第30話 襲撃①
球技大会が終わると平穏な日常が戻って来る。
俺たちのクラスは詩達に勝ち、学年一位に輝いた。
つまり、麗蘭、風夏はTOP6の座を維持し、詩は降格となった。
新たなTOP6は梨依奈先輩、麗蘭、風夏、歌恋、ましろ、凛。
一年生がTOP6に3人名を連ねるのは学校始まって以来の快挙らしい。
「にしても球技大会は俺が足引っ張っちまったな。」
麗蘭の胸で泣き叫んでからは全て負けた。
自信という武器が失われたことで俺の装備はなくなったのだ。
「椎名、さっきから何、ボケっと景色見てんだ
そんなに俺の授業はつまらんか」
「すんません」
ハゲの授業は本当につまらない。
オリジナリティの欠片もない教科書を読むだけの授業。
ウチの美人な担任、奈々ちゃんを見習ってほしいくらいだ。
奈々ちゃんの授業は本当に面白い。
俺はハゲに視線を合わせ、会釈した。
「次外見たら廊下だからな」
「はい」
何年前の怒り方だ、ハゲ。
「遥くん、まだ気にしてるの?」
「まぁ、ちょっとな。」
心配そうな麗蘭。
麗蘭にも悪いことをした。
折角野球で全体一位を取れる位置にいたのに俺がエラーをしてしまった。
「頑張ろ」
「あぁ」
満面の笑みを向けてくれる麗蘭。
俺は作り笑顔を向けた。
おそらく麗蘭にはバレている。
「どうすりゃいいんだよ」
もうあと何秒かでチャイムが鳴る。
俺は景色を見て、考える。
どうすれば、完全に怪我する前に戻れるんだろうか。
「昼休みだね、行こっか」
「あぁ」
チャイムが鳴り、俺、麗蘭、風夏は食堂へ。
────────────────────
「なぁ、詩様の位置がなんで一年に奪われるんだ?
それも椎名の妹に」
「あの女、そんな可愛くもないだろ」
「それな」
詩の元親衛隊は階段に座り込み、愚痴を溢す。
TOP6の座を奪われれば親衛隊も解散となってしまう。
それが海城TOP6の暗黙のルールだ。
「そうだ、ちょっとビビらせて、自分から降りてもらおうぜ」
「暴力はやばくね?」
「バカ、ビビらせる程度だよ。」
「ならいいな」
ニヤつく3人は凛の元へ歩き出す。
「凛ちゃん、俺ら兄ちゃんの友達なんだけど、ちょっと凛ちゃんに用があるんだ。
来てくれない?」
「ご飯食べてるから後でもいいですか〜?」
凛は首を傾げる。
「いいわけねぇだろ、来い」
「は、はい!」
凛は身体を震わせ、立ち上がった。
一緒にいた親衛隊も同じように恐怖し、その場に止まる。
「あれ?凛は?」
「お兄さん、それが黒羽先輩の親衛隊の方に連れて行かれちゃって」
「ありがとう、怖かったよな、心配すんな」
凛が連れて行かれてから数分後、食べ終えた遥斗が来ると親衛隊の面々は出口を指差す。
遥斗は親衛隊の1人の頭をポンポンと叩き、出口へ走る。
────────────────────
「凛はどこ行った?」
「えっと、さっき屋上に歩いて行きました」
TOP6は嫌でも目立つ。
ーー屋上か、ビビりなカスどもが。
「はい、ビンゴ」
「ウラァ!」
俺は事故にあってない方の足でドアを蹴り破った。
「凛!は...?」
屋上の片隅に凛は座っていた、衣服は乱れ、頭を抱えながら震えている。
「いや!もう降りるから許して!」
カッターの歯を出し、俺に向ける凛は本当に少しずつ後退する。
「凛、俺だ、にぃにだよ。大丈夫、もうあいつらいないから」
「にぃに?」
凛はカッターを置き、俺に視線を合わせる。
「にぃに〜」
凛はワンワン泣く。
俺はギュッと抱きしめる。
「凛、どした?」
「TOP6降りなきゃ、レイプするぞって言われて、ブラウスの中に無理矢理手入れられた。
おっぱい揉まれた。
それで怖くて、おしっこ漏らしちゃって、下、全部ビチョビチョなんだけど、そのまま手にペン持たされて、なんか書かされた。
TOP6を降りますって。」
大泣きでされたことを話す凛。
凛のお尻を触ると本当にビチョビチョだ。
「気が済むまで抱きしめてやる。」
「うん」
俺はギュッと抱きしめ背中を撫でる。
凛は小さく頷いた。
俺は姉貴に電話する。
「ごめん、また出ちゃった」
「いいよ」
安心したんだろうか。
凛の股から音がする。
俺の制服もびしょびしょだ。
「麗蘭、俺のジャージくれ、風夏は風夏のジャージ」
「わかった」
「先輩、ありがと」
「よく頑張った偉いぞ」
「麗蘭先輩、TOP6って怖い、やだよ、私」
2人は電話を切ると走って持ってきてくれた。
凛は風夏に着替えさせてもらいながら麗蘭に抱きつく。
麗蘭はずっと微笑み、凛の頭を撫でる。
「ありがと、風夏先輩」
「お礼なんていいよ。
怖い思いしたんだからされるがままでいい」
「うん」
凛の股をティッシュで拭いて上げ、パンツを履かす風夏。
凛の涙は今だに止まらない。
「遥くん、したのは誰かわかってるの?」
「詩の親衛隊らしい」
「腹いせか、ほんとくだらない」
「全くな。」
TOP6交代後のいざこざは過去にもあるらしいがここまでのモノは初らしい。
「あれ、凛、ブラは?」
見てすぐわかるほどに立った乳首。
「したくないって、だから抱っこしてあげて」
「凛、来い」
「ありがと、にぃに」
「お気に入りだったのに」
「ねぇねに新しいの買ってもらお」
俺は抱っこし、隠す。
ブラは捨てるようだ。
また泣き出す凛。
「ねぇね」
「凛ちゃん、大丈夫なの!?」
「凛ちゃん、ママもいるよ」
「うわーん!!明日から学校行かない〜」
姉貴とおふくろに抱きつくと凛はまた泣き叫ぶ。
「学校なんてどうだっていい、凛ちゃんの心が大切だよ」
「そうよ、凛、大丈夫になるまで家いよう」
姉貴とお袋はギュッと抱きしめる。
「ねぇね、ねぇねに買ってもらったブラ捨てることになっちゃったから新しいの買ってくれる?」
「全然いいよ、いくらでも買ってあげる」
姉貴も涙を流す。
凛の叫びは更に大きくなる。
「遥斗、ママも行くわ。案内しなさい」
「俺だけでいい」
「頼んだわよ」
久しぶりに見たお袋の鋭い眼差し。
俺は手で制し、ゴミどもがいる三年の教室へ。
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