第4話 姉貴はいろんな意味で最強

「あと5分くらいか」


昼休み前最後の授業、俺はハゲのつまらない授業を聞きながら空を見ていた。


「4分だよ、遥くん」

「3分短縮しろ、ハゲ」

 

腕時計をつける麗蘭が教えてくれる。

俺はハゲに視線を向ける。


「今日はラーメンにしようかな、それとも唐揚げ...

いや、スパゲッティも捨てがたいな。」


後ろの席の風夏がメニューを考える。

俺としてはラーメンと唐揚げのセット。

通称、ラーからにチャーハンをつけたい。


「お腹空いた」


麗蘭は腹に手を添え、撫でる。

何を食べるんだろうか。

麗蘭の好物は刺身だが流石に学食に刺身はないため、普段は揚げ物を食べている。

特にカツ丼。


「今日は早めに終わろう、範囲も終わったし、腹が減った」


ナイスだ、ハゲ。


「ありがとうございました!」

「遥斗!行こ!」

「あぁ!」


ハゲに礼をした瞬間、俺と風夏は学食へ走る。

好きなものを選ぶにはスピードが命だ。


「遥くん、待ってよ!

私、スカートの中、スパッツ履いてないから走れない〜!」


見えないようにスカートを抑えながらついてくる麗蘭。


「俺の後ろ入れよ」

「うん」


俺はウインクした。

親友には優しくしないとな。

麗蘭には普段世話になってるし。

麗蘭は微笑み、嬉しそうにする。


「お、学食に走ってんだ、懐かしい〜」

「あ、お姉さん!」

「よっす〜」


学食まであと数秒というところで姉貴に出会した。

姉貴は風夏に手を振りかえす。


「アタシも学食食べちゃお、遥斗、風夏ちゃんおごってあげる。」

「ありがとうございます!」

「サンキュー、姉貴」

「いいってことよ。

可愛い弟と将来のお嫁さんにならいくらでも奢ってあげる、ほら、アタシ、天才作家だし」

「遥斗、お姉さんホント良い人だね!

私、尊敬しちゃう!」


気前良い姉貴に喜びを爆発させる風夏。

姉貴の天才っぷりは若手ラノベ作家の中でもトップクラス。

パッと思いついたのを投稿サイトに投稿して、大バズり。

そのまま書籍化、アニメ化まで行く作家なんて、世界でも少ないだろうな。


「姉貴、その教科書は?」

「あ、これ凛ちゃんの。」


姉貴が手に持っている教科書は妹の凛のもの。

妹の凛は吹奏楽部で活躍している。


「好きなの頼みなねー」

「はい!」

「姉貴は?」

「アタシはね...、あ、おばちゃん!元気してた!?」


俺が尋ねると姉貴はメニューを見て、直ぐにテンションを上げた。

姉貴は海城の卒業生だ。


「葵ちゃんかい!?」

「はい!天才ラノベ作家、椎名葵ちゃんです!」


ウインクし、目の位置で横ピースする姉貴。

姉貴は自分が美人なのをかなり自覚している。


「相変わらず美人さんだねぇ。

流石元TOP6!

今日はなんで学校に?」


姉貴の時代からTOP6はあったらしく、姉貴はずっとその頂点に君臨していたらしい。


「妹に忘れ物を届けに来たの。

おばちゃん、アタシ、いつものね」

「はいよ!久しぶりに腕を振るっちゃうわ!」

「ありがとー!あ、弟とそこのかわい子ちゃんのお金もアタシが払うから。」

「気風が良いね〜、葵ちゃんは相変わらず!

そうだ、今日はおばちゃんのおごり!」

「やった!」


おばちゃんは姉貴との再会がよっぽど嬉しかったんだろうな。


「俺はラーからにチャーハンで」

「はいよ!」

「私は唐揚げとチャーハンで」

「風夏ちゃん〜、もっと食べないと全国で良い結果出せないよ〜?

ご飯、大盛りにしとくね!」

「あはは...、ありがとうございます」


おばちゃんのご厚意を苦笑いで受け入れる風夏。

風夏はレギュラーだが意外に少食だ。


「追いついた、あ、お姉さん」

「麗蘭ちゃんも来たんだ、奢ってあげる、好きなの選びなね」


今日はかなりご機嫌だな、姉貴。

なんかいいことでもあったのか?


