第18話 球技大会④

「困ったわね...」


球技大会前日、テニスに出場する事になっている私はペアを組んだ佐藤君が練習中に怪我をした事でペアを組む人を考えていた。

私に合わせられるだけの実力がある人。

ダメね、いないわ。

ウチのクラスにはテニス部がいないし、中学で経験した人もいない。


「他学年かな」


ルールにはクラス内から選ばなくてはならないとは書いてない。

なら、他学年から選ぶしかない。

負けるくらいなら半分の点数でも勝つ方がクラスのためだ。


「椎名くんとかどう?相良」

「それよ!」


怪我は問題ないと風夏から聞いた。

私は立ち上がり、駆け足で教室を出た。


「いたいた」


私は普段あまり学食を利用しないが椎名くんは常連。

私は彼の座るテーブルに近づく。


「椎名くん、少しいいかしら」

「はい、どうしました?」


肩を軽く叩くと彼は優しい表情で振り返る。


「明日から球技大会、私とペアを組んで貰えないかしら。

ペアを組んでいた子が怪我をしてしまって、椎名くんしか頼れる人がいないの。」

「点数も貰えるし、俺、テニスならある程度出来るので問題ないですよ」

「ありがとう、助かるわ」

「どういたしまして」


彼は微笑み、了承してくれた。

私は微笑み、握手を求める。

彼は軽く握り返す。

そして、私たちは連絡先を交換した。


「椎名くんの連絡先ゲット、やった♪」

「ご機嫌だね、相良」

「そうね、ご機嫌よ」

「よかったね」

「ええ」


昼休みももうすぐ終わり。

私はクラスへ帰る道中で小さくガッツポーズした。

そんな私を見た同級生がクスッと笑う。

ーーこの球技大会で椎名くんともっとお近づきになるわ!


────────────────────


「椎名ぁ、相良先輩まで手に入れるのか?」

「ちげーよ」


からかってくる上原。

俺はニヤけながら返す。


「お近づきになったら近況報告よろしくな」

「あぁ」


明日が楽しみだ。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る