第11話 お泊まり③

「土曜日の先発、誰かな?

遥斗、聞いてたりする?」

「浅倉」


土曜の練習試合の相手は強豪紅海大甲府。

今夏、氷室が掲げる理想は既にエースに一番近い活躍をしている歌恋を看板とし、去年の夏大でエースとして、投げた三年の櫻井、歌恋と同じくエース候補の浅倉でエースの歌恋を支えることだろう。

加えて、この理想が叶えば、海城は夏5連覇を達成し、女子高校野球の歴史に強烈なインパクトを残すことが出来る。

非の打ち所がない完璧なシナリオだな。


「ましろんかぁ。

氷室っち、やっぱり今年は投手強化したいみたいだね。」


俺の机に備えつけの椅子に座り、回転する歌恋は天井にボールを投げる。


「お世辞にも良いとは言えなかったからね、去年」


苦笑いを浮かべる麗蘭。

麗蘭の言う通り、去年の海城は投手層が薄かった。

エースの櫻井は言っちゃ悪いが消去法でエースになったにすぎない。


「極薄投手層を歌恋、浅倉で補ったから麗蘭達野手陣には去年以上を求めるだろうな、氷室は」


今日もそうだが、ここ最近氷室はかなり2、3年の投手陣に苦言を呈している。

投手コーチとしては2、3年は本当に頭痛の種だ。


「先輩達は戦う顔をしていない!」

「強制送還されないように気をつけろよ、麗蘭」

「されないんですけど」


俺と歌恋はニヤけ、麗蘭の頭を撫でる。

麗蘭はムッとする。

ちょっと可愛い。


「誰か投手いないかなぁ、絶対的クローザー」

「富士川みたいな?」

「そうそう」

「やらかい」

「怒るよ」

「はーい」


俺のベッドに寝転がった麗蘭の横に寝転がり、パイタッチする歌恋。

麗蘭は手で払う。

俺は苦笑いを浮かべながら空いた備えつけの椅子に腰を下ろす。

そんな投手がいたらスカウトしてみたいもんだ。


「あ、黒羽さんは?確か中学時代ピッチャーやってたよね?」

「TOP6の氷姫だよね?」

「そうそう、遥くんのことKINGって呼んでる子」

「スカウトチャンス!」

「お願い遥くん!」


目を輝かせる歌恋と麗蘭。

詩かぁ、大丈夫だろうか。


「覚悟しろよ、二人とも」

「?」


俺は苦笑いを向け、スマホを手に取る。

二人は首を傾げる。



────────────────────


「KING!こんばんは!」


アタシが狂信するほど、惚れ込んだ投手のKING。

アタシは声を踊らせる。


「詩、今、俺女子野球部のコーチやってるの知ってるよな」

「うん!」


KINGのことはなんだって知ってる。

アタシはこの人を死ぬまで追いかけるんだ。


「来い、お前の力が必要だ。

マネやってた頃から俺とキャッチボールしたりしてたろ」

「よろしくね!」


またKINGと野球が出来る。

最高、最高すぎる。


「じゃあ、明日学校で」

「ありがとう!」


アタシは満面の笑みで声を踊らせ、電話を切った。

そして、グローブを嵌め、庭のマウンドに立つ。


「見て、KING、これがアタシ、黒羽詩っていう作品。

アタシが最強だよ」


アタシは左のサイドスロー。

最高の感触で放たれたボールは的を射抜き、最高の音を奏でた。

球速は138km/h。


「KING、KINGのためなら何球でも何百球でも投げるからね。」


久しぶりに投げると本当に楽しい。

中学時代の感覚が蘇る。


────────────────────


「俺もKINGだけど、詩はもっとKINGなんだよな。性格が。」


俺のベッドで寝息を立てる麗蘭と歌恋を見ながら俺は少し後悔する。

明日からはもっと大変そうだ。


プロフィール

黒羽詩

1.誕生日、星座、血液型、出身

12月8日生まれ、いて座、B型、東京出身

2.クラス

2ー1

3.性格、容姿

遥斗のことをKINGと呼び慕う同級生でTOP6きってのツンデレ。

遥斗以外には絶対にデレないため、別名氷姫と呼ばれている。

4.身長体重

161cm、49kg

スリーサイズ

83/65/80

5.部活

帰宅部(元は野球部マネジャー)

6.趣味

KINGのやること全部

7.好きなもの

KING、KINGの好きなもの

8.苦手な物

KINGの嫌いなもの

9.好きな食べ物

KINGの好きな食べ物

10.嫌いな食べ物

KINGの嫌いな食べ物




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