第26話 球技大会12

「はぁはぁ」


サッカーの学年別決勝は汐恩を持ってしても負けていた。

風夏と麗蘭の息が上がる。

当然だ、ウチのサッカー部は全国常連の常勝軍団なのだから。

加えて、今年は二年に逸材が揃っており、その中でもDF4人とMF、汐恩がプロ行きを決めている。

女子についていける次元じゃない。


「あと何分?」

「10分

でも、諦めんな。

全力で走らなくていい。

俺の背中だけ見て、マイペースでついてこい」


俺は麗蘭の腰を摩り、ゆっくりと伝えた。

麗蘭は頷き、汗を拭う。

点差は1ー0、防御力が高すぎる。

汐恩と先輩がいない分攻撃力がないのがせめてもの救いか。


「汐恩、俺を使ったら抜けるか?」

「お前使えばなんとかな。でも、フィニッシャーがいない。

麗蘭はあの通りだし、風夏も限界だ」

「いや、麗蘭はシュートだけならいける。

来るまで粘ればいい、俺とお前が」

「オッケー」


フィニッシャーは麗蘭。

俺は汐恩とグータッチを交わす。


「麗蘭、来い」


麗蘭は俺の指示に従い、前に来る。


「遥斗!」

「オッケー!」


俺は汐恩からパスを受け取り、上がって行く。


「椎名、お前はすげぇがすげぇ止まりだ。」

「黙れ」


すげぇ止まりだ?

ざけんなよ、俺は世代No.1だぞ


「!?」

「汐恩!」


俺は汐恩の動きをトレースし、完璧にコピーした。

俺は昔からコピーが得意だった。

すげぇやつからコピーして、オリジナルにするのが俺の王道だ。


「ナイス」


汐恩はDF二人を抜き去り、俺のパスを受けた。


「お前とは勝負しねぇよ、知ってんだろ?俺のパス精度の高さは。」

「ナイス汐恩」

「麗蘭はまだ来てねぇか」

「なら、撃ち抜くぜ」


最後のDFを目の前にした汐恩は高精度のパスを俺の足元に出した。

俺は受け取り、そのまま足を振り切った。


「ッシャー!」

「ナイス、遥斗!」

「やったね、遥くん」

「逆転すんぞ!」


ゴール!

俺はガッツポーズし、汐恩、麗蘭と抱き合う。

これで同点。


「さっせかよ、」

「チッ」


汐恩に止められたMFがボールを戻す。


「そんなぬるいパスで通るわけないっしょ!」

「ナイス!俺だ!」


パスカットする風夏。

俺は叫び、ボールを要求する。


「遥斗!」

「ナイス」


ナイスすぎるぜ、風夏。

俺は上がって行く。


「汐恩!」

「ワンツー!」

「オッケー」


俺と汐恩はワンツーでDFを翻弄し、麗蘭を確認しながら走る。


「決めろ、フィニッシャー」


俺はトンと麗蘭に軽いパスを出した。


「行けぇぇぇ!」


麗蘭は思い切り足を振り抜いた。


「麗蘭、信じてた。ありがとう」

「どういたしまして」


逆転成功と同時にホイッスルが鳴る。

俺は麗蘭のおでこにキスをした。

麗蘭は頬を赤く染め、微笑む。


────────────────────


「ありがとう、大好きだよ」


トイレで着替える私はユニフォームを抱きしめ、満面の笑みを浮かべた。

今度は私があげよう、口に。

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