第7話 幼馴染はちょろイン

「歌恋、ただいま」


麗蘭とのデートから帰ってきた俺は歌恋と家族に買ってきたお土産を渡すため、歌恋の部屋をノックした。


「いないのか?」


返事はない。

いつもならテンション高く開けるくせに。


「歌恋、お土産買ってきたぞ」


俺は少し強く叩いた。


「何」


ドアを開けた歌恋はムスッとした表情を向けて来る。

首にはヘッドホンをかけている。

どうやら音楽を聞いていたようだ。


「ごめん、お土産買ってきたから一緒に食おうと思って。」


俺は苦笑いを向け、後頭部を掻く。


「食べる」


歌恋はムスッとしながらも頷き、ヘッドホンをベッドへ投げた。

どうやら麗蘭が選んでくれた今流行りのお土産は歌恋も気になっていたようだ。

流石は麗蘭。

インスタの動向を日々チェックし、取り入れているだけはある。

本当に助かった。

不機嫌歌恋は昔から怖いからな。


「凛〜、甘いの食べるぞー」


階段へ行く前にある凛の部屋のドア。

俺は軽くノックした。


「ちょうど欲しかったの!ナイスにぃに!」


テンション爆上げの凛は勢いよく俺に抱きついて来る。

口にはクリームがついている。

部屋で何か食べていたんだろうな。


「もう食べたんじゃないのか?」

「食べ終わったとこ」


凛は口についたクリームを舐めとった。

可愛い。


「ただいま〜、ママ〜、ご飯〜」


階段を降りた瞬間、玄関の方から疲れ切った姉貴の声が聞こえてくる。

姉貴が食べる分も十分にある。

声をかけるとしよう。


「まだ」

「えぇ...」

「姉貴、これ食わね、俺らと」


おふくろの苦笑いに絶望する姉貴。

俺はお土産を見せた。


「遥くん!

ホントに遥くんは完璧な弟だ!

お姉ちゃん、ほんとに嬉しいよ!」

「はいはい」


目を輝かせ、抱き付いて来た姉貴。

俺はお土産を凛に渡し、姉貴をキャッチし、苦笑いを浮かべる。

遥くんと呼ばれたのは小学校低学年以来だ。


「わぁ、美味しそう〜」

「綺麗だね」


テーブルにお土産を置き、封を開けると凛と姉貴のテンションが更に上がる。

実物を見ると人気の理由がわかるな。

本当に綺麗だ。

俺たちは写真を撮る。


「麗蘭が教えてくれた。インスタで流行ってるんだ〜って。」

「へぇ」


写真を撮った歌恋は何故かムスッとする。


「歌恋、歌恋、あーん」


俺は生クリームをたっぷりつけ、リトル時代のようにあーんをした。

生クリーム大好きな歌恋のことだ。

嫌でもテンションを上げてくれるだろう。


「美味いか?」


歌恋は受け入れ、頬を赤く染めながら俺から顔を背ける。


────────────────────


「美味しい、好き」


先輩が好きなんでしょ!?

なんで優しくするの!?

こんなの私のことも好きなんだと思っちゃうじゃん!


「そっか、良かった。

いや、麗蘭が勧めたのは本当なんだけど、俺悩んだんだよ。

歌恋と凛の好みは麗蘭が選んだ方じゃなかったからさ。

だから、俺がこっちにした。

気に入ってくれたか?」


そうだったんだ。

先輩が選んだんじゃなくて、遥斗が選んだお土産なんだ。

じゃあ、今日のデートもホントのデートじゃないのかな?


「うん!」


私は満面の笑みを向けた。

信じることにした。

今日のデートはホントのデートじゃない、ホントのデートは今度私とするデートだって。


「良かった」


遥斗は笑い返してくれた。

ありがとう、遥斗。


────────────────────


「歌恋も機嫌直して、楽しそうにしてたし、麗蘭も楽しそうだった。

今日は良い一日だな。」


俺は就寝前ボソッと呟き、目を瞑った。

明日はどんなことが待っているんだろうか。







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