第6話*真実を知りたい

 辺りはもうすっかり真っ暗。 足取りは重かったが、家へと向かう。


 家の近くに来ると、家の前に人影が。 良く見ると、両親とお兄ちゃんだった。


「みさ! 一体どこに行っていたの? 心配したのよ?」


 お母さんが駆け寄って来て、私を抱き締める。お母さんの目には涙の痕が。


「お母さん、ごめんなさい……」


 そう言うのが精一杯だった。そんな私にお母さんは怒りながらも、優しく言う。


「良いのよ。でも、約束して? 今度からは、連絡も無しに出て行かないで。本当に心配だから。ね? さぁ、もう家に入りなさい。今日はお兄ちゃんの誕生日よ。お祝いしましょう」


 聞いてしまった話が本当なら、私は養子で血が繋がっていないのに……お母さんは、いつもと変わらないし……お父さんとお兄ちゃんは何だか気まずそうな顔はしてるけど、誰も何も言わない。


 もしかして、聞かれてないと、思ってる……? それとも、無かったことにしようとしてる?


 *


「お誕生日おめでとう!」


 お兄ちゃんの誕生日パーティーが始まった。


「みさ、プレゼントありがとう。部屋の前に置いてたから受け取ったよ」


 と、お兄ちゃんが見せたのは確かに、私があげようとしたプレゼントだ。あの話を聞いた時、部屋の前に……


「気に入ってくれて良かった。本当は手渡ししようと思ってたんだけど、あの時……」


 言おうとしたけど、止めた。今は、誕生日を祝ってる。こんな時に話すことじゃないよね。少しまだモヤッとするけど、また後にしよう。


 夕食を食べて部屋に戻る。


 お兄ちゃん、嬉しそうだったな。でも、これからどうしよう……


 モヤモヤ考えても仕方がない。お父さんに聞く? それともお母さん? いや、お兄ちゃんにしよう……


 コンコンとお兄ちゃんの部屋のドアを叩く。


「はい」


 部屋の中からお兄ちゃんの声がする。まだ、どう切り出して良いか分からないけれど、聞いてみる。


「………………お兄ちゃん? 私、聞きたいことあるんだけど、ちょっと良い?」


「みさ? どうした? 入っておいで」


 お兄ちゃんは、部屋で本を読んでいたみたい。本を閉じて、私を招き入れる。


「お兄ちゃん、あのね、私……」


 言いかけたところで、お兄ちゃんが先に話し出す。


「あ。みさ、プレゼントありがとうな。部屋の前に置いてたのを見た時はビックリしたけど、メッセージカードも嬉しかった。いつもありがとうな」


 私がプレゼントした置時計が、机の上に飾られている。


「うん、本当は手渡ししたかったんだけど……とね、お兄ちゃんの部屋の前に行った時、お父さんとお兄ちゃんが話しているのを聞いちゃって……」


 そこまで言って、言葉が出てこなくなった。これ以上言うのも怖い。


「…………」


 お兄ちゃんも困ってるみたい。暫く沈黙が続く。けど、沈黙も辛い。覚悟を決めて話すことにした。


「お兄ちゃん、昼間、お父さんが話していた事は本当なの? 私が養子だっていう話……」


 お兄ちゃんは凄く言いにくそうな顔をしてる。 私が辛そうな顔してるからかな。話しにくいよね。無理に笑って見せる。すると、お兄ちゃんもゆっくり話し出した。


「そうだよ……みさは、俺たち家族と血が繋がっていない。っと……ごめんな、俺が話しにくいと思ったんだよな。もう、無理に笑わなくて良いよ。あんな話聞いて辛いはずだし。俺も今、どう伝えたら良いか分からなくなってる……ごめん」


お兄ちゃんも、凄く気まずそう……

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