「え?あ、ありがとうございます!」


麗蘭は驚くも厚意を受け入れた。

ご機嫌な姉貴の厚意を無下にすると後が怖いからな。

姉貴は一度キレると手がつけらないほど怖いし。


「おばちゃん、ラーからで。」

「はいよ!ご飯大盛りサービスしとくよ!」

「ありがとうございます!」


麗蘭はかなり大食い。

食トレも大好きだ。


「あ、にぃにとねぇねだ!ねぇね〜、教科書は〜?」


妹の凛が後ろでぴょんぴょん跳ね、手を振る。


「持ってきたよ〜」


姉貴は微笑み、手を振り返す。

姉貴と凛はほとんど喧嘩しないほど仲良しだ。


「ありがと、ねぇね」


微笑み返した凛は後ろの麗蘭の厚意に甘え、俺の後ろに来た。


「にぃに」

「どした?」

「シャー芯頂戴、切れちゃった」


苦笑いで手を後頭部に添える凛。

おっちょこちょいなんだから、もう。


「食べたら渡す、凛は何食べるんだ?」


俺は頭を撫でてやる。

ーー凛、忘れ物しないように俺と頑張ろうな。


「えっとね、まだ決めてないけどー、ねぇねと同じやつ」

「おばちゃん、いつもの追加ね」

「はいよ!」


姉貴が微笑むとおばちゃんは唐揚げを揚げながら答える。

美味そうだ。


「にぃに、にぃには何食べるの?」

「ラーからとチャーハン」

「チャーハン、少し頂戴」

「いいよ、おばちゃん、チャーハン大盛り」

「ありがと、にぃに」


嬉しそうにし、俺に抱きつく凛。

ホントに可愛いやつだ。

俺はもう一度頭を撫でてやる。


「行こっか」

「はい!」

「レッツゴー!」

「おー」


俺たちは美味そうな学食を持ってテーブルへ。


「あ、ましろん〜、こっちでたべよー」

「せんぱいだ〜、せんぱい、今朝はありがとう〜」


唐揚げを食べ、幸せそうにする凛は同クラのましろに気付くと立ち上がり、手を振る。

ましろは手を振り返し、微笑む。


「今朝?」


首を傾げる、風夏と麗蘭。

そうか、氷室に返されたから知らないのか。

余計なこと言わなきゃいいが。


「せんぱい、覚えた?」


おい、もうやばいぞ。


「浅倉」

「あ、麗央さん」


浅倉の口を押さえる氷室。

ナイスタイミング!


「麗央?もしかして、れおれお!?」

「げ、椎名先輩」


どうやら姉貴と氷室は知り合いらしい。


「れおれお、綺麗になったね」

「ショートからロングにしましたからね」


高校時代、姉貴は氷室の1学年上だったらしい。

氷室は髪に手を触れる。


「彼氏いんの?」

「...」

「中身は変わらないんだね」

「はい」


彼氏いない歴=年齢なんだろうか。


「セックスした?」

「はい、大学時代に。

って、何言わせるんですか!」


顔を真っ赤に染め、叫ぶ氷室。

姉貴はニヤニヤし、口に手を当てる。

 

「可愛い〜、れおれおももう大人だね〜」

「椎名、九条、一之瀬、浅倉喋ったら殺すぞ」

「はい!絶対しゃべりません!」


俺たちを鋭く睨む氷室。

かなりの威圧感だ。

風夏達はビクッとする。


「椎名、何ニヤけてる」

「いやー、監督の弱み握れたなと」


だが、俺はニヤける。

この女狐の弱みを握れたことは今後非常に活きるだろうからな。

ありがとう、姉貴。


「いいぞ、遥斗。もっといじってやれ〜」

「先輩!」


再度顔を真っ赤する氷室。

ちょっと可愛い。


「れおれお、女ならセフレの一人や二人いないとダメだよ」


それはどうかと思うが。


「そんなこと言って、先輩はいるんですか?」

「当たり前、4人くらいいるよ。」


姉貴、ヤリマンだったのか...

薄々そんな感じはしてたが言わないでおいてくれよ...


