第13話 入部
「KING〜!!」
校門を潜ると元気よく手を振る詩。
こう見ると氷姫なんて異名があるなんて到底思えないな。
「黒羽さん」
「何」
「いや、元気かなぁと」
「元気だけどそれが?」
三年生の男子が話しかけると氷姫のスキル絶対零度が発動する。
「素晴らしいです!」
「うざ、消えろ」
「はい!消えます!」
だが、この絶対零度というスキルはドMにとっては効果なし。
むしろご褒美らしい。
現に話しかけた三年の男子はめちゃくちゃ喜んでいる。
「黒羽さん怖いね、相変わらず」
苦笑いの麗蘭。
詩は俺以外に対し、ツン率98%、デレ率2%だが俺に対してはデレ率100%だからな。
「詩さん」
「相良先輩と親衛隊の皆さん、おはようございます」
「おはよう」
相良先輩には梨依奈様親衛隊と呼ばれる親衛隊が入学した頃から出来ていたらしく、相良先輩と話すために会員になる奴もいるらしい。
ちなみにTOP6にはそれぞれ名前が違う親衛隊がいて、日々親衛隊同士競い合っている。
「歌恋ちゃん!鞄持つよ」
「いいよ、これから練習だし」
「わかった」
歌恋は親衛隊の隊員と話す。
ちなみに歌恋の親衛隊は一年生の女子が多く所属していて、TEAMカレンチャンと呼ばれている。
「黒羽さん、おはよ」
「フン」
「あはは、相変わらずだね」
風夏の挨拶に対し、プイッと顔を逸らす詩。
風夏は苦笑いを浮かべる。
なんでかは知らないが詩は風夏のことが嫌いだ。
「おいこら、あの態度なんとかしろって言ったよな、氷姫親衛隊」
「そっちが話しかけて来たから詩様の機嫌が悪くなったんだ、そっちの姫さんが悪い」
「なんだと!」
「やるか?」
「上等だ!」
風夏と詩の親衛隊が殴り合いを始める。
ちなみに両者共に姫、風夏様、詩様と呼ばれている。
「また始まった」
「だる」
苦笑いの風夏とだるそうにため息を吐く詩。
「おはよ、詩」
「おはよ、KING♡」
抱きつき、猫のようにスリスリする詩。
「椎名、お前詩様とどんな関係なんだ」
「ただの友達」
そんな詩を見て、詰め寄って来る三年生の親衛隊隊長。
この人が一番ドMなんだろうな。
「ただの友達で抱きつかれるわけあるか!」
「だからなんだ、黙れ、失せろ。」
隊長が吠えると詩は猛獣のように鋭く睨む。
「はい!」
隊長は嬉しそうに足取り軽く逃げて行った。
わざとだな。
「KING、入部届書いたの、一緒に出しに行こ」
「あぁ」
詩は俺の右腕に抱きつき、寮を指差す。
「渡さない」
「譲れ」
「やだ」
左腕に抱きつく歌恋が詩を睨むと親衛隊も詩を睨む。
「おぉ、抱きつかれていいな」
「朝から疲れまくりですよ」
ベンチに座り、下品に笑う氷室。
俺は苦笑いを向けた。
「九条はどうした?」
「はーい」
詩の横から顔を出した麗蘭。
「なんだ、場所取りに遅れたのか」
「ち、違います!」
「隠すな隠すな、恋するのが青春ってもんだ。」
「むぅ」
ニヤつく氷室は顔を真っ赤にする麗蘭をからかう。
麗蘭は頬を膨らませ、スクールバッグを地面に置く。
「入部届です」
「戦力になれ、黒羽。」
「はい」
氷室と握手を交わした詩。
氷室の言う通り、詩の活躍次第でチームの運命が変わる。
「椎名、これで戦力は整った。
優勝へ突き進むぞ」
「はい」
着替えに向かった麗蘭達。
俺と氷室は誰もいないグラウンドを見ながら話す。
コーチになったからには勝つのが仕事だ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます