第6話 麗蘭と遥斗、ドッキドッキ初デート〜RESTART〜
麗蘭と約束したオフ日、俺は麗蘭と二人きりで池袋の水族館にいた。
「綺麗」
南国の綺麗な魚達が泳ぐ水槽を見る麗蘭。
今日の麗蘭のコーディネートは伊達メガネにパーカー、ミニスカート。
加えて、ヘアスタイルは俺の好きなポニテ。
俺には目の前を泳ぐ綺麗な魚より麗蘭の方がずっと美しく見える。
その証拠に周りの客がすれ違い様に麗蘭を見て、「可愛い」、「誰だろ、芸能人?」、「インスタで有名だったりして」と呟く。
流石はTOP6。
美しさは一般人を軽く凌駕している。
「麗蘭も負けず劣らず綺麗だぜ」
俺は麗蘭の肩に軽く手を乗せ、囁いた。
ナンパでもされたら大変だ。
ここは俺が守らなくては。
男として。
「ありがとう」
「ど、どういたしまして!」
満面の笑みを向けて来る麗蘭。
俺は思わず、視線を外してしまった。
この世のものとは思えない可愛さだった。
ーー私服でこの笑顔、マジやべぇ
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「遥斗〜」
「歌恋ちゃん、あんまり見るとバレちゃうよ〜」
「だってぇ」
遥斗をつけてきた歌恋とましろ。
ましろは歌恋に乗られながら苦笑いを浮かべる。
ーー重い
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「遥くん、手繋ご」
ここまでは小説通りに来ている。
なら、ここも小説通りになるはずだ。
私は頬を赤く染めながら求める。
初めて、異性と手を繋ぐ。
初めては絶対遥くんがいい。
お願い、遥くん
「あ、あぁ」
「あ、ありがと!」
遥くんは応えてくれた。
私は頬を赤く染めたまま微笑む。
やった、成功だ。
初めての手繋ぎは大好きな初恋の人にあげれた。
遥くんでよかった。
ーーやった、やった。
ありがとう、遥くん。
「次のコーナー行こうぜ」
「うん」
歩き出す遥くん。
私は合わせるように踏み出す。
あぁ、幸せだ。
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「帰る」
「え?」
嫌だ、これ以上見たくない。
歌恋は背を向け、出口に歩き出す。
ましろは驚きながらも着いていく。
「見たくない」
「うん」
目に涙を浮かべる歌恋。
察したましろは優しく微笑む。
幼馴染でずっと近くにいた歌恋にとって、遥斗が自分以外の女の子と仲良くデートをするのは耐えきれなかった。
「ねぇ、なんで?
なんで私じゃないの?
遥斗、私との約束忘れちゃった?
バッテリー組んでた小学生の頃、エースの遥斗は言ったんだよ?
歌恋、俺と一緒に俺としか叶えられない夢を見よう。
俺とお前のストーリーは死ぬまで続くハッピーエンド。
ハッピーエンドに暗い顔はいらない。
俺の前ではずっと笑ってろ。
歌恋は笑ってる時が一番可愛くて、歌恋の笑顔は俺が一番好きで俺を自信満々にしてくれる世界に一つしかない最高の表情だ。
私、今でも笑顔だよ?
ねぇ、なんで私じゃないの?
やだよ、やめてよ、遥斗ぉ」
「先輩には絶対渡さないから。」
歌恋は大粒の涙を流しながら麗蘭を睨むとスタスタと早足で歩き、水族館を出る。
麗蘭に嫉妬し、遥斗に激怒しながら。
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「あ、エイだ」
「サメって他の魚食わねぇのかな?」
「どうだろ、たまに食べちゃったりするのかな?」
「肉食だから食うだろ」
「かな」
サメとエイが一緒に泳ぐ水槽。
俺と麗蘭は手を繋ぎながら見つめる。
ガキの頃から思っていたが事故は起きないのだろうか。
「もう最後のコーナーだね。」
1時間半ほど見ると大体見終わるのが水族館。
俺と麗蘭は外に出た。
この水族館は屋上に展示エリアがある。
「ペンギン、可愛い」
「名前は...、へぇ。麗蘭、見てみん」
ヤシの木などが生い茂る自然を再現した道を通ると生息場所に近い環境で展示されるペンギンの群れが姿を表す。
麗蘭は目を輝かせる。
俺は名前を見た。
麗蘭と同じ名前だ。
「レイラ、私と同じだ。へぇ、なんか親近感。
レイラ〜、私も麗蘭だよ〜」
無邪気にレイラに手を振る麗蘭。
周りの人(俺を含めた男が中心)がドキッとする。
麗蘭は顔だけじゃなく、声も可愛い。
「わぁ、鳴いた。お返事かな?
