第4話*再会

 家に居たくない。


 家を飛び出してしまった私は、気が付くと、あの公園に来てしまっていた。


「また、ここに来ちゃった……」


 呟きながら、公園のベンチに座る。


 私が……養子だったなんて……それに……お兄ちゃんが私を……?


 頭の中はぐちゃぐちゃだ……


 不意に涙が出てくる。どうしよう……止まらない……泣きたくなんてないのに……もう、どうしたら……


 溢れ出てくる涙を止められずにいると、声をかけられた。


「どうしたのですか? 大丈夫……?」


 声にハッとし、顔を上げるとそこには、見知らぬ男性が立っていた。男性は心配そうに私を見ている。


 誰……? 良く見ると、俳優さんみたいに長身で格好良い……い、いや、私ったら何を考えて……


「あ……え、えと、大丈夫です。お気になさらないで下さい」


 何だか恥ずかしくなり、慌てて持っていたハンカチで涙を拭き、立ち上がる。しかし、急に立ったせいなのか、ふらついて倒れそうになった。


「危ない!」


 倒れると思った時、男性の焦る声が聞こえ、気が付くと目の前に居た男性に支えられていた。


 え?


 驚いて顔を上げると、


「あ。と、ごめん。倒れそうだったから咄嗟に……急に触られて嫌だったよな」


 私の身体から手をぱっと離して気まずそうにしている。


「い、いえ、こちらこそ……すいません……ありがとうございます……」


 何だか恥ずかしくなり、とりあえず平静を装うとベンチに座り直すと、男性も私の横に座ってきた。


 え? 何? この人……なんで隣に? 親切そうに見えたけど、もしかしてナンパとか……?


「えと……まだ、何か?」


 私は男性と少しずつ距離を取る。すると、男性は私の顔を真剣な顔で見つめ、ゆっくり話し出した。


「ごめん、急に横に座ったら警戒するよな? こんな状況だし、どう切り出したら良いか分からないんだけど、決して怪しい者ではないよ。俺……は、みさ、ずっと君を探していたんだ」


 え? 私を探していた? ずっと? いや、そもそも何で……名前まで知ってるの? 怖い……怪しくないって言ってるけど怪しいよ……


 更に男性と少しずつ距離を取りながら聞いてみる。


「あの、探していたってどういうことですか? 私……の事、何で知ってるの?」


「……何だか、余計に警戒させてしまったみたいだな。こう言ったら分かるかな? 君のそのペンダントの石なんだけれど」


 ペンダントの石ってこれ、だよね? 何でこの人これの事を……


 不思議に思いながらペンダントの石を男性に見せる。


「この、石の事ですか?」


「そう、その石。それは、以前俺が君に渡した物なんだ」


 ……

 ……

 ……ちょっと待って。今、この人、この石を渡したって言った?

 ……

 ……


 驚いて、暫くの間何も答えられずにいると、男性がまたゆっくりと話し出した。


「ごめん、驚くのも無理はないよな。信じられないかもしれないけれど、事実なんだ」


「ちょっ……ちょっと待って下さい。私は確かに小学生の時、ある男の子からこの石をもら……渡されました。それからはお守りとして大切に持っています。ただ、男の子はあなたの様な黒髪ではなく、白金髪だったと思うのですが……」


 すると、男性はニコッと微笑み指をパチンと鳴らす。その瞬間、さっきまで黒色だった髪はキラキラと輝く白金髪になった。


「これで、信じてもらえる……かな?」


 私は目の前で急に起きた出来事に、驚いて固まってしまい、また暫くの間動けなくなってしまった――

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