っても少しでもみさを悲しませたりするような事があったら、容赦しないよ」


 照れながら言ってるお兄ちゃん、いつも私の事を一番に考えてくれる。やっぱり、そんなお兄ちゃんが、私は大好き。


「お兄ちゃん、ありがとう。大好きっ」


 と、思わず抱きつく。


「いや、だから、みさ、分かってるのか? 俺は……」


 言われて、ハッとする。


「ごめんなさい。つい……」


「ったく。しょうがないな」


 わしゃわしゃと、私の頭を撫でる。


「後ね、お兄ちゃん、お父さんとお母さんに話を聞きたいの。一緒に行ってくれる?」


「ああ。行こう」


 私とお兄ちゃんは、両親の部屋の扉を叩いた。













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