「ねぇね、ヤリマンなの?」

「凛ちゃん、凛ちゃんはまだ知らなくていいけど、大人になったらね、経験しとかないとダメなの。

だから、風夏ちゃん、遥斗とヤっちゃいなよ!」


ドストレートに問う凛に姉貴は頭を撫でながら返す。

凛には姉貴のようになってほしくない。

ずっと甘えん坊でいてほしい。

てか、しれっと最後に爆弾投下するな、クソ姉貴。


「い、いきなりセックスは...、まだキスもしてないし...」


顔を真っ赤にし、手で顔を覆う風夏。

俺は想像してしまい、かき消すため首を激しく振る。

忘れよう、忘れなければ風夏で更に捗ってしまう。


「椎名ァ」

「げ、まだいたの、おつぼね」

「誰がおつぼねだ!今は教頭だ」


俺達は吹き出す。

教頭はおつぼねだったのかw


「じゃあ、おつぼね教頭先生、今は食事中です、飛沫が飛ぶので叫ばないでください、迷惑です」

「貴様、卒業したからっていい気になるなよ。

不純異性交遊を持ちかけるなんて言語同断だぞ」

「それって貴方の感想ですよね?

弟と未来のお嫁さんがヤるのは不純異性交遊ではないと思います。

愛の交遊です。

先生、ご無沙汰なんですか?」

「椎名、食べ終わったら指導室へ来い」

「卒業してるんで結構です」

「貴様ァ!」

「お食事中なので」

「覚えてろよ」

「はーい」


レスバ最強の姉貴に完敗したおつぼね。

姉貴は本当にレスバが強い。


「あぁ、ダっる」


姉貴は舌打ちし、白米をかき込む。


「姉貴、風夏が真っ赤だからまた今度な」

「初心だね〜、可愛い」


俺は苦笑いを向けた。

姉貴は飲み込んでからニヤける。


「セックス...」


まだ風夏は顔を真っ赤にしたままだ。


「したいの?」

「そりゃな」


問う麗蘭。

したくない男子高校生なんて存在しないだろう。


「じゃあ、私とする?」

「え?」


麗蘭?


「遥くんが良いならいいよ」

「麗蘭」


俺は顔を真っ赤に染める。

麗蘭のおっぱいを揉める、揉めるのか!?


「遥斗!ダメ!先輩は処女じゃないから!」

「歌恋!?」


どこからともかく現れた歌恋は背中に抱きつき、猫のようにシャッーと睨む。


「歌恋ちゃん、私経験ないよ?」

「顔が処女じゃないです!」

「確かに」


睨む歌恋に同調するましろ。

俺にはよくわからない。


「嘘!?」

「遥くん」


涙目の麗蘭。

ちょっと可哀想だ。


「椎名くん、柊さん、九条さん、風夏、公共の場所でそういう話はほどほどにね。」

「はい、相良先輩、ありがとうございます」

「どういたしまして。」


俺は抱きしめようとした。

だが、偶然通りかかった相良先輩に止められた。

そうだ、姉貴のせいで忘れていたがここは食堂だ。

ーー相良先輩が正しいな。


────────────────────


「椎名くんの童貞は私が貰うわ。」


私は椎名くん達を睨む。

まったく、ああいう話は私とだけするべき話だわ。


────────────────────


椎名凛

1.誕生日、星座、血液型、出身

8月18日生まれ、しし座、O型、神奈川出身

2.クラス

1ー3

3.性格、容姿

人懐っこい性格でかなり人に好かれる遥斗の妹。

母親、姉と同じくかなり美人。

特徴は綺麗なピンクのショートカットと伊達メガネ。

4.身長体重

160cm、51kg

スリーサイズ

83/64/80

5.部活

吹奏楽部

6.趣味

にぃにの交友関係を見ること、音楽鑑賞

7.好きなもの

にぃに、ねぇね、友達、楽器

8.苦手なもの

特になし

9.好きな食べ物

からあげ

10.嫌いな食べ物

辛いもの


椎名葵

1.誕生日、星座、血液型、出身

7月29日生まれ、しし座、O型、神奈川出身

2.年齢

26歳

3.性格、容姿

気分屋だがかなりモテる。

母親、妹と同じくかなり美人。

特徴は綺麗なピンクのロングヘアと耳のピアス

4.身長体重

171cm、64kg

スリーサイズ

91/64/85

5.仕事

ラノベ作家

海城在学中にデビューし、数々の賞を総なめにしたほどの天才。

天才が故にその思考は理解されにくい。

6.趣味

飼い猫と遊ぶこと

7.好きなもの

猫カフェ、マロン(飼い猫)

8.苦手なもの

9.好きな食べ物

アジの南蛮漬け

10.嫌いな食べ物

カレー

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