第28話 球技大会14

バスケは身長ゲーだ。

身長が低くても勝てるのは余程突き抜けた才能があるやつだけ。

そんなどこかの誰かが言っていた言葉を俺は今痛感している。

俺の身長は180cmと一般社会では高い部類だがバスケ選手としては普通どころか小さい部類になってしまう。

特にウチのような強豪校になると190は控えでもいるし、レギュラーには2メートルなんてやつもいる。


「クソ...」


頼みの綱だった風夏が抜かれ、また点を入れられる。

風夏は膝に手を当て、ニヤつく詩を睨む。

スコアは28ー38。

残り時間は少ない。


「頑張れ、遥斗!諦めるな!」


姉貴の檄が飛ぶ。

そうだ、諦めなきゃどうにかなる。


「風夏に頼るな、俺が決める」


俺は風夏からパスを受け、相手ゴールを目指す。

俺が主役になればいい。

そうすりゃ勝てる。


「ダンクが無理なら高弾道スリーだ。」


ゴール前はバスケ部のレギュラーが固める。

だが、それ以外は俺と同じ素人だ。

なら、近づかなきゃいい。

俺はシュートを打った。


「やべぇ!」

「わぉ!」

「俺によこせ!

勝ってやる!

31ー38、行けんぞ!」


俺の放ったシュートは突き刺さった。

歓声が上がる。

俺は拳を突き上げ、雄叫びを上げた。


「待ってたぜ、筋肉バカコンビ」

「あぁん?」


スティールで奪った俺はわざと俺のマークについたバスケ部二人を挑発した。

このバカどもは二年でも不良だ。

当然、挑発に乗ってくる。

俺の思う壺だと知らずにな。

ほら、かかった。


「なぁ、俺に二人がかりするとか、戦術面で欠陥あんじゃね?

こうなんぜ?」

「行け、風夏!」


俺は走るエースにパスを出した。


「天才かよ」


風夏は女子のレベルを遥かに超えたスピードでディフェンスを抜き、シュートを決めた。

33ー38

あと6点。


「チッ!黒羽!」

「ぬるい」


試合再開。

バスケ部Aは詩に出した。

だが、どうしても女子故に加減する。

その隙をエースが見落とす訳ない。

風夏はカットし、そのままゴールへ走る。


「大人しくしてろ、一之瀬、男には勝てねぇよ」

「勝負するつもりないし」

「は?」


風夏はバスケの試合中、常に冷静だ。

そんなやつが後ろにいる麗蘭に気付いてないはずがない。


「ごちそうさま、平野くん」


麗蘭は華麗な動きでスリーを打った。

ボールはリングに向かって飛んでいく。


「ッシャー!」


勇ましい雄叫びが響き渡る。

36ー38


「あと2分だ!死んでも取られんな!」

「焦りは禁物だぜ」

「は?」

「同点なんてケチなことは言わねぇ」


俺は筋肉バカからスティールで奪い、風夏の動きをトレースし、ディフェンスを二人抜いた。


「やらせるか。」

「打たねぇよ、ばーか。」


俺はマークが外れたエースにパスを出した。


「最高」

「ブザービーター、流石だぜ、エース」


当然、エースは外さない。

ホイッスルが鳴ったと同時にボールがゴールに突き刺さった。

39ー38。

俺たちの勝利。


「つっよ」

「ありがとう、エース」


詩が膝に手をつき呟く。

俺は風夏を抱きしめた。


「次は野球、頼んだよ、エース」

「あぁ」


俺たちはギュッと抱きしめ合う。

さぁ、次は俺の時間だ。









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