ねぇ、遥くん、もう少し見てていい?」
「いいよ」
何分でもいいです、ご自由にしてください。
なんならずっとレイラと会話してください
めちゃくちゃ癒されるので。
「わぁ!来た、ねぇ、遥くん、動画撮って!」
「わかった」
麗蘭に近づくレイラ。
俺はスマホを向ける。
「レイラ〜♡」
「麗蘭、可愛い?」
「うん、連れて帰りたいくらい可愛い」
「そっか」
しゃがみ、俺に微笑む麗蘭。
カメラに映った瞬間、思わずニヤけてしまう。
「お楽しみのところ、申し訳ない。
あの私、芸能事務所の者なのですが芸能界に興味ありませんか?」
俺の肩に手を触れる少し年上っぽい男性。
俺は振り返る。
「麗蘭」
「うん?」
俺が撮影をやめ、呼んだ。
麗蘭は駆け寄って来る。
「芸能界に興味ないかって」
「うーん」
麗蘭ほどレベルの高い女子高生は全国にもそうはいないだろう。
だが、麗蘭は考え込む。
何故だろう。
「考えたんですけど、ごめんなさい。
私、夢があるのでお断りします。」
丁寧に一礼し、断る麗蘭。
麗蘭の夢とはなんだろう。
「麗蘭、夢って?」
「私の夢は遥くんと一緒に野球選手になること。
ほら、最近、女子プロ出来て、甲子園も開催されたでしょ。
私ね、今後女子野球が女子スポーツの中では抜きん出た存在になると思ってるんだ。
その世界でNo.1に私はなりたい。
だから、絶対王者海城に入った。
そしたら遥くんが頂点を獲った。
だから、足直して、なろうよ、一緒に。
私、遥くんとずっと一緒に野球やりたい。」
麗蘭は満面の笑みで微笑み、俺の手を握った。
俺は野球を諦めた。
事故で怪我して、もうダメだと思った。
事故で怪我した瞬間に俺の才能は失われたと。
氷室の言うように野球の世界は才能だ。
才能がなければ何も始まらない。
才能を持たない者が何をしても自己満足にしかならない。
世間は動かせない、夢は叶わない。
だから、俺は逃げた。
俺から才能は失われたから。
でも、最先端の手術をしたりすれば奇跡的に治るかもしれない。
逃げんなよ、俺、麗蘭がここまで言ってくれてんだからよ。
この期待に応えてやるのが神童椎名遥斗、世代のKINGだろ。
「麗蘭、なろうぜ、一緒に。
俺はもう諦めんのを、逃げるのをやめる。
なってやるよ、指導者から選手。
そして、プロに。
ってことなんですいません。
麗蘭は俺とプロ野球選手になります。
プロになった時、CMでも頼みに来てください。
俺と麗蘭は絶対受けた期待を裏切らないんで」
俺は満面の笑みをスカウトの人に向け、麗蘭を抱き寄せた。
「良い夢だ、頑張って、応援してる。」
スカウトの人は微笑み返してくれた。
「はい!」
「遥くん、改めてよろしくね、明日から」
「あぁ」
明日から本当の意味でのリスタートが始まる。
麗蘭だけじゃない、歌恋も浅倉もプロにしてやる。
「お揃い!」
そして、俺と麗蘭はお揃いのペンギンを買い、満面の笑みで笑った。
この写真はリスタート記念だ。
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「小説と一緒。
いや、小説以上だよ、遥君、頑張ろうね、一緒に」
就寝前、私は撮った写真を見て笑う。
現実は時にフィクションを超える。
このまま小説を超えたストーリーを遥くんと紡ぎたいな、ずっと。
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