第15話 球技大会① プロローグ

昼休み前、最後の授業で俺たちは明後日に行われる球技大会の種目決めをした。

俺は麗蘭、風夏と共に野球、バスケ、サッカーに出ることになった。


「遥斗、ホントに足大丈夫なの?」

「ガチでやらなければな」

「なら良かった」


風夏の問いに答えると隣で唐揚げを食べていた麗蘭が嬉しそうにする。


「怪我してから初めてマウンド上がるんだよな」


事故で負傷し、手術してから日常生活や軽い運動程度なら問題なくこなせるようになったが野球だけはやっていなかった。

トラウマみたいなものがあるわけじゃない。

ただ、俺の思う通りに投げられない可能性があることが怖かった。


「捕れる?」

「150km/hは出ないだろうから捕れると思う。」


捕手は麗蘭が務める。

今の俺は何km/h出せるんだろうか。


「食べ終わったらグラウンドで投げてみっか」

「うん!」


ラーメンを啜った俺は麗蘭に提案した。

麗蘭は頷き、微笑む。

そして、俺たちはグラウンドへ。


「ふぅ」


麗蘭の構えは何度も見ていたがマウンドから見るのは一味違うな。

投手を安心させる何かがある。


「ストレート」


俺は握りを見せ、呼吸を整える。


「この感じ、久々」


足を振り上げ、投球モーションに入るこの感覚は事故前とさほど変わらない。


「Return of the King」


踏み込みも変わらない、行ける。

そう確信した。


「ウラァ!」


腕を思い切り振り切ると投げ込んだボールは麗蘭のミットに向かって行く。


────────────────────


「ナイスボール」


当然150km/hなんて、出ていないけど、遥君のボールは凄い良い球だった。


「もう一球!」

「遥君、ここから頑張ればまた160km/h出せるよ」


返球した私は満面の笑みで構える。

去年の夏の甲子園決勝、遥君は160km/hを投げ込んだ。

本当に凄かった。


「ナイスボール!」


初球より、威力のある真っ直ぐ。

ガンがないからわからないけど、おそらく140km/hは出ている。

これが私の好きになった人の才能と実力!


「早いってば」

「ラスト、カーブ」


予鈴が鳴ってしまった。

私は興奮しながら返球し、構え、サインを出した。

遥君は頷き、振りかぶる。


────────────────────


「優勝しようぜ、麗蘭」


俺は思い切り腕を振り切り、呟く。

負けたくねぇ。


「ナイスボール」

「ナイスキャッチ」


かなり変化量のあるカーブを捕球した麗蘭。

俺はニヤける。

麗蘭が捕手なら安心して投げれる。


「勝とうね!」

「あぁ!」


俺と麗蘭は強くハイタッチを交わす。

優勝への誓いとして。


────────────────────


「凄いね、ホント」

「バスケもダンクとか全然出来るよね」


風夏は二人を見ながら微笑み、バスケで遥斗とアオハルすることを誓った。

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